TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』毎週月曜日~金曜日 朝6時30分から放送中!
1月11日(木)放送後記
きょうは、「特殊詐欺を、どう防ぐか」というお話。
高齢者に嘘の電話をかけるなどしてお金をだまし取る、特殊詐欺。
特殊詐欺を防いだ人に「ご褒美」
そんな中、埼玉県警が新たな取り組みを始めました。埼玉県警察本部・生活安全部の、倉持 高成さんのお話。
埼玉県警察本部・生活安全部・生活安全総務課・特殊詐欺対策補佐 倉持 高成さん
特殊詐欺被害を未然に防止して、管轄の警察署長から感謝状を受領する「一般の方」に対して、県内の協賛事業者の店舗などで、その入場料や施設使用料が無償化になったり、割引されたりといった特典を提供するというようなものでございます。
例えば「金融機関の窓口でお金を下ろしたいんだけど…」って来た方に、「どういった理由で下ろすんですか?それは詐欺ですよ」って被害を防止してくれる場合ですとか、コンビニの店員さんが、ATMの操作を辞めさせて、詐欺を防止できたという事例があるんですけども、全く一般の方、通行人であるとか、店にたまたま居合わせたお客さんであるとか、一般の方が止めてくれる水際防止というのを増やしたいっていうのが、最初のきっかけですね。
昨年11月末から始まった取り組みで、埼玉県警によると、全国初ということです。
例えば、銀行やコンビニのATMで、電話をしながら操作をしている高齢者は、要注意。電話口の犯人に指示されて、現金を引き落としたり、送金しようとしている場合が多いようですが、そうした状況に出くわしたら声をかけて、被害を未然に防ぐことができ場合、県警から証明書が発行されます。
そして、その証明書を持参すると、様々な施設で割引が受けられます。
例えば、カラオケ「ビッグエコー」のフリータイムの利用料が、無料(一般950円)。「東武動物公園」の入園料が、無料(大人1900円)など、適用されるのは県内191の施設。
ただし、金融機関の職員や、コンビニの店員などは対象外。
5件目のコンビニでようやく納得
県民総出で目を光らせよう!という趣旨ですが、でも、正直、声をかけるのは尻込みしてしまいます。そこで、過去に何度か被害を未然に防いだコンビニの方に、どのように説得したのか、話を聞いてみました。
愛知県の「ローソン東浦鰻池(ひがしうらうなぎいけ)店」の店長、新美 由美子さんのお話。
「ローソン東浦鰻池(ひがしうら うなぎいけ)店」店長 新美 由美子さん
やっぱり焦ってましたね、お金がおろせなかったんですよね。
「これ、1日の限度額超えてませんか?」って言ったら、「今日は70万円も下ろした」って言われたので。「70万ですか!?」って言ったら、「もうここに来る前に他のコンビニ4店でお金を振り込んだ」って言われたので、これは詐欺だなと思ったんですよね。
そしたら犯人と携帯電話が繋がってる状態で、やり取りを私としてたので、「いや、もう電話を切ってください」と言って、警察に連絡をした。
ちょっと私も、4件も他のコンビニで、どうして防げなかったかなと思って聞いたら、「大丈夫?」っていう風に言われたとは言ってたんですけど、まだあと40万振り込まないとパソコンが修理できないって言われたから、ここで40万円振り込みに来たって言われたので。「いやもうそれは本当おかしいですよ」っていうのを、とにかく何度も言ったので。
「大丈夫?大丈夫?詐欺だよ」って言われてもそれが何なのかがわからないっていうのが本当にこっちは不思議で。わからない、わからないんですよね…。
夜10時過ぎで、そもそも高額のお金を引き出すには不自然な時間ですが、10分説得し続けたそうです。
このケースですが、70代ぐらいの男性が、パソコンのトラブル解決を名目に詐欺師から指示され、コンビニで、電子マネーを買うよう迫られた事例。
実際、買おうとしていたのは、「グーグルプレイカード」。
アップルギフトカード

アップルギフトカード(裏面)。ここに記載されている番号を電話で読み上げさせて、電子マネーを盗み取ります
他にも「アップルギフトカード」や、「アマゾンギフトカード」など、多くの企業が導入しているプリペイドカード式の電子マネーで、このカードを購入させた上で、裏面の「番号」を電話で読み上げさせて、電子マネーをだまし取るという手口が全国的に急増しているそうです。
ATMの引出し上限額を制限。変更には家族の承認が必要
ただ、この男性は、5件目のコンビニで説得されるまで、4件のコンビニで合計70万円だまし取られてしまいました。
そこで、ATMの上限金額を低く設定することで、なんとか水際で被害を防ごうという取り組みも広がっています。関西みらい銀行の、成長戦略室担当、児玉 康さんに伺いました。
関西みらいフィナンシャルグループ・成長戦略室担当・執行役員 児玉 康さん
ATMをご利用いただく際に、1日当たりの振り込みや、現金払い出しの上限金額を、お客様自身に設定してもらう。
上限金額は0円、5万円、10万円、20万円の4タイプから選んでいただくことができます。
ですから1回振り込みで、例えば100万とか、200万円の誘導されてもですね、5万円とか10万円の設定をしていると、その日、振り込みできませんので、そこで詐欺の被害に気づく。
窓口だと会話ができるんですけど、ATMはご自身で操作をされるので、正しい振り込みなのか、詐欺が振り込みなのかっていうことを、お声かけすることができない。
ですからこれはもうご家族、特にお子さんが「念のため設定しておいたら」って、背中を押していただけると非常にありがたい商品だなって思ってます。
「おやとこ安心サービス」という名称で、生活口座に上限をかける取り組みで、関西みらい銀行が昨年末から始めました。
限度額の設定は、他の銀行でもできますが、オプションで、その金額を変更する際に家族に連絡がいって、承認がないと変えることができないというのが珍しいそうです。
騙されてしまう前提で、「そもそも引き落とせないようにしておく」というアイデアですが、普段から家族と話し合っておくなども大切ということです。