TBSラジオ「荻上チキ・Session」月~金曜日の18時00分から放送中!
10月12日(木)放送後記
TBSラジオは、10月9日~15日まで、フェムテック/フェムケアWEEKを開催中。生理やPMS、不妊治療、妊娠・出産、婦人科系疾患、更年期症状に関することなど、女性が抱える健康上の不安と向き合う1週間です。
月曜~金曜 午後6時から9時までの生放送「セッション」では、午後7時からの「Frontline Session」のコーナーで特集。フォトジャーナリストの安田菜津紀さん(※荻上チキさんは取材のためお休み)と南部広美さんが、日替わりコメンテーターとして、タレント/エッセイスト/国際薬膳師として活躍されている麻木久仁子さんをお迎えしました。
テーマは、「更年期と薬膳」。学びを深めた薬膳のお話を聞かせていただきました。
症状は千差万別。南部さんは刈り上げを決意させるほどの汗…
南部:公益社団法人・日本産科婦人科学会によりますと、閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間を「更年期」といいます。更年期に表れる様々な症状の中で、他の病気が伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く、日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」と名付けているそうです。
症状としては大きく3種類に分けられまして、ほてり、のぼせといった「血管の拡張と放熱に関する症状」。これ私でいいますと、汗が突然出てくるようなことが…。だから、ハンカチ毎日2枚か3枚か常に持ってないと駄目な状況なんですけど。めまい、動悸、胸が締め付けられるような感じなど、その他の様々な「身体症状」。そして、気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠などの「精神状態」などということで、いろいろとあるんですよね。
安田:これ本当に人によって違うと思いますし、南部さんは今おっしゃったように、汗が止まらない。だからこそね、後ろちょっとね、刈り上げたんですよね?
南部:私は首の後ろに、ダーッと汗が突然出てくる症状があって。夏は髪の毛があるとベタベタして…でも秋で急に涼しくなったじゃないですか。これ、冷えたまんまで風邪ひくなと思って。汗が発散するように「刈り上げてしまえー!」と。そしたらずいぶん汗を拭くのも楽になりました。
麻木さんは「今日から更年期に入るぞ!」で…
麻木:更年期はだいたい50歳前後なんですよね。私ちょうどその時、乳がんやったんですよ。それで、乳がんで「ホルモン治療」があって、女性ホルモンの働きが乳がんの再発リスクを高めるということで、女性ホルモンの働きを抑制する薬を飲むんです。変な話、50歳の誕生日の時に手術したんだけど、その後に飲み始めて。もう「今日から更年期に入るぞ!」みたいな「今日からパッキリ入るぞ!」みたいな感じだったんですよ。
あともう1つ、それ以前に生理の症状がすごく辛くて、痛みとかがあったから、私の中で更年期に入るけど、閉経すると楽になる。もう早く来てくれ!じゃないけど。
でも、これも人によってすごく違うんですよね。だからねこれね、難しいんですけど、更年期もそれで本当に辛い、日常生活に差し障るぐらい大変だっていう方もあれば、気がつかなかったっていう人もいるから。
安田:「更年期って、いつでしたっけ」って方もいらっしゃるんですね。
麻木:だから、これ何とも言えないんですが、私の場合は気持ち的にはポジティブに入って、身体症状としてはホットフラッシュ、のぼせですね、顔がカーっと熱くなるとか。あとは便秘。そして思い起こしてみれば、ちょっと気持ちの不安定もあったかな…と思うんだけど、こんな仕事してるとさ(笑)、何が原因がよく分かんないみたいな部分も。でも、5年間の治療が終わると同時に、更年期症状も治まって。その頃から「薬膳」の勉強も始めて、生活環境、食生活を整えるってことも同時に始めてました。
東洋医学の考え方に基づいたご飯の食べ方が「薬膳」
安田:私、実は全く詳しくない分野でして、そもそも「薬膳とは何か?」というところから伺いたい。
麻木:一言で言ってしまうと、いわゆる伝統的な東洋医学の考え方に基づいたご飯の食べ方なんですね。東洋医学っていう言い方をするけども、昔は東洋も西洋もなくて、医学は東洋医学だったんですけどね。だけど西洋医学ってものが近代になって花開いたので、それと区別して東洋医学って言って。
例えば陰陽のバランスとか、あと五臓六腑のバランスとか。あと、気の流れ・血の流れ・水の流れのバランスとか、様々ないくつかの物差しで人間の体のバランスを見て、この人の体に足りないものを食べる、この人の体に過剰なものを取り去るっていう考え方をするんです。
昔は西洋医学がないから、血液検査もできないしレントゲンも何もないから、外から人の体を見て、この人の体はどうなってんだろうってまあ、見るわけですけど。その時に、口から入るものの中で効果が顕著に見えるものは「生薬」として今でも漢方薬に使われているし、だけど同じ口から入るものでも、そんなに強い力があるわけじゃないけど、食事の食物には一つひとつ固有の力があるよという考え方で。例えば「貧血の人にはレバーを食べさせましょう」みたいなことが積み重なったのが「薬膳」。だから、一人ひとり、食べるものが実は違うんですよ。一人ひとり体が違って、タイプが違うから。
東洋医学では、同じ症状でも対応は変わる
麻木:例えば、更年期の症状でよくあるのが、ほてり・のぼせ・それから発汗。でも例えば同じように「更年期で、私発汗です」っていう人が二人いたとしても、東洋医学的に考えると「なぜこの人が発汗するのか?」。その発汗のタイプによって、その人の体質の違いを見極めて、何を食べるか、あるいは場合によってはどういう漢方薬を飲むかが変わってくる。
安田:私の乏しい知識で言うと、例えば私キュウリがすごく好きなんですね。家族に「キリギリス」って言われるくらいすごいキュウリが好きなんですけれど、少し薬膳をかじった私のパートナーなんかは「キュウリは体を冷やす効果があって、そんなに急いでキュウリを食べたら体冷えすぎるよ」なんていうことをよく言われるんです。今のお話ですと、そんな単純な話ではなくて、その人のほてりはどこからやってくるんだとか、もっと多角的に見ていくんですね。
麻木:だから、本当に更年期の症状で相当きついなっていう場合には、他に甲状腺機能障害とか鬱とか、そういうのがないかどうかをきちんと診察を受けて、「病気じゃない、だけど不調である」ってなったところで、それでも辛い場合には、例えば漢方薬局なんかで、自分の「証(しょう)」って言うんですけど、自分が東洋医学的に見てどういう体質かを聞いて、どういう薬が合うかを聞くと、そのお薬と似た形の同じ分類の食材を使ってご飯を食べよう、っていうこともできるんですね。
麻木さんがお薦めする症状別の食材とは?
安田:更年期、いろんな症状があって人によっても様々だと思うんですが、おすすめの薬膳を挙げるとすると、どんなものがありますか?
麻木:「食材のおすすめ」があるんですけど。まずそもそもね、この歳になると、基本的に生命力が老化に向かっているということで、その基本的な生命力の「土台」を支えるようなものを食べた方がいいんですけど、例えば山芋とかエビとか。こういうのをしっかり食べる。どちらかというと「陽の気」って言うんですけど、「陰陽」の「陽」です。
「陰陽」を簡単に説明すると、「陽」はアクセル、「陰」はブレーキ。要するに、自分を励ましてアクセル踏んでいく食材がエビとか、それからクルミとかナマコとか、あと山芋系のものとか。逆に、ブレーキの役割、これは体の潤いにも関わるんですけど、そういうのは魚介類ね、ホタテとか牡蠣とか、何かいかにも瑞々しいじゃない。
その上で、更年期の中でもイライラとか鬱々、メンタル系が結構あるよっていう人は、おすすめはまず1つは柑橘類。みかんとかレモンとか、そういったものをお食事に取り入れるのもいいし、お茶に入れてもいいし、とにかく香り。あとジャスミンティーとかもいいし、ローズティーとか香り系。その時に温かいお茶にして、あるいは温かい汁物にして。香りを思いっきり吸って、気持ちを落ち着かせるようなそのひと時。食べ方もリラックスしながら。
あと三つ葉とかミント、パクチー、バジルみたいなものもいい。薬味なんかもちょこっと、かっこだけ添えるんじゃなくて、わりかしざっくりざっくりドーンといって。メンタルはとにかく「気を動かす」って言うんですけど、香りの力を使う。だから変な話、お風呂に柚子じゃないけどレモンを浮かべてもいいし。
それから、例えばちょっとね、鏡で自分のベロの裏見てね。大体ちょっと黒っぽいんですね、青い色してるんだけど、それが青通り越して「青黒いな」っていう感じがしたら、それは血の巡りが良くないということなので、そういう時には、ターメリックとか、サフランとか、黒酢。あとね、ベニバナとかヨモギとか。そういうようなもので血の巡りを良くする。
それとあと、肌がザラザラしてきた、爪が薄くなって剥がれやすいみたいなことがある時には、レバーとかハツとか、あとは果物だったらブドウとかライチとか、あとはナッツ類ですね、落花生とか。そういうものを食べる。「自分の今の症状はどれなんだろう」ということですね。
南部:男性でも更年期ありますからね。ぜひ今日の麻木さんのお話、参考にしていただきたいと思います。
麻木久仁子さんをお迎えしてお送りした「Frontline Session」。麻木さんが更年期をどのように迎えて、どう過ごしたのか?貴重な経験談を聞くことができました。そして、国際薬膳師として出てきた薬膳話からは、たとえ同じ症状がある人でも、改善方法は人それぞれだということを学びました。更年期障害でお困りの方は、「薬膳」を取り入れることも検討してみてはいかがでしょうか?