TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!

10月26日(木)放送後記

先週このコーナーで、「救急車のサイレンの音が一部、静かになった」という話題を取り上げましたが、そうした音のトラブルを防ぐために、最近、防音効果のある賃貸物件も、注目されているようです。

防音マンション「ミュージション」、4000組待ち

まずは、防音物件を扱う株式会社リブランの田代 聡夫さんに伺いました。

株式会社リブラン 田代 聡夫さん

24時間、楽器演奏ができるような「防音室」付きの賃貸マンションを提供しています。


ミュージックとマンションを合わせた造語で、「ミュージション」というブランドで提供しています。
見た目は、普通のマンションとあまり変わらないです。
ただ、天井も壁も床も二重になっていて、防音性能を高めている。
夜中にトランペットを吹いても、隣の部屋では聞こえない。
会社員の方が多くて、音楽趣味でなさっている方が圧倒的に多いと思います。
同じ楽器やってると、自分より上手いのを聞くのも嫌だし、自分より下手なのを聞くと嫌だし、つまり、っていうことは、自分の音も聞こえてるんじゃないかっていうことで。そういう方たちは、探していく内に、うちにたどり着いていただいて、借りていただいていると思います。

音漏れが気にならない「防音マンション」が人気の画像はこちら >>

<楽器演奏可能な防音賃貸マンション「MUSISION(ミュージション)」ホームページより>

「ミュージション」という防音の賃貸住宅が人気だそうです。
現在、東京、神奈川、埼玉、千葉に、32棟、734戸の物件がありますが、入居待ちが4000組!住みたい人が、あふれている状態。
テレワークなど自宅で過ごす時間が長くなった中で、騒音トラブルがたびたび問題になっていますが、こちらの物件では、ピアノやギター、トランペットやサックスなど、24時間演奏し放題。
ただ、家賃はすこし割高で、例えば「8万円」が相場の賃貸物件は、ミュージションだと「10万円」程。相場より3割くらい高いようですが、それでも入居を希望している人は増え続けているようです。

「自分の出す音」が気にならない

では、実際の住み心地はどうなのか?埼玉県のミュージションに住んでいる方に、話を聞きました。普段はボイストレーニングの講師をしている、細見 豊さんのお話です。

細見 豊さん

3年目ですね。
物件選ぶときって、ご近所さんの「聞こえる音」を気にすると思うんですけども、「自分が出す音」を気にしなくていいんだ、ってときのストレスのなさ、ここが一番ですかね。
僕は歌とギターをやってるんですけども、普通は休みの日だったりに時間作って、近くのスタジオですとか、カラオケですとか、場合によっては土手だとか、持っていくわけですよね、機材だったり。
言ったら「スタジオに住めるような形」なので、その場で歌い始められる。周りが気にならないし、自分も気にせずに没頭できる。
でもみんなひっそり暮らしてるので、ご近所付き合いしづらいんですよね。突然人に会うとすごくびっくりするんですよ。みんな音を出さない感じで生きてるので、あまり挨拶が「あ…どうも…」みたいな感じで。みんな静かに暮らしたいんだな~というのは感じますね。

細見さんが住んでいるお部屋の間取りは、「1K」(キッチンと居室が分かれているタイプ)。
まず玄関を入って、左手にキッチン、右手にお風呂。

正面の扉をあけるとリビングになっていて、そこが防音室になっています。
もちろん、住まいなので、防音の部屋には、クローゼットやベッド、机などもありますが、壁やドア、窓などが、特殊な材質でできていて、本当にシーンとしているそうです。
細見さんのように、歌やギター、動画を爆音で流したり、ほかにも、自宅で大音量で映画鑑賞したり、大音量でゲームする、という使い方をしている人も多いそうですが、「人の音」よりも「自分の音」が気になる、という人たちに、ウケているようです。

「二重窓」で図書館並の静けさを作れる

ただ、ミュージションは、なんと4000組待ち。待っていられない人も多いはず。では、いま住んでいる部屋をリフォームして、防音対策することはできないのか?窓などの修理や交換をする会社「ガラパゴス!」の代表、高木 実さんに伺いました。

株式会社パトライト・開発本部 梅本 孝哉さん

「窓まわりの防音対策」というのがガーンと増えたんですよね。
今の窓に対して、もう一つ窓をつけてしまうという「二重窓」と呼ばれる製品ですね。
今の窓は何も触らずに、手をつけずに、部屋の内側に木枠があると思うんですけど、その木枠部分に、もう一つ新しく窓をつけてしまうんですよね。
大きな窓がひとつドンと付いてるようなリビングとかだったら、そこを二重窓にするだけでも、もう明らかに静かになってます。図書館にいる静けさと言われます、かなり変わってきます。
ピークのときで、2週間から1ヶ月、訪問にお待ちいただいてるという状況が続いていたこともあって、ずっとパンパンの状態で。


テレワークが増えて、コロナ前から1.5倍~2倍ぐらいの、さらに増え続けてるような状況です。

築10年~30年の物件の、窓周りのリフォームが、かつてないほど増えているそうですが、二重窓は断熱効果もあるので、省エネ需要の高まりを背景に施工が増えていたり(現在、国も省エネ支援事業を実施中)、テレワークなど働き方の変化で防音を気にする人が増加。窓のリフォームに注文が殺到しているようです。静けさを求めたい、というニーズの高まりは、トラブルを未然に防ぐ防衛にもなっているのかもしれません。

編集部おすすめ