TBSラジオ Podcast番組「ベビーのいる生活~迷える子育て応援Podcast~」毎週月曜午前10時配信!
2022年に理化学研究所から、赤ちゃんの寝かし付けに関する研究結果が発表されました。いろいろなところでニュースになり、「これなら寝てくれるかも…!!」と助けられたかたも多いのではないでしょうか。
ベビーのいる生活~迷える子育て応援Podcast~。今回はその研究をされたご本人。現在は、東京工業大学で脳のメカニズムから親子関係を研究されている黒田公美教授に、研究結果を詳しく伺いました!
寝かし付けを科学的に検証すると?
川島:5分間抱っこ歩きをする、歩いたら5分~8分椅子に座って抱っこしたままじっと待ってから布団やベッドに置く…という研究結果。もう少し具体的に教えていただけますか?
黒田:そもそも泣いてないときよりも、子どもが泣いているときのほうがよく寝るようです。これは私も相当意外だったんですけど、おそらく眠れないからグズっているんだと思われます。
川島:「本当は眠りたいんだよ~」という気持ちでグズっちゃってるんですね。
黒田:そうですね。どういうタイミングで寝かしつけを始めるかというのがあるわけですね。それから、5分間はしっかりじゃなくてもいいんですけど、やっぱり時計で計ったほうがいいです。勘でやると意外と5分は短いような長いような時間でして。この5分間はできるだけ一定のペースで歩いていただきます。
川島:赤ちゃんを抱っこしていると、ユラユラなイメージがあるんですが、それよりはスタスタ歩くような感じですか?
黒田:そうです。このほうが良いとは、私も全然想像していなかったんですが、赤ちゃんは動きの変化にすごく鋭敏に気付いているんです。
川島:それだけで気付いちゃいますか。
黒田:そうなんです。向きを変えることにすごく敏感なんです。なのでできれば、円を描くように一定のペースで、あまり変化をつけないように動くのがオススメです。
川島:なるほど。円を描くように、部屋のなかを広く使ってひたすらぐるぐる歩いたり。
黒田:そうですね。
赤ちゃんに備わっている本能
川島:「輸送反応」というものが関連しているということですが?
黒田:抱っこして移動する、つまり赤ちゃんを運ぶということ。親が赤ちゃんを運ぶときというのは、野生や自然界では、あやすために運ぶというのはほとんどありません。運ばないと危ない状態なんです。たとえば外敵が迫っているときとか。
川島:本能的に備わっているものということなんですね。
黒田:そうですね。教わることがなくても生まれたら比較的早くそれが大体の赤ちゃんにあります。もちろん完全に泣き止むかどうかはわかりませんが、かなり泣きが減るというのはあります。
川島:私は子守唄を歌ったほうがいいのかしらと思って歌っちゃったりするんですけど、音もなるべく少なくしたほうがいいのでしょうか?
黒田:基本的に、緊急時のために赤ちゃんが親に協力するっていう行動なんですね。なので、赤ちゃんを気にしていたり、赤ちゃんを寝かしつけてやろうとすると、どうしても赤ちゃんに注意がいきます。するとこれは緊急事態ではないというイメージになってしまいます。
川島:歩き方とかペースとか、こうすればいいよというものはあるのでしょうか?
黒田:わかりやすく言うと、たとえば新幹線の時間があって、それに間に合うように駅に行くとか。そういう状況をイメージしていただくとわかりやすいかと思うのですが、そのときは子どもが泣いていても、親はスタスタ歩くことになります。そういう状況をイメージしていただいて、たとえば5分という決められた時間を自分の用事のために歩く。赤ちゃんのためではないという。
川島:思っているよりも本当に早歩きですかね。
黒田:ここは間違いやすいんですけど、早く歩こうとすると大股になります。そうなると危険ですので、普段よりもずっと小股にしてください。そうすると歩数としてはスタスタ歩いている。歩数が早いというか。一歩一歩は早いんですが、実際に移動している距離は短くていいです。部屋のなかですので。
川島:そのあと5分間でだいたい泣き止んだりウトウトしてきたり、いい感じと思っていたら今度は座るんですよね。
黒田:ここでベッドに寝かせようとすると、起きてしまうことがよくあるというのはみなさんも経験されていると思います。そこで、しばらく抱いているんですけど、そのときはあまり明るくないところで静かに座っていただいて。歩いている途中では寝られなくても座っている途中で寝る子はいます。
川島:どこが寝入りのポイントかっていうのは本当にその子によって違うわけですね。
黒田:そうですね。
川島:そのままじっと5分~8分くらい座って、いよいよベッドやお布団に置くっていうときは、静かに置いたほうがいいんですか?
黒田:私もゆっくり置いたほうがいいのかなと思っていたんですけど、成功例と失敗例を比べたときに、差はなかったんですね。
川島:そうなんですか!
黒田:私もすごく意外でした。歩いている状態とか座っているときの変化のない状態から、置くときってどうしても変化が出てしまいます。その変化が長引くことがかえって良くないみたいなんです。

お腹スイッチではなく「背中スイッチ」
黒田:ベッドに寝かせるまでの流れをずっと赤ちゃんの心拍を取りながら研究しているんですけど、それを見ますと、背中がベッドにつくよりもずっと前から、置こうと思ってベッドの前に立ち止まったくらいのところからすでに反応が起こっているんですね。
川島:すごい!
黒田:親と身体が離れる、離れ始めがもっとも強く反応が見られました。そこで目覚めかけていて、実際に目が開くのが背中がつくあたりのタイミングで、みなさんは背中スイッチと思うんですけど、反応自体はもっと前から起こっているんですね。
川島:思っているよりも赤ちゃんはずっと繊細に感じ取っているんだなと研究からもわかりますね。
黒田:赤ちゃんは人類の原始的なままで生まれてきていますので、そこで親から離れるというのは危ない場合もありますので。そういう危険を察知するということのためにいろいろな赤ちゃんの反応が備わっていると考えています。
川島:個人的なことなんですが…赤ちゃんが泣き始めたらと思ったら、私の場合は自分のイヤホンをセットして、好きな音楽を聴いたり、ラジオを聴いたり、テレビの音声を聴いたりっていうまず自分の状況を作るところからやっているんですが、こんなママでも大丈夫でしょうか…?
黒田:親がストレスを感じて悲しい気持ちや疲れている気持ち、そういう気持ちになっているときは赤ちゃんにもそれがわかります。赤ちゃんは自分だけが幸せになることはできないんですね。親も幸せでないと、親がなんでストレスを感じているのか、不安なのか、子どもにはわかりません。もしかしたら「これは危険なのか?」と思ってしまうんですね。
川島:ありがとうございます。背中を押してもらったような気持ちです。
赤ちゃんは本能的にこういう生き物だ!と教えてもらえると、少し気持ちが楽になるところも。日々の生活に是非、活かしてみて下さい。