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5月18日(水)放送後記

5月14日(土)~20日(土)のTBSは、SDGsキャンペーン「地球を笑顔にするWEEK」。

そこで今回は、「誰もが着やすい衣類」について取り上げます。

SDGsでは「だれひとり取り残されない」という考えが根本にありますが、そうした中、「誰もが着やすい」、これまでになかった、全く新しい衣類が登場しています。

視覚障がい者などの悩みなどから生まれた「もう誰も間違えない靴下」

まずは、靴下。「ouca(オーカ)」の、田村 優季さんに伺いました。

「ouca(オーカ)」田村 優季さん
もう誰も間違えない靴下ですね。
「minamo(ミナモ)靴下」っていう名前をつけている靴下なんですけど、まず、踵がない、縫い目もない、裏表もない、左右もない、どう履いても本当に間違いっていうものが発生しない靴下なんですね。
筒型の靴下なんですけど、特に踵がないからといって、ズルズルにずれることはほとんどなく。
やっぱり視覚障害者の方々の悩みを聞くヒアリング会に行って、その中で、「靴下を履くだけで30分もかかる」。
片方どこか行ってしまったってなったときに、ペアを見つけるのに時間がかかる。裏表を確認するのに時間がかかる。「踵がどっちかな?つま先はどっちかな?」って見つけるのに時間がかかる。
その全部を盛り込んだ靴下が、「minamo(ミナモ)靴下」。

▼表面の模様が「水面」を模しているため、「minamo(ミナモ)」と名付けられました

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服の画像はこちら >>

前後もない、左右もない、裏表もない、という靴下を、昨年から売り出しています。

普通の靴下はかかとの部分が折れ曲がっていて、縫い目もついているので、裏返して使いませんが、こちらの「minamo」靴下は、形状が「筒状」で、360度どこから足を入れてもOK。

サイズを問わないフリーサイズになっています。また、裏表がないので、脱いだ時に裏返っても、洗濯してそのまま履くことができます。

色は、グレー基調のチェック柄で、ピンク、黄色、緑、青と、4種類。色は違いますが、とても淡い色なので、左右違う色を選んでも違和感なく、むしろSDGsらしく多様性を楽しめるようなデザインになっています。

お値段は、「3本」で税込5500円します。

実は、「minamo」靴下は、1本、3本、5本、7本と、奇数のセットで、組み合わせ販売されています。余った分は、予備にできたりしますが、「靴下はペアが、当たり前」、「裏表があって、当たり前」という、固定概念を打ち破るコンセプトを象徴して、あえて奇数で売っているそうです。(どうしても2本、ペアで欲しい!という人は、1本を2つ買うように案内している)

これなら、「もう誰も間違えない」。誰もが使える製品ですが、視覚障がいのある方にも喜ばれているそうです。

【前後左右裏表がない「minamo靴下」】

発達障害の息子が一人で着られる「どう着ても間違えないTシャツ

そして、こうした「だれひとり取り残されない」デザインは、すべてを包摂するという意味で、「インクルーシブデザイン」と呼ばれますが、今、衣類に広がりを見せています。

続いて、服飾ブランド「fukufuku312(フクフク サンイチニ)」の代表、前田 香さんです。

「fukufuku312(フクフク サンイチニ)」前田 香さん
前後裏表がなく、どうやって着ても「間違えない」、Tシャツを開発しました。
前身頃と、後ろ身頃が、全く一緒のものがくっついている。


表でも着れるし、裏返しても裏だとわからないような生地だったり、縫製の仕方をしてあります。
私の息子がですね、発達障害でして、前後・裏表っていうのの見分けの付け方が、どうしても難しくって。
タグの位置が左だよとか、襟ぐりの微妙な差で前と後ろ見分け分けよう、って言ってもそれを教えるのも難しくて。
それだったらもう自分で作った方が早いんじゃないかなっていうことで、作り始めたのが、きっかけです。

リバーシブル且つ、後ろ前でも着られる、「オールフロントTシャツ」を開発(オールフロント=全部が前)。

▼子供用のTシャツ:着こなし1(前面)

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

▼着こなし2(背面)

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

▼着こなし3(裏面)

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

▼着こなし4(裏面の背面)

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

▼タグは法律で取り付けなければいけません。ただし、購入後、自分でカットすることが可能

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

▼手間がかかる「折伏縫い」を施している

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

さらに、肌触りも、優しくなっています。前田さんの息子さんは発達障害で、チクチク、ごわごわが苦手な「感覚過敏」の特性もあり、市販の洋服で合うものがなかなか見つからなかったそうです。

そこで、「だったら自分で作っちゃえ!」と、自ら、手作りに着手。

そしてせっかく良いものができたので、同じ悩みを抱えている発達障がいの子にも使ってもらいたいと、数年前からネット販売を開始しました。

お値段は、子供サイズが、税込み3980円。大人サイズが、税込み4980円。


(Tシャツ、ズボンともに、同価格)

【前後左右裏表がない「All Front」Tシャツ、パンツ】

商品は良い!でも、もっと売れないとビジネスにならない

ただ、製品化するには、縫製メーカーの協力が不可欠ですが、何件も断られた末に、地元・和歌山の企業の、協力を得ることになったそうです。

ということで、和歌山市の縫製メーカー「マキカンパニー」の、紀田 丈治さんに、オールフロントTシャツの製造を、なぜ引き受けたのか、伺いました。

「マキカンパニー」副社長 紀田 丈治さん
この商品見たときに、もう惚れました。よくこんなもん作ったなと。
まぁ、私もこの業界、それこそ40年やってますけども、こんな発想なかったですからね。
これはいい商品だなと思って、どれだけ大変かその後知るんですけど…。
簡単なTシャツだったら1枚ガーっと縫い上げるところを、9倍位のイメージ。
時間がかかる=コストですから、これは大変なことになったなと。
でも、この商品いいよね、はい、って言いながら…。
数が売れて、経済ロッドに大体なってきたら、これはもう、続けていけると思います。
あ、現状の量だと、そらもう、一生懸命、夢を、前田さんと追いかけている状態でございます、はい。

▼左から、オールフロントのズボン、子ども用Tシャツ(半袖)、大人用Tシャツ(長袖)

絶対間違えない!誰でも着やすい!前後・左右・裏表がない服

オールフロントTシャツは、作業工程に時間がかかり原価も高く、採算度外視で販売しています。

ただ、ファストファッションだと、1着2000円程度で買えるので、相場としてはお高め…。

最近は、目の不自由な方や、高齢の方から問い合わせが増えているそうですが、もう少し数が売れることで、ビジネスとして持続可能になっていくとお話していました。

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