ルブレフの練習拠点、スペインのテニスアカデミー
「4スラム・テニス・アカデミー」を紹介!


アンドレイ・ルブレフ(世界ランキング8位)やカレン・カチャノフ(同30位)が本拠地とする「4スラム・テニス・アカデミー」。スペイン・バルセロナの中心地から近く、歩いてビーチにも行ける素晴らしい立地にある。
筆者が訪れた際は、偶然ルブレフとドミニク・ティエム(オーストリア/同228位)が練習をしていた。ムラトグルー・テニスアカデミーやラファ・ナダル・アカデミーと比較すると日本での認知度は高くないが、多くのプロを輩出し、素晴らしいトレーニングを行っている。今回は12歳のジュニアが「4スラム・テニスアカデミー」のサマーキャンプに3日間参加した際の様子やアカデミーの施設、トレーニングやアカデミーが大切にする哲学について紹介する。

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元男子トップ選手3人が設立したアカデミー

「4スラム・テニス・アカデミー」は、シングルスまたはダブルスの男子世界ランキングトップ50以内に入ったことがある選手3人が集まって創設したアカデミー。それぞれの選手が実際にプロトーナメントで必要だと感じたことを持ち合わせ、独自に作り出した方法論でアカデミー運営を行っている。テニスのスキル、フィジカル、メンタルスキルの3つの要素を分析し、それぞれの選手に合ったトレーニングを組み立てていくのが特徴だ。

各選手に合ったトレーニングを非常に重視しており、テニスだけでなく、よりよい人間になるよう手助けをするという哲学を持っている。

所属するプロ選手はルブレフやカチャノフの他に、次世代の有力選手として数えられているスウェーデンのミカエル・イマー(同77位)もその一人だ。

充実したアカデミー内の施設

ルブレフの練習拠点! スペインのテニスアカデミー「4スラム・テニス・アカデミー」の練習内容や施設などを紹介

アカデミー内でルブレフと練習するティエム

テニスコートはクレー5面とハード4面、ミニテニスコート2面、パドルコート2面を保有。最新の設備を擁したジムやスイミングプール、宿泊施設もある清潔感があるアカデミーだ。他のアカデミーと比較しても老朽化している感じはなかったが、間もなくシャワールームを改装すると話していたため施設のメンテナンスにはかなり気を配っているようだ。

ルブレフはシャワールームも食堂もすべて他の選手と同じように利用していた。
他の選手もそれが当たり前といった様子で、各自のやるべきことに取り組んでいたのが印象的だった。

施設内にはストリンガーが常駐しており、必要な時にいつでも張り替えてくれる。このストリンガーはさまざまなアカデミーやトーナメントで仕事をしてきた人で、かなりの情報通である。立ち話をするだけでも「最近はヨネックスのラケットが人気だが、スペインでは品薄」といった話を気軽にしてくれる、冗談好きな男性だった。

バルセロナの空港から車で約15分の立地

ルブレフの練習拠点! スペインのテニスアカデミー「4スラム・テニス・アカデミー」の練習内容や施設などを紹介

「4スラム・テニス・アカデミー」から最も近いビーチ

同アカデミーはバルセロナの空港から車で約15分のところにある。市内からも遠くはないのだが、歩いては行けないため、テニスに集中できる環境が整っていると言える。

ビーチへも徒歩約10分以内で行けるので、砂浜でのフットワーク強化や練習後のクールダウンに利用できそうだ。このビーチは夏に訪れてもそれほど混雑していなかったのでおすすめ。

少人数でのトレーニングが魅力!

同アカデミーの特徴は、何と言っても少人数でのトレーニングを行っていることだ。今回参加したサマーキャンプでは、1コートにコーチ1人と選手2人のみが使用。選手の数は多くてもトータルで40人程度だった。

夏の期間は、年間プログラムの選手が休暇や大会に出場していて不在であるケースも多く、アカデミーに滞在しているのは休暇を利用して短期で訪れている選手が多い。
この点はどのアカデミーでも同じだと言えるだろう。

気になるトレーニングの内容を紹介

サマーキャンプ中のトレーニングは、午前にテニス1.5時間とフィットネストレーニング1.5時間、午後はテニス1時間とフィットネストレーニング1時間というスケジュールだった。午前はコーチとのドリルが多く、午後は他の選手とマッチプレーを行うことが多かった。午前のドリルではストロークやボレーなどのスキルを磨く練習を行い、午後のマッチプレーは結果によって次に戦う相手が変わる。コーチがその内容を見極めて、次の日のドリルの内容を組んでいるようだった。

このアカデミーでは、各選手に担当コーチがつくものの、普段の練習はすべてのコーチをローテーションで経験するスタイルを採用している。そのため、日常の練習を通じてすべてのコーチと知り合う機会が得られる。

ルブレフの練習拠点! スペインのテニスアカデミー「4スラム・テニス・アカデミー」の練習内容や施設などを紹介


コーチからのフィードバックを得ることができる

たとえトレーニング期間が短い場合でも、コーチからのしっかりしたフィードバックを受け取ることができるのも魅力の一つだ。トレーニング終了後に事務を行っているアリヤさんからメールが送られてくる。もし来ない場合はこちらから問い合わせることで、コーチによるレポートをもらうことができる。

アカデミーに入学するためのトライアウトはない

同アカデミーでは、年間プログラムに参加するためのトライアウトを実施していない。理由としては、数日のトライアウトでは選手が持つ本来の力を確認することはできないから、だそうだ。
そのため、年間プログラムに入りたい場合は個別にマネジメントを行うアリヤさんに相談することになる。

現在所属しているジュニア選手の年齢は10歳以上で、アカデミー内に居住できるのは基本的に14歳以上だ。理由としては、アカデミーでの居住には基本的に選手の生活を管理する大人が常駐していないから。14歳以下でアカデミーに所属する場合は親が帯同するか、コーチに相談をしてコーチの自宅に宿泊することになる。

この“コーチ宅宿泊スタイル”は、スペインではかなり一般的だ。中規模程度のアカデミーであれば、多くの場合このスタイルでの受け入れを実施している。

レストランはとてもおいしい!

アカデミーにおいて長時間のトレーニングを行うのであれば、アカデミー内で用意されている食事は非常に重要となる。少なくとも毎日のランチ、多い場合は朝、昼、晩と同じレストランで食事をとることになるからだ。

その点、同アカデミーのレストランは非常にレベルが高いと言える。ランチで言えば、毎日3種類から選ぶことができ、フルーツやヨーグルトなども常に用意されている。ルブレフとの練習に訪れていたティエムも、帯同している弟と一緒に食堂で食事をしていた。

アカデミー内の学校について

アカデミー内に学校があるわけではなく、選手はオンラインスクーリングか提携する学校に通うことになる。
中学生以下の低年齢の選手が学生ビザを得るためには、スペインにある学校に週20時間以上在籍する必要がある。そのためオンラインスクーリングをしている場合は注意が必要だ。同アカデミーでは、提携している学校もあるため、直接学校の担当者に相談にのってもらうことができる。

ビザの取得については、アカデミーによってもサポート体制がさまざまなので、アカデミーに任せるのではなく自分でどのような選択肢があるのか確認しておくことが大切だ。

14歳から検討したいアカデミー

どのアカデミーもそうだが、14歳以上からアカデミー内に居住することが可能なため、14歳以上で検討するとちょうどいい。逆に言えば、それくらいの年齢までは体の大きさにも差があり、誰がどの程度ポテンシャルがあるプレーヤーなのかアカデミー側も見極めにくく、プロに直結する本格的なトレーニングを行うのはもう少し年齢を重ねてからになる場合が多い。日本から高額な費用をかけて家族の帯同付きで行くのであれば、その効果を十分見極めることが大切になるだろう。

多くのプロを育てている素晴らしいシステムを擁する「4スラム・テニス・アカデミー」は、アカデミー内に学校を擁していないことからも、大学進学を考えているジュニアよりもプロを目指すジュニアに合ったアカデミーだと言えそうだ。
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