「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)

今年10月、野鳥に関する調査報告書が、20年ぶりに発行されました。この中で、私たちの身近な「ある鳥」について、異変が起きていることが報告され、話題になっています。

スズメとツバメが減っている!

何がわかったのか。NPO法人バードリサーチの代表、植田 睦之(うえた・むつゆき)さんのお話。

「20年ぶりの調査なので、20年間の変化。身近な鳥がすごい減っていて、スズメやツバメがかなり減っていることがわかってきた。例えばスズメは、だいたい3割の減少。ツバメは、4割の減少。この調査は、「鳥の国勢調査」みたいな感じで、日本全国の鳥の状況を明らかにして、現状と、過去からどういう風に変わってきたかが、わかる調査。

減っているということはちょっと前から言われていたが、より確証を持って言えた。」
(NPO法人バードリサーチ・代表 植田 睦之さん)

▼NPO法人バードリサーチの植田 睦之さんに聞きました

「スズメが減っている」ボランティアが手弁当で突き止めた現実の画像はこちら >>

20年前の調査では、およそ3万1千羽が確認されたスズメが、今回はおよそ2万1千羽に減少。さらに、ツバメは、およそ1万5千羽から、およそ9千羽に減少。一方で、ペットとして持ち込まれたガビチョウやワカケホンセイインコなどの外来種は増加傾向にあることがわかりました。

これは、「全国鳥類繁殖分布調査報告」というもので、全176ページ、野鳥281種を対象とした報告書となります。1970年代に1回目、1990年代に2回目、今回は3度目の調査として行われました。

▼「全国鳥類繁殖分布調査報告」

「スズメが減っている」ボランティアが手弁当で突き止めた現実

調査方法は、まず、日本列島を20キロ四方の四角に区切り、1マスごとに、2つのコース選定します。

そして、1コースにつき、実際に3キロ歩いて、目で見たり鳴き声を聞いて、どこに何の鳥がいたかを記録。今回は、全2344コースを、植田さんたち2100人のボランティアが、6年の歳月をかけて回りました。

あくまでもそのコース内で確認されたものですが、冒頭紹介したように、今回はおよそ2万1千羽に減少。さらに、ツバメは、およそ1万5千羽から、およそ9千羽に減少したということでした。

すみかとなる軒下や、餌が減ったことが原因か

>

でも、20年で3~4割の減ったと聞くと、びっくりする減り方ですが、どうしてこんなに減ってしまったのか。スズメやツバメが少なくなると、私たちの生活に影響はあるのか?鳥類を研究する、北海道教育大学の教授、三上 修さんに伺いました。

「要因の一つとして大きいのは、巣を作る場所が減ったことが考えられる。

スズメは、本来は軒下の隙間などを利用して巣を作るが、近年の住宅はそうした隙間がなくなっているので、子育てができず減少した。ツバメも、スズメと似た点があり、巣を作る場所が減ったのではないか。もう一つは、かつては沢山餌が取れたが、虫たちがいなくなり、子育てがうまくいっていない。数千万羽の桁でいるので、すぐ絶滅してしまうことはない。どういう影響があるかをすぐ言えるわけではないが、これからデータを使って解析をしていく。」
(北海道教育大学・教授 三上 修さん)

▼北海道教育大学の三上 修 教授

「スズメが減っている」ボランティアが手弁当で突き止めた現実

三上さんは、「まだはっきりしたことは言えない」と前置きした上で、巣を作る場所が減ったことと、餌が減ったことが、大きな要因として考えられると教えてくれました。

まず、巣作りについてですが、在来の木造住宅が減少し、屋根瓦や建物の隙間自体が減っています。

昔はツバメが家に巣を作ると縁起が良いと歓迎されていましたが、いまは巣が落とされることも増えています。さらに、水田の面積が減ったり、農薬の影響で、餌となる虫が減ったことも一因と考えられるということでした。

スズメやツバメの減少で、食物連鎖のバランスがどう崩れるのか、激減の本当の理由は何なのかは今後、今回のデータをもとに、三上さんたち複数の研究者が解明していくということですが、やはり、こうした長期的、且つ大規模な調査は重要で、三上さんも意義のある調査だと話していました。

国は予算カット。ボランティアで成し遂げた

ただ、実は、今回の調査は、実施そのものが危ぶまれる事態だったと、バードリサーチの植田さんは教えてくれました。

「この調査はこれまで環境省の調査としてやってきていて、今回も20年位経ってるので、そろそろやりますか?と聞いたところ、なかなか予算がつけられない状況だと。

えーと思いましたけど、それだったら色んな人を集めてできないかと考え始めて、鳥に関係する全国団体に声をかけた。立ち上げ当初は不安だったが、7~8割いったら大成功だねと始めたんですけど、最終的にはほぼ全コース、あとは、ボランティアでの調査協力してくれたし、実費も受け取らず手弁当でやりますという人もたくさん出て、みんなの力で作り上げることができた。」
(NPO法人バードリサーチ・代表 植田 睦之さん)

今回の調査は、国が予算を大幅に削減した影響で、見送られるはずのものだったそうですが、植田さんは、「日本野鳥の会」などの複数の団体に呼びかけて調査会を結成し、SNS上で調査員を募集したり、企業の助成金をかき集めたりして、何とか、完遂させたそうです。

こうした調査は、継続することによって価値を持ちます。環境に対する関心が、国際的にも高まっている中で、本当にこれで良かったのか。今後、このような調査のあり方が問われていきそうです。