毎週土曜日、TBSラジオ「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で、8:20頃に放送している「人権TODAY」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」をした人は、年間10万人近くに上ります。(総務省 2017年就業構造基本調査) 2015年に当時の安倍政権が「介護離職ゼロ」の目標を掲げて、現在の菅政権にも引き継がれていますが、目標にはまだほど遠い数字です。
なぜ介護離職は減っていないのでしょうか。望まない介護離職を防ぐ取り組みや介護者を支援する活動をしている「ワーク&ケアバランス研究所」の代表・和氣美枝さんにお話を伺いました。
▼和氣美枝さん
和氣美枝さん
一番の大きな原因は、知らなさ過ぎることだと思っています。例えば、介護保険の知識もないし、育児介護休業法の知識もない。プラス、昔から培われてきている価値観ですよね。「介護は家族がやるもんだ」とか「介護は女がやるもんだ」みたいな考え方・価値感がまだ変わりきってないんですね。心のどこかでは働きながら介護したいと思っていても、世間の目とか親戚の声とか、いろいろなことで市民権を得ていない。そんな感じがあるので、介護離職に行き着いてしまう人も多いのではないかと思います。ほとんど使われていない「介護休業」
周囲の無理解が介護離職につながっているという現状もあります。育児介護休業法では原則として「事業主は労働者から介護休業の申し出があったときは、それを拒むことができない」と定められています。
今は新型コロナの影響で、企業が介護に関する制度などを学ぶための研修費を削減するケースも少なくないということですが、研修が出来なくても、企業が介護離職防止のためにできることは山のようにあると和氣さんは指摘しています。
▼セミナーで介護について説明する和氣さん

和氣さんは、ご自身の母親の介護を長年されています。80歳を超えるお母様は認知症が進み、排泄の介助が必要だったり、外を徘徊してしまうこともあるそうです。さらに今はコロナ禍で、介護の負担はより重くなっているそうです。
和氣美枝さん
感染リスクをとにかく減らしたいので、私が外に出てないんです。今までは月に1~2回は朝から晩まで母と一緒に過ごすという日もあり、外に散歩に行ったりすることもできたんですけれども、今はそれもできない。かつ私が外出できないストレスがあるので、母を毎日ショートステイまたはデイサービスに通わせてます。それぐらい、逆にうちは介護サービスの利用が増えました。
▼介護を続けるお母様と(2020年初詣)

和氣さんはコロナ対策で在宅勤務をするなど、なるべく外に出ないようにしています。高齢で重症化リスクの高い母親に感染させてはいけない、感染させてしまったら、母親を預けている介護事業者にも迷惑がかかってしまう。
また、介護サービスを提供する介護事業者も、コロナの影響で経営に打撃を受けています。去年1年間の介護事業者の倒産件数は118件で、過去最多を更新しました。(東京商工リサーチのまとめ) 休業や廃業、解散も455件で過去最多です。介護をしている人にとって重要なライフラインである介護事業者がもし減って必要な時に預けられないとなると、介護をする家族にかかる負担はより重くなってしまいます。
離職する前に相談を今はコロナ禍で、介護と仕事を両立している人がより苦しい状況になっていますが、和氣さんは介護離職をする前に周りに相談をしてほしいと話しています。
和氣美枝さん
やはり、望まない介護離職は止めたいなと思っています。肉体的にも精神的にも経済的にも負担が増えてしまうんです。「ちょっと楽になりたい。1回荷物を下ろしたい」と思って仕事を辞めてしまうんですね。辞めた瞬間は確かに楽にはなります。ただ、後で気付くんですよね。
和氣さんは、働く介護者がオンラインで交流できるサロン「ケアラーズ・コンシェル」を運営しています。和氣さんも参加して質問に答えたり、個別相談も行っているということなので、ぜひ活用してほしいということです。
※次回は3月20日(土)13時30分~15時。Zoomで開催との事です。
▼介護者の交流の様子(現在はオンラインで開催。参加者の顔を加工しています)

(担当:進藤誠人)
■取材協力
ワーク&ケアバランス研究所
◆3月6日放送分より 番組名:「人権TODAY(蓮見孝之 まとめて!土曜日内)」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210306070000