「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」
12月から、沖縄の宜野湾市で、遺族の負担を減らすため、死亡手続きに関する総合窓口「おくやみコーナー」の試験運用が始まるというニュースがありました。調べてみるとこのような取り組みは、いま全国のあちらこちらでも始まっています。
2021年11月29日(月)のテーマは『広がる、おくやみコーナー』
おくやみコーナーってどんなもの?
この「おくやみコーナー」、2016年に日本で初めて大分県の別府市が始めたもの。そこで「おくやみコーナー」とはどんなものなのか、立ち上げから担当している、別府市役所総務課の柴田和美さんに聞きました。
●「前でしたら、それぞれ各課にすべて回らないといけなかったですね。同じことをですね、何回も同じように書かないといけないので、それだけで時間がかかりますので、一つの窓口で、亡くなった方の後の手続きをまとめてできるような窓口を設置しております。おくやみコーナーにいらっしゃったら、まず係の者が、亡くなった方、住所、ご葬儀の日などを伺って、それをもとに入力して、各様式が、そのデータから飛んで、届出書が出来上がるシステムになってます。そして、こういった方がお見えです、っていう情報を、各課の担当官に知らせて、ご遺族の方が行かれたときには、もう係の者は分かってますので、待っている状態ですね、書類をご準備して。入力するとすべての届出書に反映されて、書くことが一回で終わる、ということになってます。」
(別府市役所総務課の柴田和美さん)
亡くなった後の手続きというのは大変。住民票手続き、保険証の返還、土地があれば相続手続き、介護保険のサービスの停止・・・。宜野湾では5つの課で35種類、別府市では最大で14課66種の届出があるとか。
関連する課は多岐に渡り、どの手続きをどの課でするのか?どの順番ですればいいのか?役所の中を行ったり来たり。しかも、何度も同じことを記入しなければいけない。これをなんとかしようと、ワンストップ窓口を作ったのです。
「おくやみコーナー」で「お客様シート」に記入すれば、あとは、その情報を関係各所と共有してくれて、目的の窓口に行けば、すでに書類が出来ており、必要なら捺印するだけ!記入は一回になりました。
ちなみに、もしも必要なものを忘れて後日、となっても、おくやみコーナーに行けば、「何日の何番の方が、途中のこの処理からお見えになっています」となる!
開設から6年で、北海道から沖縄まで200ほどの自治体が視察に来たそうです。
大和市はコンシェルジュが登場
例えば、神奈川県大和市で、三年前に設置した「ご遺族支援コーナー」はこんな特徴があります。「ご遺族支援コーナー」担当の加賀谷博さんのお話です。
●「我々、コンシェルジュと呼んでおりますけれども、その者が各課をご案内いたしまして、ご遺族の方が、関連する部署の職員とお話なり申請をして頂いたり、という形になります。だいたい、平均的には一時間程度で回れるような形になります。なるべく、時間が短縮できるように、先にこの課に行ったり、違う課に行ったりというような、コンシェルジュの裁量っていうんですかね、そういった事も踏まえてご案内するようにしています。私は市の職員を退職して、再雇用みたいな形で勤めさせてもらってるんですけれども、お客様から頂く声っていうのは、どこ回っていいか分からなかったので大変助かった、スピーディーに回ることが出来て助かったよ、っていうような、そんな声を頂けるので、コンシェルジュとしては、いい仕事に就いてるのかな、という風に考えてます。私OBなんです、はい。」
(大和市「ご遺族支援コーナー」担当の加賀谷博さん)
こちらはコンシェルジュを置きました。加賀谷さんは市役所OB。我々には分かりにくい課の分類も市庁舎の中の配置も、30年勤めた加賀谷さんには、庭。窓口の混む時など、しっかりと把握して順路を考えてくれるので、スムーズに回ることができる。コンシェルジュは全部で6人。
出生数よりも死亡数が多くなって
ところで、そもそも、なぜ別府市は「おくやみコーナー」を設置したのか、そのきっかけを柴田さんに聞いてみました。
●「別府市は出生の数よりも、死亡の数の方が多いんですね。で、それもあって「おくやみコーナー」を設置しようということになりました。やはり、お一人で住まわれてる方も多いですので、お手伝いが出来たらな、というのがあります。二人で最初「おくやみコーナー」の立ち上げをしておりました、準備はですね。別府市のシステムはとても簡単でして、システム構築とかそういったものではなくて、エクセルのシートを使ってデータを入力したら、またその届出書もエクセルの用紙なので、ただ関数で飛ぶだけのものなんですが、それはもう職員で作りましたね。ゼロ予算で。一か月半ぐらいで開設したんですね、なので、もうなんですかね、マンパワーです。他の市町村の方が、結構システム化されてすごいですよね。もっと進んでるな、と。」
(別府市役所総務課の柴田和美さん)
出生の数より死亡の数が多くなった。また、家族が遠方に住んでいて、故人のことがあまりよく分からない、というケースが多くなっていることなどがきっかけ。
柴田さんたちは、視察に来た自治体に、自分たちの作ったすべてを公開し提供しています。「別府よりすごいシステムがたくさん出来てるんですが、うちはまだ最初のままです」と話していましたが、この手作りのシンプルなシステムが、それぞれの自治体で、人口や市庁舎の大きさなどに合わせてアレンジされ、広がっているのかもしれませんね。