TBSラジオ「ACTION」月~金曜日の15時30分から生放送。木曜パーソナリティは羽田圭介さん。

4月2日(木)のゲストは作家の町屋良平さん。町屋さんは昨年、小説『1R1分34秒』で第160回芥川賞を受賞しました。今日は会社員、芥川賞受賞と共通の経験がある羽田圭介さんと、リモート通話で対談をしました。

羽田:町屋さんの作家デビューって割と最近ですよね?

町屋:そうですね。2016年の夏頃です。まだ3年ちょっとです。

羽田:それまでに新人賞の応募とかって何年ぐらいされてからのデビューだったんですか?

町屋良平×羽田圭介、会社員をしながら小説を書くことについての画像はこちら >>

町屋:4~5年ぐらいコツコツ送ってました。

羽田:そのときは会社員をされていましたか?

町屋:そうですね。

羽田:僕も会社員経験が1年半ほどあるのですが、町屋さんは会社員をされながら小説を書いていて、モチベーションを保つのは大変じゃないですか?

町屋:どうしても会社が忙しかったり、あと辛いことがあったりすると小説と向き合うことが大変なときはありましたが、逆にリズムができる部分もあるので、それでなんとかやってこれた感じですね。

羽田:それで昨年芥川賞受賞ですよね。僕も5年前に芥川賞を受賞してメディアに出る機会がぐっと増えたのですが、町屋さんは芥川賞を受賞して生活は変わりましたか?

町屋:こうしてラジオでお話させてもらえたり、雑誌のインタビューに答える機会はすごく増えたので、羽田さん程ではないですが、結構変わったかなと思いますね。

町屋良平×羽田圭介、会社員をしながら小説を書くことについて

羽田:町屋さんって芥川賞の受賞で変わったというのは、僕よりは実感していないかなと思うんです。
というのは、僕は作家デビューして12年ぐらい経って芥川賞を獲ったんです。だからあんまり注目されていない期間が長かった末の受賞なので変わった感があるんですが、町屋さんって2016年にデビューされて、割とすぐに芥川賞受賞じゃないですか。

町屋:そうですね、3年なので結構恵まれてますね(笑)

羽田:だから傍から見るとあんまり変わってなさそうに思えますね。

町屋:そうかもしれませんね。

羽田:今も会社員は続けていらっしゃるんですか?

町屋:今は退職しまして、現状は小説を書いて生活している感じですね。

羽田:なんですか、その”現状は”っていうのは?(笑)

町屋:やっぱ先のことは分からないじゃないですか…(苦笑)

羽田:じゃあ不安になったら別の仕事をするんですか?

町屋:書きながら働いたほうがいいかなと思う場合もあるかもしれないので、そうなったらなにもできない状態になっちゃうのは回避したいですね。

羽田:それはちょっと分かりますね。僕も会社員やっていたときに、「会社員をやらないと社会経験は得られないのかな?」という思いで会社員になった側面もあったのですが、どんな職場でも人間って慣れちゃうじゃないですか。複雑な現実を矮小化して、自分にとって単純な世界にまとめる力ってすごく強くて、だから意外と会社員生活そのものって創作にはあまり関係ないのかなと思って、僕は会社員を辞めちゃいました。だから会社員になろうとは思わないんですが、町屋さんは会社員になる可能性があるんですか?

町屋良平×羽田圭介、会社員をしながら小説を書くことについて

町屋:いやぁ、どうでしょうね。今羽田さんが言ったように、会社って起こる人間関係や出来事が良くも悪くもパターン化されて認識されちゃいますよね。

羽田:本当にそうかどうかは分からないですけど、そう把握しちゃいますよね。

町屋:”つい、しちゃう”っていうのはあると思います。

羽田:会社を辞めると時間ができると思うんですが、生活の変化はどうですか?

町屋:働いていた時間がそのまま自分の時間になるので、読み書きの時間は物理的に増えるんですが、集中できる時間はそういきなり増やせるわけじゃないので、頭の力を出し尽くした状態でぐったりしている時間が長くなってしまいましたね。

羽田:昨年、町屋さんからお話を伺ったときに、「風呂で小説を書いている」と言われていて、たしか「血流が良い、冴えた思考で書きたい」とおっしゃられていて、僕は「長風呂は赤血球が壊れるからやめたほうがいい」と言ったんですが、今も風呂入りながら小説を書かれているんですか?

町屋:そのアドバイスはすごく覚えていまして(笑)そのあとすぐに、会社を辞めたのもあるんですが、時間が取れるようになったので、長風呂はやめました(笑)

羽田:やめたんですね(笑)しかもそのとき、スマートフォンで小説を書いてましたよね?それはどうですか?

町屋:それはむしろ増えてきてますね。

羽田:えっ!?むしろ今のほうがスマートフォンで書いてるんですか?パソコンじゃないんですか?

町屋:パソコンは書評を書くときに使うんですが。小説を書くときは自分の身体というか、一人称っぽい感じがあって、いつも使っているスマートフォンのほうが身体とつながっている感じがするんですよね。

羽田:そう言われると、未だにスマートフォンで書かれていることが納得できるのが最新作の『坂下あたると、しじょうの宇宙』なんですよね。

このあと、町屋さんの最新作『坂下あたると、しじょうの宇宙』について伺いました。