東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも多摩を愛していただきたい!という番組「立飛グループpresents東京042~多摩もりあげ宣言~」(略して「たまもり」)。MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。

今週のゲストは、指揮者でオーボエ奏者の茂木大輔さん(小金井出身)。岡本知高さんゲスト回を聴いて、同じ「国立音楽大学」出身者で「小金井出身」、「小金井でコンサート」開催しているということで「たまもり」に直接メールを送っていただいたご縁で今回の出演に。今週は「オーボエという楽器の魅力」「指揮者の魅力」を伺いました。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場!

土屋:さっそくゲストのご紹介です。指揮者の、茂木大輔さんです! よろしくお願いします!

茂木さん:お願いします。

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土屋:茂木さんは「たまもり」に直接メッセージを送っていただきまして、これは番組に出ていただこうと。申し訳ないんですけどクラシックのことが何もわかってないんですけど、茂木さんの経歴を辿るほど、これは大変な方だと。

茂木さん:いえいえ、そんなことはないですよ。

土屋:つる子さん、改めて茂木さんのプロフィールのご紹介をお願いします!

つる子:はい。茂木大輔さんは1959年生まれ。「国立音楽大学」でオーボエを専攻。卒業後、ミュンヘン国立音楽大学大学院に編入。

バンベルク交響楽団やバイエルン放送交響楽団などで客演。主席オーボエ奏者として世界各地で演奏活動をされています。シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団の第1オーボエ奏者を経て、1990年から30年に渡りNHK交響楽団の首席オーボエ奏者を務めます。N響を退職後、専業の指揮者として本格的に活動中。それと並行して、漫画「のだめカンタービレ」に取材協力し、「のだめ」の実写ドラマ、アニメ、映画ではクラシック監修や演奏、演技指導などを担当。現在は自らが企画、指揮する音楽会を展開されています。

土屋:この番組としては「国立音楽大学」出身というだけでようこそ!という感じなんですけど、ご出身はどちらですか?

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:「小金井市」ですね。生まれたのは大田区なんですけど、小さい頃から「小金井市」で。

つる子:そうなんですね。

土屋:番組宛にメッセージを送っていただいたわけなんですけど、この番組を聴いてくださっていたわけですか?

茂木さん:そういうことです。この前の「岡本知高さん」が出られた時にたまたまクルマでね。なんてことだ!と思って。

そんな多摩に特化しているラジオとは!と思ってね(笑)。

つる子:そうなんですよ~(笑)。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:けっこう私がやっている「こがねいガラ・コンサート」と非常に近い関連があると思いましてご連絡して。で、あわよくば出演しよう、と(笑)。

つる子:うれしいです!

土屋:多摩地域を盛り上げたいとやっている番組ですから、ぴったりですよ!

「オーボエ」は誤解される・・・

土屋:我々がクラシックに疎くて・・・

茂木さん:僕もなんですけどね。

つる子:(笑)。

土屋:クラシックジョークですね(笑)。茂木さんはオーボエ奏者ということなんですが、オーボエのフォルムはなんとなくわかります。大き目の笛で口に入れる所が細長いなという。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:そうですね。

土屋:低めの音が鳴りそうなんですが・・・

茂木さん:・・・という誤解が本当によくありまして(笑)。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

つる子:礼央さん、誤解でした~(笑)。

茂木さん:オーボエというのは大きくなくて、本当に小さいです。

フルートと同じくらいの長さ。

つる子:えっ!?

土屋:大きいと思ってた。

茂木さん:オー(大)がつくからね。学校でよくオーケストラを聴いたりするじゃないですか。その時に楽器紹介があるんですよね、クラリネットやフルート、トランペットはみんな知っているじゃないですか。

つる子:はい。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:知らない楽器の筆頭がオーボエと、もう一つ、ファゴットという楽器があるんですよ。

土屋:ああ、名前は聞いたことがある。

茂木さん:ファゴットはオーボエのすぐ後に紹介されるんですけど、煙突みたいに本当にデカいの。

つる子:ああ、ファゴットの方だ!

茂木さん:その音が低いものですから、それと関連付けて名前もオーボエだからデカいのかなと思って覚えられちゃっているのかな。

土屋:大きさでいえば、“チューボエ”くらいですかね(笑)。

つる子:(笑)。

土屋:音もそんなに低くないってことですか?

茂木さん:低くないです。どっちかというと高いです。オーボエの“オー”はフランス語の“Ō”から来ているんですけど、これは高いという言葉ですから。

つる子:そうでしたか!

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

土屋:オーボエは指のところに金具が付いていて指をペコペコして鳴らすから、他の楽器よりも音が出やすい・・・? サックスはなかなか出ないという印象がありますけど、オーボエはどうですか?

茂木さん:どっちかというと反対ですね。サクソフォーンは19世紀に発明された楽器なんですよ。

土屋:新しい楽器なんだ!

茂木さん:研究されて新しく出てきた楽器なんですよ。オーボエやフルートは、古代ギリシャとか昔の古い絵にも登場して。オーボエは世界中にあるんですよ。日本だと“篳篥(しちりき)”がそうなんですよ。ラーメン屋さんのチャルメラもそう。

土屋:ああ、なるほど!

つる子:そうなんですよ!

茂木さん:けっこうあと、トルコの軍楽隊でもラッパをつけて使っていているんですね、そちらはけたたましいんですけどね。音の圧力がものすごく高いので、なかなか素人は音が出ないです。

あと、吹く所のリードがすごく小さいので。サックスの方が大きいので。最初に音を出すというのであればクラリネットやサックスの方が音は全然出やすいです。オーボエは最初が大変。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

つる子:難しいんですね。

茂木さん:ギネスブックに出ているんですよ、“世界でいちばん難しい楽器”として。

つる子:ええ!?

茂木さん:理由があって、“上手く吹ける人がほとんどいない”って。

土屋:ああ、そうなんだ。そんなオーボエを自ら買って練習したわけですよね、最初どうだったんですか?

茂木さん:最初から先生に付いてレッスンに行きましたけど、やっぱりこんなに難しいものなんだって。散々おどかされますけどね。正直、クラリネットと似ているのでクラリネットを1年やってから覚えに行きましたから。その意味では基礎があるといえばある。

口の違いがわかってくればだんだんといけるかなと。

土屋:僕の勝手なイメージで、オーボエのフォルムは口の部分が細いから音量もそんなに出ていないみたいな・・・?

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:オーボエで一番難しいのは小さい音を出すことですね。それが出来る人が本当に上手な人ですね。

つる子:へえ。

土屋:意識して見てみよう。

茂木さん:本当に良い楽器ですよ。「のだめカンタービレ」でオーボエがけっこう活躍するので、それでオーボエをやろうという人が増えたというのはありますね。

つる子:「のだめ」の影響は大きいですよね。

スターのオーボエ奏者の音は「口に入れて食べたくなる!」

土屋:そんな茂木さん、「国立音楽大学」卒業後に、ドイツに渡るわけですよね。音楽の本場だから行ったという理由ですか?

茂木さん:僕は日本でとても良い先生に習えていたんですね。「国立音楽大学」を卒業してすぐの夏に、草津で音楽講習会があるんですね。そこに、その頃の日本ではなかなか聴けないスターのオーボエの先生がいて。草津の音楽祭がその方を呼んで聴けるというので先輩達と行ったんですよ。

つる子:はい。

茂木さん:そしたらショックを受けまして。“こんな音が出るんだ!”“美しいという言葉では足りない!”と。その時に覚えた感情を今でもまざまざと覚えていて、音が“おいしい”んですよ。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

つる子:おお!

茂木さん:空中に飛んでいる音を口に入れて食べたくなっちゃう。

つる子:素敵な表現!

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:最初にステージに出てきて音出しをするんですけど、“えっ!?”“音がおいしい!”って。それで先生のところに行って、教えてくださいって。急遽、台風が来て東京に帰れなくなって予定が変わって。そしたら先生が留学しに来いって言ってくださって。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

つる子:はい。

茂木さん:実はもうプロのオーケストラにはいたんですけど、休んで来いって言われたんでミュンヘンに行ったんですよ。

「指揮者は作曲家の代理人」

土屋:それでドイツの楽団で首席で吹かれてNHK交響楽団に入ってオーボエ奏者として活躍されるんですけど、指揮者にはどういうタイミングでなられたのですか?

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:指揮者はずっとやりたかったんですよ。どうやったらなれるのか本当にわからなくて。高校時代も吹奏楽部で指揮をしてましたし、音大時代も見よう見まねでやっていたんですよ。ちゃんとやるにはどうしたらいいのかというのを、幸か不幸か身の回りにいなくて。

つる子:はい。

茂木さん:N響に入ってからしばらくして「オーケストラ楽器別人間学」という本を書いたことがあって、皆さんによく読んでもらった本があるんですよ。楽器によって性質が違うのはなぜなのか、と。トロンボーンは酒飲みとか、フルート吹きはちょっと上品とか。

土屋:オーボエ吹きはどうなんですか?

茂木さん:いつもピリピリして、失敗するんじゃないかって。空調の温度が1度下がっただけでソロが吹けなくなっちゃう、結露して水が溜まっちゃって。ものすごい敏感なんですよ。僕が定年退職してステージマネージャーはすごく喜んでいると思う、空調温度の文句を言わなくなったから(笑)。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

土屋&つる子:(笑)。

茂木さん:そういう本を書いたことがあって。それをコンサートの企画にしまして。「三鷹市芸術文化センター」にこういう企画をやらないかと。そしたらやりましょうと言ってくれて。N響のメンバーなどを集めて、ゲストにトランペットやクラリネットの人を呼んで。一晩、1時間半で2つだけの楽器を紹介をして。

土屋:いいですね!

茂木さん:それがウケて3年間で18くらいの楽器を紹介しましたね。その時にさりげなく、昔からやりたかったから企画書に『指揮者:茂木大輔』と書いていたんです。別に誰も反対しないから(笑)。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

つる子:(笑)。

茂木さん:さすがにどこで勉強したのかとか聞かないじゃないですか。

つる子:じゃあ、勝手にというか。

茂木さん:そう、(あれ、本当にやっていいんだ!?)ってなって(笑)。今でも覚えているんですけど、<お時間なのでリハーサル初日、お願いします>って言われて、楽屋から出てステージでみんなが音出しをしていて。(うわ、こんなに人がいるのか!?)って、本当に怖かったのを覚えていますね。

土屋:指揮者って全部を把握していなきゃいけないのでは?

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:その頃は全然できちゃいなくて。レコードを聴いて、“ここが3拍子だから三角に振りましょう”とかそういうことなんだけど。もちろん、プロのオケマンだからある程度はわかるわけじゃないですか。でもまあ指揮しているとはとても言えないものではあったんですけどね。でも、病みつきになるんですよ!

土屋:オーボエの楽器と指揮の魅力は全然違った?

茂木さん:全然違いましたよね。

土屋:僕は、昔から指揮者のやりがいにすごく興味があって。どういうところですか?

茂木さん:指揮者100人いたら100人違うことを言うし、毎日違うことを感じていると思うんですけど、ものすごくカッコつけて言うと、“作曲家の代理人”なんですよね。

つる子:はあ~!

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:ヴェートーヴェンの代理でオーケストラの前に行って、“先生がこうおっしゃっていますので、みんなこうやりましょうよ”“こういう設計図が来ているから、これで良い家を建てましょう”というのが指揮者なんですよ。ということはヴェートーヴェンの部屋に行って語ってこなければいけないという。彼がどんな人なのか、変な話かもしれないけど、彼の体臭や口臭、お昼に何を食べたのかな、とかそこまで側に寄っていけるというのかな。

土屋:それだけ指揮者って大事なんですね。

茂木大輔さん企画のコンサート「こがねいガラ」(@小金井 宮地楽器ホール)

土屋:そんな多摩地域の「小金井市」で育った茂木さんが行う演奏、これは多摩の匂いがしてくるわけですね!

茂木さん:(笑)。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

土屋:「こがねいガラ」というコンサートなんですが、これはどんなコンサートなんですか?

茂木さん:「こがねいガラ」はもう10年以上やっているんですけども、「小金井市」に市民交流センターというものがあって「宮地楽器ホール」というネーミングライツで駅前に非常に立派なホールが出来たんですよ。出来るにあたって、住んでる人4、5人でアンサンブルみたいなものが出来ませんかという話がありまして。聞いてみたらけっこうなご予算をいただいていたので、これだったらオーケストラができますよ、と。

つる子:はい。

茂木さん:で、調べてみると、意外と住んでいるんですよね。

土屋:多摩地域の中に?

茂木さん:いえ、「小金井市」の中でも何十人とプロの音楽家が住んでいて。小さいオーケストラを作ってコンサートをやったらけっこう人気で。やる方も嬉しいわけですよ。打ち上げに行ってもタクシーで帰らなくてもいいし(笑)。

つる子:(笑)。

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茂木さん:仕事場まで歩いていけるし。また「宮地楽器ホール」というのが素晴らしいホールなんですよ。みんな惚れ込んじゃって。オペラ歌手を呼んだら、<ここでCDを作る!>って。響きが素晴らしいし、雰囲気も良くて、駅から雨が降っても濡れずに行けるほど近いんですよ。

土屋:僕は昔、合唱コンクールをそこでやって。

茂木さん:そうそう、僕もそうです。公会堂ね。あの代わりにできたんですよ。それを続けていただいて今に至るというのが「こがねいガラ コンサート」で。オーケストラの半分以上が「小金井市」になんならかの縁を持つ人であり。

土屋:そんな「こがねいガラ・コンサート2025」は10月19日、会場は「小金井 宮地楽器ホール」です。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

茂木さん:この放送がされる頃にはチケットは完売に近いと思うんですけど、もし来てくださる方がいらっしゃったらお急ぎいただければ。

つる子:はい。

茂木さん:で、この企画に5年ほど前からインターン制度を作っていただいたんですよ。オーケストラの演奏者を目指す若者のための教育制度です。オーディションはあるんですけど、完全に無料でして。我々プロのオーケストラメンバーと一緒に演奏し、普通のリハーサルよりも前の“レッスンリハーサル”みたいなのがあって。

土屋:うわ、贅沢!

茂木さん:バイオリンなんか6、7人並んで弾いて、1人だけプロと弾き方が違うじゃないですか。そういうのをやったりして。今日もオーボエのインターンの子が来ているんですよ。卒業してオーケストラに戻ってきて仕事をしたり、プロの世界に少しずつ紹介していったり、なんとかして彼らをプロとして育てていこうという制度なんですよ。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

つる子:はい。

茂木さん:これの締切がすぐ目の前で、8月の10日までに申し込みしていただけないと。今年はヴァイオリン、チェロ、オーボエとやります。オーボエだったら個人レッスンは僕が担当しますので。無料ですからね。

つる子:すごいです!

土屋:そして、9月15日には第一生命ホールで東京音楽史管弦楽団第3回演奏会『パガニーニ 情・妙・技・巧』があります。

茂木さん:パガニーニという“ヴァイオリンの悪魔”と呼ばれた人がいて。19世紀の作曲家で、日本では今一つあまり演奏されない作曲家を1人ずつ選んで深掘りするコンサートです。髙木凜々子さんという実力と人気がトップクラスの子がいて、パガニーニに挑戦したいというので一緒にやることになって。あとはBudoさんというYouTuber系のすごく人気あるピアニストや、高島健一郎さんもテノールという贅沢極まりないメンバーで。チケットは安くないですけど、よろしければぜひ。

土屋:お時間あっという間でございます。まだ「国立音楽大学」のお話も聞けていないし、つる子さんが「のだめカンタービレ」のドラマをずっと見ていたというので、そして「小金井市」についても来週は伺いたいと思います。ということで、今週のゲストは指揮者の茂木大輔さんでした! ありがとうございました。

茂木さん:ありがとうございました。

「オーボエは美味しい」「指揮者は作曲家の代理人」茂木大輔さん(小金井市出身)登場

(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)

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