TBSラジオ「松岡茉優 マチネのまえに」毎週日曜日お昼12時から放送中!
7月19日・日曜お昼12時から放送された『松岡茉優 マチネのまえに』、第16回放送。
松岡:何が違うかわかりますか?なんと、スタジオにおりまーす!そしてマスクをしてます。
目の前には、アクリル板があるんですよ!しかも丁寧に除菌された跡が残っております。本当に皆様たくさんのご心配と、張り紙も貼ってあったりと、スタジオもここ数ヶ月で変わっていたんだなあと思ってます。
私はですね、4月の第2回目の放送から「おうち収録」でiPhone片手にやっておりました。4月5月6月と3ヶ月以上ですね。スタジオ収録がなんと2回目という体たらくなので、ちょっと緊張しているんですけれども。
今日はいよいよ番組初のゲストをお迎えします。映画『劇場』の監督「行定勲さん」でございます。公開前の収録でございまして短い募集期間ながらもたくさんのメールをいただきまして、皆様、本当にありがとうございます!

松岡:今日は番組初のゲストの方をお迎えすることができました。私も出演しております映画『劇場』の監督、行定勲さんです!
行定監督:どうも、お久しぶりです。
松岡:監督とお会いするのは・・・
行定監督:3月ですね、完成披露。
松岡:すごい画でしたね。
行定監督:そう、無観客の完成披露試写会ね。
松岡:マスコミさんが舞台の上にいらっしゃって、我々は逆にいつもお客様がいらっしゃるところにいて。あれはたぶん、人生で何個かある忘れられない光景の一つになったかなと私は思ってるんですけど。
行定監督:二度と無いことを祈るよね(笑)いかに目の前に見てくださった後の人達の表情があるのとないのとではえらい違うよね。
松岡:あと衣摺れの音とか、ちょっとカサカサって音とか。人の呼吸の音ってあるんだなっていうくらいすっごい静かでした。シャッター音だけ響いてて、嫌なシーーーンとした感じがして。
行定監督:実はね、映画館という劇場が音を反響させる効果をちゃんと考えて音響設計が出来ているから、あれだけ些細な声とか音が響くんだね。だからそれはなかなか感慨深いものがあったよ。劇場って感じの場所でやってたって。
松岡:それと、本当だったら「くまもと復興映画祭」に私も伺えるのかなっていうことがあったんですよ、監督がやられてる映画祭なんですけども。「くまもと復興映画祭」も・・・
行定監督:延期してて。今熊本はけっこう豪雨でも被害が大きくて。
松岡:秋ですか?秋なら私も行けたらいいな。熊本は上陸したことがないので。何が美味しいですか?
行定監督:なんだろうな~馬刺しかな。
松岡:あ~いいじゃないですか!頂いちゃおうかしら。

ラジオネーム「ちょり」さん
又吉さんの『火花』『劇場』ともに大好きな作品で、行定さんの作品『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』も大好きです。なので、行定さんが『劇場』の監督を務められるということで、楽しみにしていました。行定さんが又吉さんの原作を読んだときの感想、そして映画化するにあたってのきっかけなども、ぜひ聞かせてください。
松岡:『劇場』は、原作は「火花」で芥川賞を受賞されたピースの「又吉直樹さん」初の恋愛小説ということで、ベストセラーでございます。私にとっても実は「恋愛映画」が初めてなんです!
行定監督:え、本当?そうなんだ、意外な。
松岡:意外ですか(笑)で、主演は山﨑賢人さん、共演に寛一郎さん、私の親友の伊藤沙莉や浅香航大くん、そしてKing Gnuの井口理さんまで、バラエティ豊かに出演しておりますが。山﨑さんが演じる「永田」と私が演じる「沙希ちゃん」が夢に向かって二人でもがき続けながらも男女二人で生活し続けた、夢と諦めと情熱とあとは恋の記録ですかね。
行定監督:僕ね、小説をまだ本になってない月刊誌の時に買って。僕は小説を読む時に映画化しようという気持ちは全く持たずに読むんですよ。
松岡:ピュアに読めるんですか?
行定監督:うん。どんな小説でもそうですね。でね、読み終わった時にしばらくすると何か浮かんでくるの、自分の中に。そういうものをもう一度読んでみて。「あ、これは映画になるな」ぐらいのスピードなんですよ、今回にあたっては。簡単にいうと普通に読んでて想像できる小説や「これ、映画になりそうだなぁ」みたいな小説はたぶんね、興味ない。
松岡:うんうん。
行定監督:それって誰もがそう思うわけだから。そうすると読者の人も明らかに映画的なものを想像してるって事はその想像を凌駕するものってなかなか追いつかないと思うのね。僕は想像があんまりつかなくて行間のあるエピソード、この『劇場』はそういう男女の話なんだけども。
松岡:映画のラストシーンが思い浮かんだってことですよね。素敵。
行定監督:「これは映画でしかできないこと、映像でしかできないことを思いついたな!」と、小説のラストシーンを読んで思って。小説もそれで素晴らしかったんですけど。映画のラストシーンが思いついたことで「これは俺がやりたい!」と思ってからですね。あともう一つは、この主人公「永田」という男の気持ちが余すことなくわかる。松岡さんに言わせればそれはどうかなと怒られそうな(笑)
松岡:ダメな男ですからねー。
行定監督:だけど、みんなが「ひどい男だ!最低の男だ!」と感想でよく言うんだけど。俺ね、この「永田」を完成するまで最低の男と一度も思ったことはなくて。こいつに身につまされることばかりで。
松岡:ははは(笑)
行定監督:まあ、それはそれでみんなが言ってることが映画を作ってみてわかったぐらいですけど。その「永田」って男の話を映画に残したいっていう気持ちがものすごく沸き起こったところですよね。まあ、ひどい男ですよ。金も持ってないわ、自分の夢というものを追いかけてるっていうことで、それにかまけて一番大切な人とちゃんと向き合うことができなかったっていう。でも、そういう気持ちって男の人はたぶん、みんな持ってて。この映画を見たオッサン達が試写室から出てきて号泣しているのを僕はたくさん見たんで。
松岡:私は映画のお話をいただいた時に20代30代の層に届くかなあと思いながら、別れない人たちが別れればいいかなって思って・・・語弊があるかな。別れろよって言ったって別れない人達が良い意味でも悪い意味でも一歩進めたらと思ったんですけど。
行定監督:うん。
松岡:私も試写室を出て階段を降りて行く時に、振り返った男性達が私の「沙希」に“元カノ”を見るんですよ!
行定監督:ははは(笑)
松岡:みんな感想を話してくれて。私が演じた「沙希ちゃん」のここがこうとか、「松岡さん、新境地ですね!」って言ってくれるんですけど、そんなの私のこと見てなくて。私の「沙希」にいるんですよ、誰か。
行定監督:いる。
松岡:いるって(笑)
行定監督:あのね、「沙希ちゃん」はほんと松岡茉優がやって良かったなーって思うことがけっこうあるんだけど。
松岡:やだぁ~うれしいわ。
行定監督:難しくない?「沙希ちゃん」って。普通の普遍的な何者でもない女の子を演じる事って実はやりがいもあるし。すごい特徴のある、例えば霊が見えるとか・・・。
松岡:天才的発想が、とか。
行定監督:そういう役よりは、何者でもない人間が松岡茉優をもう「沙希」にしか見えない。ある人は松岡茉優がCMで出ても「沙希ちゃん」と呼んでるって(笑)
松岡:茉優じゃい!
行定監督:(笑)でもそれくらい思いが募っているという人がいるっていうのは面白かったなと思いますけどね。
松岡:でも私としても、ちょっと前にやった作品『蜜蜂と遠雷』で演じたピアニストの役はピアノが技巧としてあって。ピアノと向き合いながらも芝居をしなきゃいけないんですけど。今回は会話劇ということで山﨑くんと私が歯車を踏み外したらもう終わりだという思いを二人とも抱えてたので。山﨑くんともかなり緊張感をもって。目はらんらんしてるけど、ちょっと口が硬くなるというか。
行定監督:画面の中ではそんなことは思わないぐらいのびのびとやってるように見えるけどね。
松岡:試写を見た方から直接連絡も頂いたりするんですけど。やっぱり皆さんご自身の思い出の話をしてくださることが多くて。私は20代30代って思っていたけど、40代50代の方が人生に一区切りついて、さらにここからっていう時にその1ページ目を振り返るような映画にもなってるのかなと思うんです

© 2020「劇場」製作委員会「ラストシーンに「永田」と「沙希」の距離が描かれている」(行定監督)「実生活で考えたこともなかった男性への距離がわかった」(松岡)
ラジオネーム「めぐみぃ」さん
行定監督の映画『ナラタージュ』のファンです。ぐっと切なくて映画館を出た後も余韻に浸れる映画でした。行定作品を見るたびにいつも恋愛の素晴らしさを思い出させてくれます。恋愛をテーマに描かれることが多いと思いますが、何か理由があるのでしょうか?また今回の『劇場』ではどのような恋愛を描かれたのでしょうか?
行定監督:そうですね、恋愛映画を撮れてるのかどうかはあまりわかってないんだよね。
松岡:恋愛映画の定義もわからないですけども。
行定監督:恋愛映画っていってしまうと映画を宣伝するのに一番入りやすいってのはあるんだけど。まあ恋愛って誰でもやってるし、ラブストーリーって言葉があるけど、ラブストーリーって何でもラブストーリーだと思うのね。だけど男女のラブストーリーの方が興味はある。
松岡:うーん、うんうん。
行定監督:男と女ってめんどくさいですよね。性別が違うし、境遇とか社会のあり方も違うだろうし。思いも違いますよね。あと女性の気持ちっていうのが、たぶん、そんなに分からないんですよね。わからないから映画を通じて知ることができるというのは非常に僕自身もモチベーションが上がる。だからそこに興味があるから恋愛映画をやってるんだろうし。
松岡:うんうん。
行定監督:今回のこの「沙希ちゃん」との恋愛というのは、やっぱり男の愚かさを「沙希ちゃん」も夢を追いかけてる人間のその夢に自分がどこか乗っかってる部分もあって。それをね、支えようとしたのだけど支えきれない部分というのもあったりするじゃない?そういう部分に色んな思いがみんな乗っかってくるんだと思う。
松岡:精一杯でしたから、あの時は。でもそれでいうと『ナラタージュ』の有村架純さんが演じられた役と私の役って、けっこうリンクするところがあるのかなと、私は今ふと思ったんですけど。ダメ男ぶりでいったら松本潤さんが演じられた役の方が私はよっぽどヤなんですが。
行定監督:そうね(笑)「俺、だめだ」みたいな(笑)
松岡:「永田くん」に思うダメぶりとまた違いますよね。
行定監督:「永田」はちょっとね、こじれてるというか自分と向き合い過ぎてるよね。「沙希」とちゃんと向き合えば幸せになれたと思うわけ。
松岡:でも、幸せにならなくて良かったんじゃないかなって、女側からすると思うんですけど・・・
行定監督:まあそれもある。だからラストシーンを見てもらうと、僕は「永田」と「沙希」の距離が描かれてると思ってて。松岡が衣装合わせの時に、こうしたらいいんじゃないかっていうのが全部正しくて。
松岡:やだぁ(照)
行定監督:最後の最後の姿がね。もうあれはね、自分も編集して見てて嗚咽したくなるくらい。なんだろう、あの眼差しというか。そういう芝居が撮れたと思ってますけどね。
松岡:ラストのシーンをあまり話すのはあれだけど。加えるとしたら撮ってる時に、私もまだ感じたことのない男性への距離というか、男女でくくるのももう古い時代かもしれないんだけども。やっぱり私の先輩の女性の方々が言う「男に期待なんてしない方がいい。男なんて」というのが私はピンと来たことがなかったけど、あの時やっと「男の人って守ってあげなきゃいけないんだ」って。かわいいかわいい男の子なんだなって。まだ実生活で考えたこともないのに思ったんですよね。そういうのがのってたんじゃないかな。
行定監督:思ったんだ(笑)それはね、魂が宿っている証拠ですよ。

「松岡の言葉が演出のヒントになった」(行定監督)
ラジオネーム「そろり」さん
映画『劇場』の公開おめでとうございます。今回お二人はご一緒するのが初めてということですが、行定監督が感じた役者・松岡茉優の魅力は何ですか?意外な一面などありましたか?また、松岡さんは行定監督のこれまでの作品についてはどう見ていましたか?そして、撮影時の印象的なことなどあれば聴ききたいです
松岡:私が聞きづらいことを聞いてくれた形なんですけども(笑)
私から話しますと、さっきも話に出た『ナラタージュ』の有村架純さんへの演出が、やっぱ映画を見てると私も俳優だから想像がなんとなくつくんですよね。今までの彼女の作品との違いとか、このシーンは行定さんから「抜いて抜いて」って言われたんだろうなという思いとか。だから撮影に入る前に同世代の有村さんのお芝居を見て、きっと若者をすごい愛してくれてるから飛び込んでしまって、私も「沙希ちゃん」でやりたい思いがこれもやりたいあれもやりたい、これはやりたくないっていうのがあるから全部ぶつけて、ぶつかっていけばいいのかな、教えてくれるのかなって思いました。で、撮影に入りましたね。
行定監督:なるほど。僕はね、いろいろ気持ちが変わっていくわけですけど。
松岡:最初は嫌いだったとか?
行定監督:そうそう、最初ね。ウソウソ(笑)
松岡:ええ~!?泣きますよ、アクリル板越しに!ヤダ~、私その冗談、ダメです!
行定監督:ウソウソ(笑)嫌いじゃなくて、最初に話しててこのホンに対してすごい理解力があるということがもうわかってたんで。事前の食事会で。
松岡:しましたねー。
行定監督:あの時に松岡が言う言葉が粒だって俺の演出のヒントにもなったりしたわけ。だからそこはもう大丈夫だなぁと思ってて。で、男ってこの「沙希」って女の子をある種、ちょっと可憐な女の子と定義すると簡単なんですよ。ただ、そこに色付けをして欲しいじゃない?だから可憐な女の子って言ってしまうとどんななのっていうのがあるんだけど。で、松岡茉優の普段はどっちかというとアグレッシブな感じで、非常に素直で自分の意見もちゃんとあるし、ちゃんと思ったことをポンと言える人だなって思ったから、こういう人とは大体やりやすいはずなんですよ。ただ、想像してる演技と違うことが多々出てくるんです。
松岡:困ったなあ、それは・・・
行定監督:出てくるじゃん、そういうの困るでしょう。だけど、僕はいつもどう思ってるかっていうと「役者が一番この役を知っている」
松岡:そう言ってもらえたらうれしい・・・
行定監督:だって、この役を俺が脚本を書いたり演出したりしてるけど、俺が知ってるんじゃないんだよね。その役をどう具体的に血の通った人間にするのかは役者の仕事だから。役者がこの台本を読んでどう思ったのかを見てみようと思って、最初の数日はこんな感じかって。
松岡:へぇ~。
行定監督:要するにフィットじゃなくてね。でも、なるほどって見ていって三日目ぐらいに「この人は、感情を台本上で素直にその場その場の衝動を重視する人なのか。または全体を俯瞰で見てある程度考えてそこに入り込んでる人なのか」でいうと、松岡は後者だったのね。グラデーションみたいに感情の流れが見えてくるのよ。
松岡:そんなに良かったですか・・・

© 2020「劇場」製作委員会「映画『劇場』を支えているのは松岡茉優の芝居。カメレオンです!」(行定監督)
「山﨑賢人くんの無防備に飛び込める感じが羨ましかった」(松岡)
行定監督:基本的に一発目は松岡茉優がやりたいようにやる。山﨑賢人はどっちかというと松岡の芝居をパンと受けて衝動で返しタイプだから、彼は計算ずくでやってない。どっちかというとその場その場。もちろん考えていると思うけど松岡の「沙希」との対峙してるところで自分がどう出るかっていうのは何が出るかわからない。山﨑に聞くと「僕、そんなことしましたか?』って無自覚でやっている。
松岡:ありましたねー、やってるやってる。
行定監督:あれはやっぱり「沙希」に対しての返しだから何かわかってないんですよ。普通は男の俳優と手を組んで女優をあぶり出したりする。『ナラタージュ』はそういうタイプの映画だったんだけど。今回はどっちかというと確固たる「沙希」の思いがあって、ラストシーンにも全部繋がってんだけど、実は水面下で。見えない所っていうのもあるんだけど、ちゃんと作られてないと映画がブレるんです。この映画を支えてるのは実は松岡の芝居で、それに山﨑が自由に色んな事、色んな顔を見せてくれたっていう感じなんで。ちょっとね、ほんと感謝してる部分もあるし。でもなんだろ、松岡は“カメレオン”ですね。
松岡:カメレオンいただきました!
行定監督:カメレオンっていっても、いかにもカメレオンの人っているじゃない?
松岡:そんなの、私がウンとも何とも言えませんよ!自ずと先輩だもん。
行定監督:毎回アプローチが違うよね。
松岡:そんなことないですよ、アプローチはいつも一緒だから悩み!
行定監督:でも、毎回違って見えるけどね。
松岡:それこそ監督が言った「こうかな?こうかな?」っていうのがあるから、それで現場で戸惑うことはあんまりないけど。何ていうのかな・・・そのぶん見切り発車ができないんですよ。それはずっと悩み。やっちゃってみようかなっていうのができないんですよ。
行定監督:だからちゃんとこうあるのね、自分でね。
松岡:監督とやってて、山﨑くんが上がって来るまで一緒に監督と手を組んで「良い山﨑くん撮るぞ」みたいな感じがあったけど。それを見てると山﨑くんの見切り発車っていうとすごい語弊があるかもしれないけど、何て言うのかな・・・無防備に飛び込めてる感じは、もし私が男の子で「永田」の役が来ても出来ないはずだから羨ましかった。そんな風に飛びだせちゃうんだって。
行定監督:この二人の共演って、実は相当面白いと僕は思う、結果的にね。なかなか無い。ある種、真逆なんだよね。今言ってるように、それがぶつかった時の熱量が物凄いんで、映画『劇場』はそれが残ってる映画だと思いますね。
「監督がみんな言ってるよ『松岡茉優は天才だ』って」」(行定監督)「自分のラジオで褒められるってダサ過ぎる!」(松岡)
松岡:話が戻っちゃいますけど、1日2日と泳がせてくれたってことじゃないですか。その1日2日分はやっぱり撮れちゃってるわけじゃないですか。最悪、録り直そうと思ってたわけですか?
行定監督:実はね、テイクの中で「もう1回!」って言ってる中で一応要望してるんだよ。少し抑えてるやつ、とか。
松岡:うんうん、覚えてる。
行定監督:だから例えば・・・「沙希」の前髪を触る癖があるじゃない?あれを「それって演技で考えてるの?それとも自然とそうなってる?」って聞くのはやっぱり監督しては愚問なんだよね。まず、やたら髪の毛に触ると思うんだけど、これが一つの演技プランだということがだんだん分かってくるじゃない。で、それを引き算にしていくやり方とかをこの子はやるんだと思って。あんまりやるとあざとくなるじゃない?だから、どっちか分からないから抑えめも撮っているんだけど。
松岡:そういうことか・・・
行定監督:一番重要なのは、編集マンが松岡がちゃんと一番これはやりたかったことをなるべく残そうとする編集をしてる。僕は何も指示しないですよ、自然とだよ!
松岡:おぉ!
行定監督:で、聞いたら「浅いテイクをけっこう意外と使っている」って。最終テイクを使うところもあるんだけど。最初の方のテイクを使うってことは、松岡がやりたいことの衝動みたいなもの、やりたかった事が明確に残ってるものを多く使ってるということは、たぶん松岡茉優が想像した「沙希」というものが、なるべく鮮度があるものを優先して使ったという。それはやっぱり松岡の力だなと思うし。監督がみんな言ってますからね~。
松岡:なんて・・・?
行定監督:ちょっとこう「天才的だな」って。言ってるよ!
松岡:やーだー(照)私のラジオで私のこと褒められたら、ダサ過ぎないですか、私。
行定監督:ダサいね(笑)
松岡:ダサいダサい。
行定監督:天才(笑)
松岡:ちょっとダサ過ぎる今週だったので、もうこの辺にして。行定監督、来週もお付き合いください!
引き続き、来週もゲストに映画『劇場』の監督「行定勲さん」をお迎えします。まだまだ映画のディープなお話が聞けそうです。お楽しみに。
(TBSラジオ『松岡茉優 マチネのまえに』2020年7月19日(日)放送より)

◆7月19日放送分より 番組名:「松岡茉優 マチネのまえに」
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