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春の交通安全運動が始動しましたが、そんな中、高齢者に交通安全を学んでもらう取り組みを行っている自治体があったので取材しました。それは、岐阜県の「高齢者交通安全大学校」。

★高齢者交通安全大学校

岐阜県警察本部交通部交通企画課の高橋祐子さんに詳しいお話しを伺いました。

岐阜県警では、高齢者交通安全大学校を開校しています。65歳以上の高齢者を、入校生としています。教習所の自動車に同乗させて、自動車の運転者の立場から見た歩行者や、自転車利用者の危険行動などを理解させるものです。高齢運転者を対象にした物につきましては、実技講習として、指導員を同乗させて実車体験指導を行ったりですとか、ドライブレコーダーで記録した実車体験状況の映像を放映しながら、身体機能の変化等の自覚を促すものになります。
(岐阜県警察本部交通部交通企画課の高橋祐子さん)

なぜ岐阜かというと、岐阜県では1970年に交通死亡事故の死者数が317人という過去最悪の人数を出した。

この交通死亡事故というものを抑止していくために高齢者、歩行者自転車利用者という高齢着者を対象とした、安全教室というものができないかということを模索していたところ、1987年に、岐阜南署において、市橋地区を高齢者の交通安全モデル地区として指定して、そこで高齢者向けの交通安全教室を進めていた。

モデル地区の制度は岐阜県内の他の警察署にも波及していき、その中で、さらに発案されたのが、この「高齢者交通安全大学校」。2021年度に実際にカリキュラムを受けた学生の人数は2500人!年間およそ10回の講習を実施。

高齢者交通安全大学校は各警察署において設定され、小学校区を単位とし、高齢者に係る交通事故の発生が多い地区を優先的に選定。岐阜県内では22の警察署があるので、毎年22の高齢者交通安全大学校が開校されている。

歩行者、自転車シュミレーターを用いた交通安産教育や、指定の自動車教習所での実技講習などもあり、運転者側も歩行者側も双方の立場で交通安全を学べるカリキュラムになっている。今年度開校の詳細ついては、今月から来月にかけて決定する予定。

高齢者による事故

ただ、そんな長い取り組みの中、学校側の教える「テーマ」に変化も。
それは事故を起こしてしまう側=「第一当事者」の変化でした。再び高橋さんのお話し。

最初は高齢者の歩行者であったりとか、自転車利用者を対象として、被害に遭わないようなそういった教育の方を進めていったんですけれども、ちょうど平成16年頃からですね、岐阜県内の交通死亡事故に関して、「第1当事者」となる年齢層が若年層から高齢者層に変わるという、要は逆転現象が起きました。そこから高齢者交通安全大学校のカリキュラムの中でも、やはり高齢運転者に特化したような授業ですとか、身体能力や加齢に伴う影響等を学んでいただくような、そういったものにシフトしていったような経緯があります。実際にですね、まだまだ高齢運転者が「第1当事者」となる割合というものが今現在も増えていっているのが現状です。増加傾向を抜いた歯止めを効かせるためにも、高齢運転者に対する継続的な指導というのが必要だというふうに考えております。
(岐阜県警察本部交通部交通企画課の高橋祐子さん)

2003年あたりから、高齢者が第一当事者となる、つまり、高齢運転者による死亡事故の件数が若年運転者による事故を上回るように。そのような時代の変遷に伴い、現代ならではの、「安全サポート車の衝突被害軽減ブレーキ」の効果を体験する講座を開くなど、高齢運転者に特化した体験型のカリキュラムなどを組み込むなど努力はしているそう。

とはいえ、まだまだ数として劇的な効果や結果には結びついてないのが悩ましい所。継続的な指導が必要だと高橋さん。

ただ、実際にカリキュラムを受講した方からは、手応えも感じられていて、参加者からは、自分の運転も見直す良いきっかけになったと言う意見は勿論、中には、自分は大丈夫だと思っていたが、体が衰えていることを自覚するきっかけとなり、運転免許証の自主返納を考えたという意見もあったそう。

そこで実際にカリキュラムを受講した学生さんにもお話しを伺いました。

運転歴約50年のベテランドライバー、85歳、伊藤隆郎さんのお話しです。

車や自転車は必要!

私同年のものになりますと、だいぶ免許証を返上しておる者があります。ただし、当地においては、やはり自動車による交通手段というのは大変大事でしてね。少し離れたところへ出かけなきゃいかん。そのためには、車に乗ったりあるいは自転車に乗ったり、していかなきゃいかん車に乗るときどういう点に注意するか、あるいは自転車に乗るとき、どういった点に注意しなきゃいかんということは、こういう高齢者大学校を体験して、よりよくはっきりわかった気がするんですけどね。
(伊藤隆郎さん)

岐阜県の地域性として、車や自転車などを運転しないと、買い物を含めた日常生活がなかなか難しいとのこと。高橋さんもおっしゃっていましたが、75歳以上の免許の保有者も増えている。そういった意味でも、カリキュラムとして定期的に交通安全も学べる機会や場所があることは必要とのお話しでした。

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