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4月24日(月) 放送後記

毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は、「経産省、100億円上乗せ発注」という、経産省の無駄を指摘する記事に注目しました。

これは、高騰する電気代ガス代を抑えるための経産省の事業についての記事。ガソリン代を安くするのと同じで、電気・ガス会社に国がお金を入れて、その分、安くするという事業で、ガソリンの時と同様「なんで直接市民にお金を出さないんだ!」と、この番組でも問題にしていましたが、さらに、国と、電気・ガス会社の間に入る代理店に、100億円も上乗せしたという話なのですが・・・。

一か月で100憶円の増額。しかも国の提案で!?

これは何なのか?記事を書いた、東京新聞政治部記者の山口哲人さんに聞きました。

東京新聞政治部・山口哲人記者

「そもそも、この事業を始めるときに、公募という形を取って、事業者側は提案書というのを作って「この金額で出来ますよ」というのを経産省に提出します。それを受けて経産省の中の第三者委員会が審査員となって、A社がいい、いやB社の方が優れているというのを審査します。

結果から言いますと博報堂という代理店に決まりました。

で、博報堂の提案していた金額に対して、その一か月後に経産省が決定した金額というのが100億円上回っていた、と。額で言うと1.5倍。

これは、取材をもとに、あと国会の答弁をもとに言いますと、経産省が、提案した金額じゃ、これじゃちゃんとできないでしょ?と。コールセンターをもっと充実させなさいとか、審査体制が不十分だからもっと人を付けなさいとか、そういったことを経産省側から言って、100億円を上げさせた、という形になっていましたね。」

博報堂が提出した金額は218億円。で、実際に今回請け負った額が320億円!102億円増えています。

しかも、博報堂の方が、この金額では出来ないからもう少し出して、と言ったのではなく、国の方が、この額ではちゃんとした事業ができないからと言って100億円上げさせた、というのです。

この問題は、3月の参議院予算委員会で、立憲民主党の田島麻衣子議員が取り上げて、経産省側が答えていますが「提案時の体制では不十分だったから増額しました」という説明があっただけ。

「充分な体制とコスパ良し!」で選ばれたはずなのに!?

そんなに博報堂の提案書は不十分だったのですか?と山口さんに聞くと、それは分からないんです、と。

というのも、提案書には人件費や外注費の金額は公開されているが、その人件費で何人雇うか、場所はどこを使うのか、電話を何本引くかなど、どの程度の問い合わせを想定した体制なのかまでは公開されていないので、実際に、不十分な提案書だったのかを確認することはできないのです。

ただ、経済産業省のホームページを見ると、体制が不十分だから増額、という説明では納得できない理由がある、と、山口さんは言います。

東京新聞政治部・山口哲人記者

「ホームページの公募のところを探すとですね、なぜ博報堂がいいのかというのを、丁寧に理由をつけて説明しています。

例えばですね、博報堂を評価するコメントとしては、「本事業を実施する上で支障がない体制であると考えられる。また、コストパフォーマンスの面でも優れているものと思われる」と、他にもいくつか理由は挙げているんですけども、かいつまんで言うとそういうことを言っていて「だから博報堂に任せましょう」と。

じゃあ、なんで増やすんだろう?っていうところが、私が記事を書いた出発点でもあります。

なかなか納得できない金額だと思います。200億が300億に増えてるっていう、しかも一か月の間で。経産省の第三者委員会が、ここができるよ、と。コスパが優れているし、ここに任せよう。

って言った後に、わずかな間でそんな増えてるので、なかなか納得は出来ないし、説明が尽くされてないという風に思います。」

第三者委員会が「博報堂はコスパが優れているし、体制も充分」と評価しているのに、100億円も増額することが不可解な上、その説明責任が果たされていない、と山口さん。

このお金は、この事業における事務費・管理費で、経産省では、想定して予算を組んでいた。しかし博報堂がそれより全然低い額を提案してきちゃった!我々の感覚だと、安くやってくれるならありがたい!なのですが、それを経産省は、最初の想定の予算額まで増やしてしまっているのです。

山口さんは、安くやってくれるというのに、わざわざ業者を潤わせるようなことをして、そんなお金があるなら電気代を安くしてくれよ、というのが国民感情だ。経産省のお金の使い方は目に余るものがある、と話していました。

不要額は返します、と言うけれど・・・?

ちなみに、山口さんにお話を聞いた日は、参議院経済産業委員会で、また田島議員がこの問題を取り上げ、西村経産大臣が答弁をした日だったのですが、ではその委員会で進展はあったのか?取材した山口さんに聞きました。

東京新聞政治部・山口哲人記者

「今日、大臣が明言しましたので、不要額が出た場合は返納させますという風に言っていたのと、今後、経産省の事業で第三者委員会で最初決まった時と比べて大きく変わった場合は、もう一回第三者委員会にチェックしてもらう、ということを明言しましたので、少しは改善する・・・という風に期待したいと思います。ただ、余らせないように使うと思いますけど。この事業9月10月までなので、それ終わった後、また私もしっかりチェックして報道したいと思います。」

西村大臣は、100億円の増額を説明しながら、その内の50億円が何に使われるか、よく理解していなかったことも分かっていて、非常にずさんで信用できないのですが、今回、「不要額が出たら返納させる」「今後同様のケースは第三者委員会に再チェックさせる」と改善策を明言したので、山口さんは取材を続けたいと。ぜひ、お願いします!

山口さんは、今回の100億円上乗せの他にも、経産省のお金の使い方に関する記事を書いていますし、他の省庁からも、経産省のお金をしっかり取材してと言われることもあるとか。そのお金は我々の税金。経産省、どうなってるんでしょう??

それにしても、この額。

そのお金を他のことに使ったら、何ができるのか??私たちも、しっかり目を光らせておかなければいけませんね。

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