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2月15日(火)放送分

新型コロナの感染者は都内で連日1万人以上。しかし検査体制が整わず、感染の疑いがある人が検査をなかなか受けられないという状況下で1月末、厚生労働省の呼びかけで導入された「みなし陽性」。

対応を行う医療現場の現状とは?

「みなし陽性」は検査実施と比べて3倍の時間がかかる

みなし陽性とは、同居家族が感染したなど明らかに濃厚接触者でかつ発熱・咳・鼻水といった新型コロナの典型的な症状が出ている場合、検査をせずに医者が感染の判断をするというものですが、医療現場には負担がかかっている様子です。

「みなし陽性という考え方がなかなか世間に広まってませんので、その概念の説明をしたり、丁寧な問診というのが診断する上で必要不可欠なので、そういったところに割かれる時間的な負担というのは非常に大きい。例えば検査だけどんどんやるっていうケースですと、早ければ5分もすれば1人の診察が終わるわけですね。みなし陽性の場合は15分以上確実にかかるので、検査で診断する場合と比べると3~4倍時間がかかると。」
(ひなた在宅クリニック山王・田代和馬院長)

例えば抗原検査キットであれば、陽性を示す2本の線が表示され、早くて5分で判定が終わるものを、みなし陽性の場合、こちらの病院ではオンラインで患者に症状や周囲の感染状況を聞き取り、みなし陽性となった場合にはなぜ検査をしなくても診断できるかを説明、その上で今後の対応について説明、といった流れで15分以上はかかるということ。しかも、みなし陽性と判断した人でも「納得できずどうしても検査をして欲しい」という強い要望があれば、結局検査をして二度手間になるケースもあるそうです。こういった対応を通常の診療の合間を縫って行っているため、医療現場に負担がかかっている状況です。

重症化リスクが高い患者のために、検査キットをやりくり

みなし陽性によって医療現場に負担がかかる中、現状においてはみなし陽性を取り入れざるを得ない事情もあると、田代院長はこのように話しています。

「検査機器が十分に回るわけではなくて、どんどん闇雲にやっていると足りなくなっていってしまう。そういう状況で本当に検査が必要な人たちがいるわけで。そういう方っていうのはハイリスクな方なんですね。具体的には、年齢の高い65歳以上の方ですとか、基礎疾患、そういった方に検査機器を取っておく。検査機器が十分にあれば若い方の診断も検査である程度、陽性であれば確定、陰性であっても「可能性があるから注意して療養してね」っていう説明ができるんですが、高齢者はやはりできるだけ診断確度を上げていかないといけないので、こういった方に検査できないとなってしまうと必要な医療介入が遅れてしまいますので、適切にみなし陽性、臨床診断を使いながら必要な人に必要な検査を回すと、そういうやりくりを求められています。」
(ひなた在宅クリニック山王・田代和馬院長)

そもそも検査キットが十分な数あれば全員検査すればいいのですが、残念ながら足りていない…という中で、こちらの病院では、若い人で症状や濃厚接触の状況から感染を判断できる人には「みなし陽性」。高齢者や基礎疾患のある人には検査を行う対応をとっています。

花粉症シーズン到来でみなし陽性が困難に?

ひなた在宅クリニック山王では、たとえ若い人でも新型コロナ以外の病気と判別がしづらい場合には、みなし陽性とせず必要に応じて往診をするなどの対応をとっていますが、今後懸念されるのが、オミクロン株と症状が似ているという花粉症シーズンの本格化です。

花粉症の専門家に聞きました。

「花粉症の方が新型コロナ感染者、特にオミクロン株の感染症になるとなかなか新たにオミクロン株になったかどうかっていうのは分かりにくいかと思います。鼻水とかくしゃみとか、のどの痛みとか、こういった症状というのは花粉症の症状とオーバーラップしているところがあるので迷うケースがあると思います。その一方で違う症状というのも言われています。例えば目、鼻、喉のかゆみ、あるいは鼻がムズムズするような感じとか、そういったものは通常は新型コロナ感染症ではあまり起こらないんですね。ただ、かゆみがないような方に関して言うとなかなか診断は難しいかと思います。」
(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・岡野光博さん)

オミクロン株と花粉症の見分け方の一つは目や鼻のかゆみですが、かゆみが出ない人もいて、そうなるとますますオミクロン株との区別がつかず、みなし陽性の運用がさらに難しくなるのではないかと危惧されています。仮に花粉症の方が知らずに新型コロナに感染者していたら、くしゃみによる飛沫で感染を広げてしまう懸念もあり、岡野さん達は花粉症の疑いがある人に対し、症状が本格化する前に医療機関を受診するよう呼び掛けています。。

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