「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)「現場にアタック」
政府は先月、2021年版の「自殺対策白書」を公表しました。コロナ禍で、特に若い女性の自殺が増えていることがわかりましたが、年末は、特に苦しむ方が増える時期でもあります。
そこで、今回は、一人で悩み、苦しむ方々を助ける相談窓口について取材報告しました。
チャットで悩み相談、一日800件
お話を伺ったのは、去年スタートしたばかりの相談窓口「あなたのいばしょ」。取り組み内容について、NPO法人「あなたのいばしょ」代表の、大空幸星(おおぞら・こうき)さん。
「24時間・365日、年齢・性別関係なく、誰でも無料で、匿名で利用できる、チャット相談の窓口、「あなたのいばしょ」という相談窓口です。チャット相談なので、「あなたのいばしょ」と検索すると、スマホやパソコン、タブレットで相談ができます。例えば、育児・家事のストレスや、芸能人の今回の報道とか色んな事が積み重なって、本当にしんどいです、と。相談は、コロナ禍でずっと増え続けていて、1日800件ぐらい。月にすると2万件以上の相談。かなりの相談数です。」
(「あなたのいばしょ」代表 大空幸星さん)
昨年3月に立ち上げられたウェブサイト「あなたのいばしょ」は、チャットで相談を受け付けています。
代表の大空さんは、慶応大学4年生。この世代は、友達同士でも、「電話ではなくチャットで本音を伝えている」ということで、電話窓口ではなく、チャットに限定。
やはりコロナ禍で相談件数は増えていて、相談者の8割以上は、29歳以下の「若年層」。政府の「自殺対策白書」でも、去年の自殺者は、11年ぶりに増加しており、中高年男性の自殺が減る中、増えたのは「若者」と「女性」ということでしたが、「あなたのいばしょ」でも、やはり似た傾向が見られるようです。
対応しているのは、600人のボランティア相談員。24時間対応するために海外在住者にも協力してもらい、時差を使って夜中でも対応できるよう工夫しているそうです。
設立のきっかけは自身の体験
では、「あなたのいばしょ」をどうして立ち上げたのか。その経緯についても伺いました。
「一つは僕自身の原体験もあって、僕はひとり親家庭で育った中で、家庭の問題や、学校のこととか、色んなことで悩んでいて、誰にも相談できずに、本当に苦しかった。その時に僕は、学校の高校の先生と偶然出会って、助けられて、今があるんです。その先生と出会わなかったら、命を絶っていたかもしれないくらい、追い詰められていた。先生との出会いは「奇跡」。奇跡的に頼れる人と出会ったら助かるけど、そうでなくては助からない。この現状を変えるため、確実に頼れる人にアクセスできる仕組み=「あなたのいばしょ」を設立しました。」
(「あなたのいばしょ」代表 大空幸星さん)
大空さんは奇跡的に出会えて救われた。誰かに繋がることで救われることもあるので、奇跡ではなく、確実に出会える場所を、という考えから始まった活動でした。
活動での悩みとしては、全ての相談を受け切れないこと。24時間体制でやっていますが、国からの援助も少ない中で、善意のボランティアでは限界もあるそうで、「あなたのいばしょ」のホームページでは、支援も呼びかけています。
「あなたのいばしょ」を支援したい方はこちら。
※毎月継続的に寄付をする「いばしょサポーター」としての支援と、まずは1回だけ寄付をしてみる支援の2つの寄付の方法があります。
一方で、大空さんたちは、こうした相談窓口は「対処療法」に過ぎないとして、「根本的な原因を取り除く解決策」を求めて、国に提言書を出す活動もしています。そこでは、「大臣の設置」、「チャットやSNSを使った相談窓口の支援強化」など、具体的な提言も盛り込んでいて、この後押しがきっかけとなり、今年2月、世界で初めて、「孤独・孤立対策担当大臣」が設置されました(野田聖子大臣)。
メディアの自殺報道、見直しを
一人でも多くの命を救おうと。問題改善に取り組む大空さんですが、では、他に問題はないのか?最近、気になっていることについて伺いました。
「WHOには「自殺報道ガイドライン」があるりますが、「してはいけないこと」とされている「詳細を報道」しているメディアが多すぎると思います。そして最後に「相談窓口」の掲載を、ある種の免罪符のように載せたりしていますが、最後に相談窓口をつけて、これでOKと言わんばかり。それでは自殺が防げないんです。昨年、自殺者数が増えましたが、芸能人の方の報道の影響があったことは確実です。自殺の連鎖は防がなければいけないんです。一方で、メディアが、相談窓口に繋がって自殺を思いとどまった事例を報じると、自殺を抑止する効果があるとされています。
(「あなたのいばしょ」代表 大空幸星さん)
▼世界保健機関(WHO)により、作成された自殺対策に関するガイドラインの中のひとつに「メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」があります。この手引きでは、メディア関係者が自殺関連報道をする際の「やるべきこと」、「やってはいけないこと」などがまとめられています(厚生労働省)。
芸能ワイドショーなどではWHOのガイドラインに反するセンセーショナルなものが多く、儀式のように、最後に、相談先を紹介しているが、それでは命は救えない。受付切れないほどの相談を受けている相談窓口の現場から見ると、あのやり方にも、疑問を感じるということでした。
「あなたのいばしょ」でチャット相談したい方はこちら。
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