この式典はチェチェン共和国の首都グロズヌイで開催されたもので、表向きは居住用と商業用の高層ビル・コンプレックス『グロズヌイ・シティ』の完成を祝うためだったが、実際はカディロフ首長の35歳の誕生日を祝うためのコンサートであったという。カディロフ氏は07年にロシアのプーチン大統領から首長に任命されて以降、チェチェン独立派武装勢力を残虐な手口で制圧。自ら電気ショックで拷問を行うなどして反対勢力を抹殺し続けて来たが、行状は全て「政治ライバルによるでっちあげ」だと否定してきた。
ヒラリーの代理人によると、彼女が式典に出席を決めたのは、先方から招待を受けたことに加え「同ビル建設プロジェクトが、ロシアからの独立を巡って繰り広げられて来た紛争の結果破壊されたチェチェンを再建し、人々に希望を与えるものであると説明を受けたため。」だという。招待状には、首長の誕生日については言及されていなかった。
しかしもちろんカディロフ政権側は、米オスカー女優を式典に招くことで、自らの権力を誇示したかったようだ。
ヒラリーは、人権団体などが訴えかけているカディロフ首長の残虐な行状については「知らなかった」としている。
13日、ヒラリーはAP通信に対して声明文を出し、式典出席を「深く後悔している」と発表した。彼女は「もしこのイベントの意図することが完全に分かっていたら、決して出席はしなかったでしょう。」とコメントし、「今後は皆さんに疑念を抱かせるような行動はとらず、人権擁護のために力を尽くしていきたい」とした。
彼女の代理人もまた、「カディロフ首長が恐ろしい人権侵害に関わっていることを知っていて、首長から報酬を受け取るのは不適切。彼女にお金を返却するよう促す。」と発表。14日ヒラリーは、受け取った報酬をいくつかの慈善団体に分けて寄付をすると発表した。
イベントにはヒラリーの他にも、世界中から著名人が招待されていた。俳優ケヴィン・コスナーや女優のエヴァ・メンデス、歌手のシャキーラらは、招待を断った。しかし俳優のジャン・クロード・ヴァン・ダムや、英バイオリニストのヴァネッサ・メイさん、英歌手のシールなどはヒラリー同様、高額の報酬を受け取って式典に出席していた。ヒラリーは「オスカー女優としてのキャリアを汚す自殺行為」を取ったと、芸能メディアや人権団体から叩かれていた。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)