新型コロナウイルスの位置づけが「5類」に移行してから、1年が経ちましたが、先日コロナに関連した「ある備品」が、フリマサイトのメルカリに出品されているのを発見しました。

ワクチン冷凍庫、メルカリに出品。
誰か買って!

商品の出品者は、大阪府の松原市役所。担当の桝井 陽子さんに伺いました。

大阪府・松原市役所 桝井 陽子さん

ワクチンの「特定臨時接種」が、令和6年3月31日で終了したことによりまして、ワクチンを保管していた「冷凍庫」=ディープフリーザーについて、使用用途が終了になったので、松原市ではすぐに廃棄ということではなくて、メルカリで出品する形になりました。

当初10万円で出させていただいたんですけども、なかなか買い手がないということで、そこから10日後に5万円に落としました。まだちょっと、現在1台も売却には至ってないです。

設定温度がマイナス20℃とか、マイナス70℃であるとか、なかなか家庭用で使うっていうのは目的が違うのかなと。

ワクチン冷凍庫。第二の人生は…?の画像はこちら >>
<松原市役所がメルカリで出品している、超低温冷凍庫。もともとはワクチンを冷やすために使われていました(5月16日(木)の午前の時点で、まだ在庫はありました)※全国誰でも購入可能だが、市役所まで取りに来られる方限定とのこと>

いま、全国で役割を終えた「冷凍庫」が大量に余っている状況のようです。

ワクチンはメーカーごとに保管温度が決まっていて、ファイザー製は「-75℃」。モデルナ製は「-20℃」でしたが、この温度を保つためには、超低温の特殊な冷凍庫が必要になります。

当時、国はおよそ90億円分の冷凍庫を、およそ2万台、緊急で確保。各自治体に譲渡していました。

ただし、全額公費負担で接種が受けられた「特例臨時接種」の枠組みが、今年3月末で終了(接種は自己負担)。それと同時に、保管用の冷凍庫の役割も終了。いずれも耐用年数は6~10年ということで、まだ使える空の冷凍庫が全国に散らばっているんです。

では、これをどうしていくか。譲渡か、売却か、廃棄かというのは、「各自治体の条例に基づいて、お任せします」という趣旨の通知が、国から出ているんですが、松原市では「売却」を選択。

でも、ぜんぶで7台を、試しにメルカリに出品してみたところ、なかなか売れない…。

定価50万円ぐらいのものですが、このままだと廃棄の可能性もあると、困っていました。

シロサイのフンを冷やしています

一方で、松原市のように行き先に困っている冷凍庫もあれば、第二の人生を順調に送っている冷凍庫もあります。

福岡市動物園の川島 佑介さんのお話。

福岡市動物園・広報 川島 佑介さん

不要になった冷凍庫を10台、福岡市動物園の方で受け入れさせていただいてます。

マイナス20℃対応と、マイナス75℃対応がある。

我々も動物の健康管理していく必要がありますので、今使ってるのはサイ。サイが2頭いるんですけども、サイの健康管理として、サイのフンを冷凍庫に保管して、その後データを取ったりして、健康管理に役立てています。

「ミナミシロサイ」っていうんですけど絶滅危惧種でもあるので、繁殖。子どもが生まれるように取り組んでまして、その一環で、フンに含まれる性ホルモンのデータとかを取ってですね、今はどういう時期にあるのかとか、そういったものを確認してます。

巡り巡ってくるとは思ってなかったですね。

10台も動物園で使われているそうですが、無償で譲渡されたそうで、お金はかかってません。

じつは、福岡市動物園は、福岡市役所が運営している動物園。同じ市役所内で融通し合った形で、ワクチン担当の部署から「誰か使いませんか?」と呼びかけがあって、動物園が手を挙げたようです。

そしていまは、サイのフンが眠っています。

園は10台も譲り受けたので、これから夏にかけては、エサの果物や氷の保管場所として。広い園内で、獣舎ごとに設置したら、スタッフの負担も減ると、喜んでいました。

科学実験に使っています

さらに、もう一つ。こんどは仙台で使われている冷凍庫について。

仙台高等専門学校の准教授、熊谷 進さんのお話。

仙台高等専門学校・准教授 熊谷 進さん

金属材料の試験片の破片を、いま実際、冷やしてる状態。

3台もあるので、しかも思ってるより容積があって、大きいんですよ。

学生にも「面白いもの来たから、使ってみない?」って言ったら、今実験に使っていいですかっていう話が来てて。さっき見に行ったら、色んな野菜が入ってて。野菜や果物が入ってて、冷やして様子見てるとか、いろんなことやってる。

マイナス80℃って結構珍しいんですよそもそも。60℃と80℃って結構いろいろな実験やる上でも、雲泥の差というか、マイナス80℃まで冷やせる冷凍庫があるんだったら、こんな実験をやれるかなみたいな妄想はしてたっていうところは結構あったんですけど。

多分、我々の分野っていうか、ソレ欲しい人いっぱいいますよ、みたいな。

「いつか欲しいと思っていた」ということで、こちらも自治体から無償で譲り受け、科学の実験で活用していました。

このように、必ずしも需要がないわけではないですが、医療機関や大学などに無償で譲渡されると引き合いが多いようですが、有償だと、なかなか買い手がつかない。

税金で購入された大事な備品なので、ぜひ、有効利用して欲しいと思います。