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4月6日(木)放送後記

旧統一教会の問題で、いわゆる「霊感商法」が社会問題となりましたが、インターネット上では、「占い」を悪用した詐欺が増えているということで、取材しました。

占い師とのメールのやり取りで高額請求

実際に、どんなトラブルが起きているのか。消費者からの相談を受けている、東京都消費生活総合センターの髙村 淳子さんに伺いました。

東京都消費生活総合センター 髙村 淳子さん

「いわゆる占いで、高額な支払いをしてしまった」っていう相談になりますね。

きっかけはほぼ、いわゆる迷惑メールと呼ばれるようなもので、「あなたの運気を上げる方法がある」とか、「高名な先生から占いのお知らせがあります」とか、そういうようなメールにアクセスしてしまうというのがきっかけになることが多いようです。

初めは無料で出来るところからはじまるので、一、二回のやり取りは無料でできるんですけれども、その後「色々と知りたい場合はポイントを買って、そのポイントで支払ってください」という形になります。

中には、すごくハマってしまって、合計額でいうと、700万とか1千万近く、支払ってしまっている人もいらっしゃいます。

夢中でやり取りしていて、気が付いたら、1千万円近く支払ってしまった例もあるようです。

具体的には、どんな流れなのか?

「無料でメール鑑定します」というメッセージが、迷惑メールや、ネット上の広告で流れてきます。
「無料なら…」と、たとえば将来お金に不安のある人が、「お金に困っているので、私の金運を占ってください」とメールします。
すると、すぐに返信がきて、「名前、住所、生年月日」などを聞かれた上で、何通か、やり取りをしていきます。その中で、「あなたは今、人生最大のチャンスが訪れています」、「明日も鑑定をうければ、運気がさらにアップ!」「上がりきったところで宝くじを購入すると高額当選の可能性があります!」などと、言葉巧みに引き込んでいきます。
そして、先が知りたくなったタイミングで、「ここからは、1通あたり、15ポイント必要です。つきましては、1ポイント100円、1500円分の購入をお願いします」と言われて、ポイントを切り崩す形で、メールを続けていきます。(1回1500円なら支払えますが、1日5通送れば7500円。

毎日続けると、月20万円を超えてしまいます)
中には、「呪文を40通メールで送りなさい」など、あっという間に、課金額が膨らんでいきます。

被害者の多くは高齢の女性

でも、「そんなことでだまされるのかな…?」と疑問に思ってしまいますが、どんな人が被害を受けているのか。お話を聞いていると、ある傾向が見えてきました。再び、髙村さんのお話です。

東京都消費生活総合センター 髙村 淳子さん

傾向としては「60歳代以上の方」の相談件数が、すごく増えてるんですね。

ガラケーを持ってた方が、スマホに変えるようになっている。スマホの場合はURLをピッと押すと、そこに飛んでしまうじゃないですか。だからそのワンクリックでいけるっていう簡単さが、こういう被害を、もしかしたら増長させているかな、という可能性を見ています。

それ以外にも、コロナで遠くに住んでいる親戚の方々に会う機会が減っている時期。なかなか外に出て、楽しく皆さんとお喋りしたりとか、そういう機会を奪われている部分があったと思うんですよ。

そういう時に、自分のために占ってくれる人がいて、メールのやり取りをチャットのように何度かやり取りができるっていうことを考えると、やはりそこにすがっていく部分っていうのも、もしかしたらあったのではないかと考えます。

被害額が数十万円~1千万円となると、かなりの金額ですが、退職金が口座に残っていて、ある程度支払う金額はある、というケースも少なくないようです。

また、コロナ前までは、年間の相談件数が、20~50件程度だったそうですが、コロナ禍の2021年度、2022年度の相談件数は、それぞれ250件を超えているそうで、その3分の2が60代、70代、80代の、特に女性に目立っているようです。

では、どこで「おかしい」と気づくのか?

実は、家族が異変に気が付くパターンが多いそうで、親のクレジットカードの明細を見てびっくりしたり、「最近メールばかりしていておかしいな」と思って、息子さんや娘さんが相談に来ることも多いそうです。

占いとはいえ、一見、親身に相談に乗ってくれるので、普段、会話ができる相手がいないと深入りしてしまいます。さらに、家族と一緒に住んでいたり、仕事や近所の付き合いがあるなど、日常的に会話がある暮らしならともかく、ずっと一人で会話のない暮らしをしていると、メールのやりとりでも癒される…。そうした弱みにつけこまれてしまうのです。

占いを「詐欺」で訴えるのは難しい

ということで、結果的に、孤独感や孤立感を感じている方が被害を受けることが多い、根深い問題ですが、では、払ったお金は返ってくるのか?弁護士の佐久間 大地さんに伺いました。

「大地総合法律事務所」弁護士 佐久間 大地さん

運気が上がってるかどうかって、ぜんぜん数値化できるものでもないし、「詐欺の立証」っていうのは非常に難しい。

例えば1ポイント20円とか、一通送るのにいくらっていう、そこの部分を偽ってるわけでもないので、「詐欺」という構成は基本的には使わないんですよ。

「占い詐欺」の方が、弁護士からの返金請求で、詐欺に基づくものがしにくいっていう、だんだんだんだん知恵をつけてきてる。だから、占い詐欺が少しずつ増えてるんです。

ただ、彼らっていうのはやっぱり、色んな法律に違反して運営していてですね。神秘性を交えた勧誘をして、相手の冷静な判断力を失わせて高額なお金を支払わせる、っていうものに関しては、契約を取り消すことができる。みたいな規制がですね、「消費者契約法」にありますので、返金請求していくことはありますね。

取り戻すことができるケースもあるが、詐欺として訴えることは難しいということです。

なぜなら、占ってもらった時点で「サービスの提供は受けている」ことになり、「1ポイント=100円ではなく、1万円でした」など規約上、嘘をついているわけではないので、詐欺として立件することは難しいそうです。

ただ、こちらの不安をあおって、物を買わせたり、サービス料を支払わせたりするのは、「霊感商法」として訴える方法があるとういことなので、泣き寝入りせずに、情報収集してほしいと話していました。

「うまい話はない」ということを、肝に銘じたいものですが、心配な方は、消費者庁の消費者ホットライン「188(いやや)」に電話して、相談することもできます。

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