TBSラジオで放送中の「ACTION」。金曜パーソナリティは、武田砂鉄さん。
9月18日(金)のゲストは、長渕剛さん。2週間前に長渕さんから武田砂鉄さんにお電話をされて、「砂鉄、出るぞ」ということでゲスト出演してくださいました。今日は武田さんが長渕さんの今思っていることをたっぷり伺いました。
武田:コロナ禍になって半年になりますが、いろんなことを考えられましたか?
長渕:3月頃がしんどかったですね。得体の知れない恐怖が押し寄せてきて。
武田:それは自分がどういう行動を取っていいか分からない恐怖ですかね?
長渕:そうですね。あとマスコミの報道もよく分からなくてね。混沌とした不安を叩きつけられるのが現代社会で、僕はそこに立ち向かう姿勢しかないからさ。「お前たちは本当のことを言ってるのか?」と。とにかく僕は歌を書こうと思ったね。そこに頭を使っていました。
武田:今は情報を得ようと思えばいくらでも得られますが、それを表現者としてどこまでアクセスすればいいか難しいですよね。
長渕:そう。だから俺、砂鉄君にも電話したよね。「一体どうなってんだ?」って。
武田:この電話が「どうなってんだ?」って思いましたよ(笑)
長渕:俺は意外と、なにか困ったときにすぐ仲間にSOSを出すんだよ。で、皆も「どうなってんだ?」って思ってるから、その不安をお互いに共有したらなにかしら動き出せる気がしてね。その現実に生きている人々の情報と、社会に流れるマスメディアの情報がどうリンクしたり、どう相違があったりをきっと無い知恵を絞りながら詩を紡いでいるんだろうね。
武田:「あいつはなにしてる?」とか「あいつはなにを考えている?」というのを様々アクセスすることによって、今の世の中がどうなっているのか、現場の人間はどういう状況なのかを把握しているということですよね。
長渕:そうだね。だってYouTube見たって嘘ばっかりだもん。大げさにつかみばっかり書かれているものが多いからさ。これは信用できないなと思って、いろんな現場で働いている人から現状を聞くことが一番いいなと思いましたね。
武田:自分の頭のなかに怒りやわだかまりが沸き立ったときに、それをどう表現に落とし込むんですか?
長渕:僕は怒りが原動力ですね。
武田:それは「なんで自分が苛立っているのか」を把握するためですか?
長渕:まず出すんです。ビールの泡をいっぱい出さないと本質が見えないみたいな。まず上澄みを全部捨てる作業として書き散らして、そこからですね。
武田:そのノートに書かれた怒りを客観的に見直すけど、見直す長渕さんもまだ怒ってるんですよね?
長渕:怒ってますよ。それをたとえば、「砂鉄、ちょっと歌詞書いたんだけど見てくれ」と人に見てもらいます。それは社会や現実を背負っているその人から見て、この歌詞がどう映るのが興味があるからです。
武田:そこが面白いといつも長渕さんと話していて思います。世の中的に長渕さんは自分の気持ちを発散されているイメージがあるかと思うんですが、ご本人はすごく周りと意見を交わしながら「自分の思っていることの位置はどこにあるのだろう」と常に考えていらっしゃいますよね。
長渕:ずっと考えていますね。自分でも嫌になるぐらい。
武田:なんでそんなに自分を疑うんですか?
長渕:怖いからですね。「間違っていたらどうしよう」と思っています。若いころは「間違っていたらてめえでケツ拭けばいいだろう」と思っていたけど、その歌を聞いて「俺もそう生きていこう」と思われたら責任重大だし、その責任を回避するところにも行けないでしょ。だから自分が現況に飛び込んで、見たもの嗅いだもの触ったものを書くのが一番いいんですよ。だから怖いですよ。
武田:いつからその恐怖が芽生えたんですか?
長渕:いろいろ叩かれ始めたときからかな…(苦笑)叩かれると死にたくなりますから。「叩かれるのが仕事だ」とおっしゃる人もいますが、やっぱり思惑が外れることもあるし、一生懸命歌ったり発言したことも、「言わなきゃよかった」と思うこともあるじゃん。そこの揚げ足を捕まえて、「あいつはこう言った!潰せ!」みたいなことを言われるじゃん。それに対して「冗談じゃねえ」と奮起もできるんだけど、人間って経験しないと強くなれないから。死にたくなっちゃうの。
武田:そういう言葉を言われたらダメージを受けるんですね。
長渕:もちろんダメージはあります。そういったものは完全に暴力だと思いますね。
引き続き、予定時間をオーバーしてたっぷり長渕剛さんからお話を伺いました。
◆9月18日放送分より 番組名:「ACTION」
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