4つの社を持つ「諏訪大社」とは
諏訪大社はひとつではなく、諏訪湖周辺の4カ所に分かれているのをご存じでしょうか。諏訪湖南岸の諏訪市内にある上社本宮、茅野市内にある上社前宮、そして諏訪湖北岸の下諏訪町内にある下社春宮と下社秋宮、それら4つを総称して諏訪大社と呼びます。
日本最古の神社のひとつともいわれる諏訪大社にどれほど古い樹木があるのか、4カ所を訪ねたことがあります。そのなかでも、もっとも地味でひと気の少ない上社前宮が逆にとても印象的でした。交通量の激しい県道沿いに入口となる鳥居と駐車場があるのですが、立ち寄る人はそれほど多くはない様子です。ここから北に2キロほどのところにある上社本宮は参拝客でにぎわっているんですが・・・。
地味でひと気が少ないというのは、立派な建物が少ないだけで、周囲は鬱蒼とした木立ちに囲まれ、厳かな雰囲気が漂います。実は諏訪信仰の始まりは、この場所だったともいわれているんです。
境内に足を運ぶと、ご神木のようにすぐに大きな2本のケヤキの木が目に入ります。ですが、それほどの古い木ではなさそうです。
境内に前宮史跡案内図という大きなマップが掲げられています。
本殿に向かう坂道の途中にも、立派なケヤキの木がありました。古い木ですが、樹齢は200年から300年ほどだそうです。江戸時代のケヤキですね。
さらに坂道を登っていきます。周囲には何軒か民家が並んでいますが、もともとは山から続く広大な境内であり、統治者の住居だったらしいのです。
静かな森のたたずまい「諏訪大社」上社前宮
ようやく本殿前にたどり着きました。現在では本殿と呼ばれていますが、古くは神殿に付属した摂社の前宮社だったといい、明治になってから上社前宮と呼ばれるようになったそうです。御祭神となった統治者が最初に住宅を構えた場所だとも伝えられているそうで、現在の社殿は昭和7年(1932年)に伊勢神宮の御用材を用いて建てられました。
本殿の傍らを清流が流れています。「水眼(すいが)の清流」と呼ばれ、古くから神事に使われてきた水です。緩やかな台地で、水が豊富で、土地も豊かで、西側に山を背負い風もしのげる、住みやすい場所だったと想像できます。
その清流の横に、みごとな御柱(おんばしら)が建てられていました。これまでに御柱祭で使われたものですね。こちらは二の柱(上の写真)。本殿に向かって左側になります。
二の柱の奥には、三の柱もあります。ほかの3社は仕切りがあり、立ち入ることはできません。しかし、ここは周囲をぐるっと回ることができるようです。歩いてみましょう。
本殿の四方を取り囲むようにして、4本の御柱が建っている構図。これは4つの神社に共通です。この御柱が何を意味するのか、実はよくわかっていないのだそうです。たとえば、大きな社殿を造営する代わりに4本の御柱だけを建て替えるという説や神域を示すという説、また神霊の依代であるとする説などなど、諸説あるといいます。
三の柱の近くには豊かな湧水の貯水池がありました。冷たくとても気持ちのいい水です。雨風をしのげる山かげに位置し、厳かな樹木と湧水。人が生きて暮らしてゆくためには、どれも必要なものです。古くからここが豊かな土地だった証かもしれません。
こちらは四の柱。本殿に向かって右奥になります。歴史的に御柱祭は、平安初期の桓武天皇(781~806)の時代に「寅・申の干支に当社造営あり」とあるのが最初に現れる記録で、起源はさらに遡るともいわれています。
歴史のある大祭ですね。ちなみに次回の御柱祭は2年後、令和4(2022)年寅年になるそうです。
今は静かに眠っている、古くて大きなケヤキ
この本殿は塀で囲まれていましたが、そのなかにひっそりと苔むしたケヤキの木が佇んでいました。大切に守られてきたご神木なのでしょうか。
この木を見た時に、これだ、と思いました。古くからきっと大切に守られてきたに違いありません。ですが、ほとんど人に知られることなく、長い長い間、ずっと境内の一角にたたずんできた1本の木。さまざまな歴史や暮らしを見守ってきた木でもあるのでしょう。
ひっそりと佇む巨木。例えていえば、かつては大きな仕事をした者が、老いてゆっくりと老後を過ごすような、そんな雰囲気なんです。誰もいない境内でノンビリと歩きながら、信州諏訪のひとびとの歴史や暮らしに思いを馳せました。
確証はありませんでしたが、風格のある大木がきっとある・・・諏訪大社ならきっと太古の森の息吹を感じさせるような、古くて大きな1本の木があるのではないかと思っていたのです。
本殿の足元には諏訪の街が広がります。
諏訪大社 上社前宮
住所:長野県茅野市宮川2030
電話:0266-72-1606
HP:http://suwataisha.or.jp/
[All Photos by Masato Abe]
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