TBSラジオ『要 潤のMagic Hour』毎週土曜17時から放送中!

8月13日(土)放送後記

ゲストは先週に引き続き、登山家の野口健さんです。

最上階10階にある 『エグゼクティブ オーシャンビュー テラス スイート 1007号室』で 東京湾を眺めながら、お話伺っています。

登山へのきっかけをもらった、ある本との出会い

野口さんが登山を始めたきっかけとなった出来事が起こったのは、高校に進学したばかりの初夏のころ。
学校内での喧嘩が原因で、1ヶ月の定額処分になってしまった時でした。

野口「停学って、本当は家にいなきゃいけないんですけど、停学初日に、父親が家に帰ってきたら、『せっかく1ヶ月時間がある。時間の使い方次第だ』とか言って(笑)家にいたら気持ちが内側に向くだけだから、『どこか遠くの知らない町まで旅をして、朝から晩まで歩け』と。いや、停学中は旅に出ちゃだめなんですよ?」

要「家を出ちゃだめですもんね(笑)」

野口「それでも、『いいから旅に行け、それの方が意味がある』と。」

そのお父様の言葉を信じ、親戚がいた大阪近くの京都を拠点に京都市内・姫路などを歩き回る日々を送っていた野口さん。

すると、旅の最中に、大阪駅の目の前にある喫茶店で、『青春を山に賭けて』(植村直己 著)という本に出会いました。

野口「僕は山に登ったことはなかったんですが、妙に気になったんです。

植村さんの名前くらいは知ってましたが、ご自身が色々コンプレックスなどを抱える中で世界を放浪してコツコツ地道に山に登って積み重ねていく姿を知ってこんな僕でも、コツコツ続けていけば何かが出来るかも、と思えて。それが15歳です。だから、山登りのきっかけは、停学です(笑)」

近藤「それと、お父様の助言!ですね。」

野口健「登山のきっかけは、あの本!」の画像はこちら >>

死を感じ、生に執着する...エベレストへの登頂チャレンジ

その後、植村さんの姿を追うようにして山登りを始め、25歳で、3度目の挑戦でエベレスト登頂を成功。
当時、世界最年少での、7大陸最高峰登頂を達成されました。

エベレストへの挑戦は2度目から大きく注目され、テレビ局の取材も同行。
スポンサーの名前も背負っての、プレッシャーを感じるチャレンジとなりました。

野口「エベレストって、毎年遭難者が出るんです。

残念ながら。標高7000mを超えた遭難者の遺体は、下ろす方にリスクがありますから、そのままにされる事が多いんです。だから登ると、至る所に遺体が凍っています。それが目に入ってきながらの登頂で...理屈で死を考えていても、最後は”死にたくないな”って思ってしまいます」

要「怖くないんですか?」

野口「怖いですけどね。頭では生きていると分かっていても、自分の肌を触っちゃいます。ダウンジャケットの下の汗や、伸びてきてる髭を触ってみて。

 ”自分は生きている”って確認したくなるんですよね。死をうわっと感じると。最後は、首の動脈を探すんですけど、見つからないと泣きそうになって。その後思ったのは、『これから先も生きたいな』って。死をリアルに感じて、生に対する執着も出てきます。」

1度目の挑戦は、ペース配分ミスなどもあり、失敗。
下山中には気持ちが切れ、命を諦めてしまいそうにもなったこともあったとか。

野口「諦めようとしたら、シェルパに引っ叩かれました(笑)ダウンジャケットを開けて寝転べば、30分で意識が無くなるのに。苦しすぎると、明日まで生きようとは思えなかったんで、1時間後まで生きよう、と。で、諦めようとすると、またぶっ叩かれる。」

要「助けてる方は、なんで弱音吐くんだって思いますよね?」

野口「そういう時に、”がんばれ”という言葉はダメなんですよ。シンプルに顔をバーン!なんですよ。それで、目が覚めて、我に帰れます。」

野口健「登山のきっかけは、あの本!」

下山を決めた、恐怖心と想像力。

そんな野口さんの忘れられない山は、2019年に3度目の挑戦をした、マナスルです。


22年間共に山を一緒に登ってきた、カメラマンの平賀淳さんも一緒でした。

温暖化の影響で雪や雨が降るようになった、悪天候が多い山。
そんな山の最終キャンプで、野口さんは最後の決断を迫られました。

野口「山頂へのチャレンジをしていいのか、微妙だったんです。横にいる平賀さんは、いびきかいて寝ていて、相談できないし(笑)シェルパは、周りが行ってるから行こうと。そういう時僕は、イメージします。

まず、”登頂している自分”…ポッと見えました。次は、”無事にベースキャンプに生還してる自分”…浮かばなかったんですよ、頭に。その時は2時間くらいかけて悩んで、シェルパを説得して、何とか下山しました。結果、そのあと天気は崩れ、4パターンに別れました。登頂して無事に帰ってきた人、登頂したけど凍傷だらけの人、登頂して帰ってこれなかった数名、逃げた僕。正解ってわからないですけどね。挑戦してたら登れてたでしょうし。でも僕らは、『無傷で生きて帰る』という約束だけは、守れました。」

野口健「登山のきっかけは、あの本!」

野口さんと、娘の絵子さんとの共著・対談本
『父子で考えた「自分の道」の見つけ方「正解」を選ぶのではなく、選んだ道を「正解」にすればいい!』
が現在発売中です。

来週は、絵子さんとのお話も伺います!お楽しみに。

OA楽曲
Strong/London Grammar