TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』月~木曜日の夜22時から放送中!

10月19日(木)放送後記

(前編からの続き)

「クラリス」的視点、エピソードとしては消化不良気味だが……?

ちなみにこのヴィンセントの弟、マルコを演じる、アンドレア・ドデロさん。この、ちょっと愛嬌のある小悪党感、すごく絶妙でしたよね。本当に。

手下の顔ぶれも完璧でしたよね。また、ヴィンセントの屋敷内……いかにもイタリア的な古美術に加えて、ムッソリーニの顔の像、みたいなのもあったりして。なんというか、イタリア史に脈々とある血なまぐさい側面、みたいなものを、そこはかとなく連想させる作り。これ、美術のナオミ・ショーハンさんという方。アントワン・フークアさんとはずっと組んでる人で、さすがの仕事をしてるな、と思ったりしました。

でですね、そのマッコール/カモッラの間で、『マイ・ボディガード』以来のデンゼル・ワシントンとの共演、ダコタ・ファニング演じるCIA捜査官、エマの視点も入ってくる。正直、エピソードとしてこのエマの話は、ちょっと消化不良、という部分も感じなくもないが。彼女のですね、『羊たちの沈黙』でジョディ・フォスターが演じた、クラリス役的なあの感じ、なかなか様になっていて……だから、マッコールがレクターでエマがクラリス的なコンビで、やっぱりこれ、シリーズを続けられるじゃん?と思ったりもしますけどね。

さらに今回の「3」、途中で、デンゼル・ワシントン、アントワン・フークアコンビの大傑作『トレーニング デイ』を彷彿とさせる、要は「ストリート・イズ・ウォッチング(街は見ているぞ)」な展開……これ、アツいですね! 『トレーニング デイ』でもありましたね。あれ、アツいあたりですね。このコンビがやるのはまたさらにアツい!

アドリブのゴスペル、お約束の「雨」……最長にねちっこいラスボス殺し!

クライマックス。マッコールさんの残忍な手口と、神出鬼没っぷり。ほとんど超常的にすら感じられる。

さっき言ったように、完全にスラッシャーホラーというか……そこにイタリアンなテイストも加わりましてですね、なんなら「ジャッロ」な雰囲気も出てくる。実際あの、天井のガラスを突き破ってドーン!っていうところはもう、『サスペリア』ですね、もうね。そこ(殺し方)にさらにひと手間加えて、もう完全にやりすぎている(笑)。『サスペリア』、ぐらいな感じもする。

その後の、宗教的儀式、カトリック的な儀式と、暴力、殺人とのカットバック、っていうのは言わずもがな、『ゴッドファーザー』的でもあったりする。アントワン・フークアさん、『ギルティ』のリメイクの時も、ド頭で『地獄の黙示録』オマージュをサラッと入れてきたりして……いわゆるそのドスンとした名画の影響を、ジャンル映画の中にシレッと入れ込む感じ(笑)っていうのが、僕はもはやアントワン・フークアさんの作風、芸風のうちになってるな、という感じもいたしました。

ラスボス殺しのね、ねちっこさ。今回、最長でございます(笑)。さっきも言いました。マッコールさんの歌ってるゴスペル「It was The Blood」……これ、デンゼル・ワシントンが、アドリブで入れてるそうですね。ラスボス戦では必ず、雨(的なもの)が降っている、というのもシリーズ定番でございます。おそらくはその、「罪を洗い流す」というようなニュアンスが入っていたりするんじゃないでしょうかね。

マッコールさんに救いが訪れた、のか?

これで終わりである必要は必ずしもない終わり方ではありますが、今回の「3」……ただ、マッコールさんの、先ほどから言ってる強迫性障害的な傾向が、ちょっと薄まったのかな?と取れるような、一仕掛けがあるので。先ほどメールにもあった通り、マッコールさんの心の平安という意味では、これでいいのか、ということもありますね。まあこのエンディング……でもちょっと、観光映画としてのちょいダサ的な幕引きも(笑)、なかなかちょっと味わい深いものがある、ということでございます。

ということで、「マッコールさん、まだまだ行けますよ!」って言いたくなる……これはだから、この作品が大ヒットすればね、またアリということでしょうから。日本でももうちょっと人が入っていてほしいな、という感じがいたします。そうすれば、2021年からやっているクィーン・ラティファ版(新ドラマシリーズ)……ソフトとか出したりして、もうちょっと観やすくしてほしいな、っていうのもあるし。それもこれもこの『イコライザー3』がヒットすればこそ、でしょうからね。『イコライザー3』こと『イコライザー THE FINAL』、ぜひぜひ劇場でマッコールさんの活躍を……マッコールさんに会いに、ぜひぜひ! お時間が来てしまいました、ウォッチしてください!

(次回の課題映画はムービーガチャマシンにて決定。1回目のガチャは『北極百貨店のコンシェルジュさん』。1万円を自腹で支払って回した2回目のガチャは『アンダーカレント』。よって次回の課題映画は『アンダーカレント』に決定! 支払った1万円は毎週ウクライナ難民支援に寄付していますが、今週はさらに1万円上乗せして、パレスチナ/イスラエルでの人道危機に対する緊急支援にも回すことにいたしました)

以上、週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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