TBSラジオ「ACTION」月~金曜日の15時30分から生放送。金曜パーソナリティは武田砂鉄さん。
1月10日(金)のゲストは俳優・声優の戸田恵子さん。やなせたかしさんとの対談本『アンパンマンvsアンパンマン』がすこぶる面白いと語る武田砂鉄さんと、アンパンマンについてのお話をたくさんしました。
武田:この本の中で戸田さんが、「アンパンマンって自分だけものを食べない。食べないけど、『美味しそう』とか『いい匂い』とかは言う」と言ってて。たしかにアンパンマンがなにかを食べている描写は出てこないですね。
戸田:意外とお気付きじゃないところですね。みんなが食べているときは、その側に立って優しく見守るという。
武田:それはやなせさんが戦争で飢えを体験されて、みんなにものを分け与えるというのが隅々にまで行き渡っている感じがします。
戸田:ほかのパンは食べるんです(笑)アンパンマンだけ食べる行為をしない、食欲を持たないというキャラクターを設定したのがすごいなって。あるときから「『いただきます』という台詞がないんだな」と気付いたんです。
武田:役を演じる中で、アンパンマンの凄みは強化されていくものですか?
戸田:というよりは、非常にシンプルということですね。別に新しいことをやるのではなく、決められたことを常に毎回行われている番組だと思うので。
武田:アンパンマンというスターがいるだけでは何も起きなくて、誰かがいることでアンパンマンというスターが引き立つというのをずっと続けていらして。それって他のヒーローものとは全然違う考え方ですよね。

戸田:それで安心してお父さんお母さんにも見られるというのもあると思います。「パンがあればご飯もある」、「食品には菌も必要」みたいな共存も押し付けがましくなくあって。(やなせたかし)先生はそういうことを言いたかったのかなと。「みんな必要」ということを。あと、「できる人ができることをやる」という世界観でもあると思います。そして頑張ることも教えてもらって。弱いキャラクターもいっぱい出てくるので、アンパンマンを見て何かを学んでいく、人のために何かやっていくという気持ちが全体に流れていますかね。
武田:アンパンマンの声優に選ばれたとき、自分でどう声を作り上げたのですか?
戸田:正直、スタートのときはそんな思い入れはなかったんです。

武田:マインドのことはどう言われたのですか?
戸田:「世界一弱いヒーローです」と。
武田:いい言葉ですね。
戸田:「すぐにダメになります」と。
武田:世界一強いヒーローだと、強い言葉でずっといけるわけですもんね。「参ったか!」とか「ざまあみろ!」とか。でもそれって声を作るときの重要な要素ですね。
戸田:だから何か狙うわけではなく、自分の出た声を信じてそのまま演じて、前半録って「これで行く」と。
戸田:最初はこんなに世の中に出ていくとは思いませんでした。「半年で終わるかな?」って(笑)でもそれが1年、2年、10年…とずっと行くようになり。町中にはグッズで溢れて、子供達が自分の顔より大きいリュックを背負って、小児病棟に行ったら切り抜きの絵が貼ってあったり。あとどんな芸能人でも子供が生まれたらアンパンマンにすがって生きているというか。すごいなと思って。

武田:たとえば国民の9割は『タイタニック』や『寅さん』は見ていると思うんですが、1割は見ていないと思うんです。でもアンパンマンはマジで100ですよね。で、マジで100であるものって本当にないと思うし、これが20~30年続いたら日本全国ほぼ100の認知度ですよね。
戸田:私はそんなに長くは生きれないけど、うまくいったら「100年続く番組」と言ってるんですね。何も変わらない、偉大なるマンネリです。ずっとこれを通しています。
ほかにも、戸田さんの多岐に渡る活動についてお話を伺いました!
◆1月10日放送分より 番組名:「ACTION」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200110153000