浅草から東武日光・鬼怒川温泉駅まで運行している、東武鉄道のフラッグシップ観光特急「スペーシア X」。快適で上質感のある座席や充実したサービスが人気で、一部の座席は予約がなかなか取れないほど人気を集めています。
スペーシアXとは? スペーシアとの違いは?

1960年から30年の長きにわたり、東武鉄道を代表する特急列車として活躍した、1720系「デラックスロマンスカー」。その後継として1990年にデビューし、今なお現役で運行を続けているのが100系「スペーシア」です。6号車が個室専用車両となっているほか、ビュッフェやオーディオサービス(現在は廃止)などもあり、都内から日光方面への快適な移動手段として「東武特急=スペーシア」が連想されるほど親しまれてきました。
そして2023年7月15日、伝統的なスペーシアのイメージを維持・継承しつつ、時代の流れに合わせてさらに進化させたフラッグシップ特急として、「Connect & Updatable」をコンセプトとしたN100系「スペーシアX」がデビューしました。車両やインテリアは伝統と革新のデザインに、座席の快適性もアップデートし、上質な旅を楽しめる特急列車として人気を集めています。
ちなみに、東武鉄道が運行する日光・鬼怒川方面への特急列車は現在「スペーシア」「スペーシアX」に加え「リバティ」があります。個室利用などラグジュアリー感よりも、運行本数の多さや予約の取りやすさを重視するのであれば「リバティ」も便利です。
東武特急スペーシアX の3つの特徴と魅力
特徴1:伝統と革新の車両デザイン

特急スペーシアXは、先代・100系スペーシアを思わせる先頭車両の丸みを帯びた形状など従来のイメージを残しつつ、さらに進化させた車両デザインに。日光東照宮陽明門の「胡粉(ごふん)」を思わせる高貴な白のカラーリングと、沿線である栃木県鹿沼市の伝統的な木工技術「鹿沼細工」や江戸の「竹編み細工」をモチーフにした、幾何学的な形状の窓枠が特徴です。
特徴2:6タイプから選べる座席タイプ

コックピットスイート(6号車・1室)

「走るスイートルーム」をコンセプトとした、最上級のシートです。運転席の後ろが丸々個室になっている贅沢な仕様で、広さは私鉄特急最大の11平方メートル。最大7名まで利用できます。
・おすすめ:記念日や三世代での旅行など、特別な思い出を作りたいときに
・特別座席料金:18,000円/室
※乗車には別途、運賃とスタンダードシート特急料金が必要
コンパートメント(6号車・4室)

最大4名で利用できる個室タイプで、コの字型のソファや折りたたみ式のテーブルを備えています。青いじゅうたんを敷き、壁は江戸文化「四十八茶百鼠」にちなんだ茶色をベースにデザイン。周りを気にせずに落ち着いて過ごせる空間です。
・おすすめ:家族旅行や友人とのグループ旅行に
・特別座席料金:8,000円/室
※乗車には別途、運賃とスタンダードシート特急料金が必要
コックピットラウンジ(1号車・20席)

カフェを併設している車両で、現存する日本最古のリゾートホテルで東武日光駅が最寄り駅の「日光金谷ホテル」などをモチーフとした、上質感のある空間。1人掛け席と向かい合わせ2人席、4人席があり、気軽に飲食を楽しみたい人にぴったりの席です。
・おすすめ:カフェを楽しみながら、優雅な時間を過ごしたい友人同士やカップルに
・特別座席料金:1人用500円/2人用1,000円/4人用2,000円
※乗車には別途、運賃とスタンダードシート特急料金が必要
※4人用コックピットラウンジは2名から利用可
ボックスシート(5号車・5区画)

横幅約80センチの座席を向かい合わせで配置し、パーテーションでゆるやかに仕切った半個室。大人分の料金を支払えば、小さな子どもと一緒に座ることもできます。
・おすすめ:プライベート感を保ちたいカップルや親子での利用に
・特別座席料金:400円/室(定員2名)
※乗車には別途、運賃とスタンダードシート特急料金が必要
プレミアムシート(2号車・35席)

スタンダードシートが2列×2の横並び4列なのに対し、プレミアムシートは2列+1列の横並び3列。
・おすすめ:一人旅や出張など、快適な移動を重視する方に
・プレミアムシート特急料金:通常期840円~2,520円(乗車区間による)
※乗車には別途、運賃が必要
スタンダードシート(3・4・5号車・約130席)

スペーシアXで最多の席数(約130席)を占める座席。前方座席の背面にテーブルが設置されているほか、肘掛け脇にも鹿沼組子をイメージした六角形の小テーブルがあり、フレキシブルに利用できます。シート1列に対して1つの個窓が配置されていることも特徴。機能的でリーズナブルに移動できる座席です。
・おすすめ:コスパ重視の日帰り旅行などに。
・スタンダードシート特急料金:通常期610円~1,940円(乗車区間による)
※乗車には別途運賃が必要

特徴3:1号車にはカフェを併設!
1号車のコックピットラウンジには「GOEN CAFÉ SPACIA X」を併設しています。

「GOEN」は5匹の猿「五猿」と「ご縁」の2つの意味を込められています。「見ざる・言わざる・聞かざる」ならぬ「見る・聞く・味わう・香る・触れる」の五感をイメージしているのだとか。

沿線の魅力を五感で堪能できるように「NIKKO LAGER」をはじめとするクラフトビールや、車内限定パッケージが目を引く栃木の地酒、鹿沼市街にある「日光珈琲」によるクラフトコーヒーといったさまざまなドリンクが提供されています。

日光のブランド鱒、頂鱒(いただきます)をスモークした「頂鱒のスモーク」など、お酒に合うおつまみやコーヒーにぴったりのスイーツも揃い、車内で地域の味を楽しめます。

カフェでは、スペーシアXオリジナルブレンドコーヒーのドリップパックやカードケース、タオルハンカチ、ステッカーといった、車内限定のオリジナル商品も販売しています。
カフェを利用するなら1・6号車の予約がおすすめ!
カフェカウンターがある1号車のコックピットラウンジと、6号車のコックピットスイート・コンパートメントの座席を予約している人は優先販売の対象となります。2~5号車の座席の人は、車内に掲示されている二次元コードからオンライン整理券の取得が必要となります。オンライン整理券の発行は20組程度と限りがあるため、カフェメニューを確実に楽しみたい人は1・6号車の予約がおすすめです。
スペーシアXではサスティナブルな取り組みも
スペーシア Xは、モーター性能を向上させるなどで、現行の100系スペーシアと比べてCO2排出量を最大40%削減する設計となっています。運行の使用電力を、全て再生可能エネルギーに換えるなど、カーボンニュートラルな運行を実施。歴史・文化・伝統と自然が共生する「国際エコリゾート日光」の実現に寄与する車両です。
特急スペーシアXの運行区間・停車駅

特急スペーシアXの始発駅は、雷門と浅草寺を中心とした下町情緒あふれる街並みが広がる「浅草」。
人気観光スポット「とうきょうスカイツリー」を通り「北千住」「春日部」「栃木」「新鹿沼」と進み、日光方面と鬼怒川方面の分岐駅「下今市」へ。駅構内にはSL展示館があり、SL大樹の玄関口でもあります。終点は、世界遺産「日光の社寺」をはじめとする日光観光の拠点となる「東武日光」。浅草駅から東武日光駅までは1日4往復の運行。所要時間は約1時間50分です。
鬼怒川温泉ルートの場合は、下今市駅から世界中の有名建築物を25分の1サイズに再現したテーマパークの最寄り駅「東武ワールドスクウェア」を通って終着駅の「鬼怒川温泉」へ。
特急スペーシアXの料金
特急「スペーシアX」に乗車する際は、乗車券と特急券が必要です。乗車券は交通系ICカードでも対応が可能です。
また、特別座席(コックピットラウンジ・ボックスシート・コンパートメント・コックピットスイート)はスタンダードシートの特急料金にプラスして、特別座席料金も必要になります。1室あたりの特別座席料金は、座席により異なります。
スペーシアXの料金:「運賃+特急料金+(必要な場合)特別座席料金」が基本です。
特別座席料金(1室あたり)
コックピットスイート:18,000円(定員7名)
コンパートメント:8,000円(店員4名)
ボックスシート:400円(定員2名)
コックピットラウンジ:1人用 500円/2人用 1,000円/4人用 2,000円(4人用は2名以上で利用可)
例えば、浅草駅から鬼怒川温泉駅間まで乗車した場合の一人当たりの片道料金は、スタンダードシートの場合は運賃1,590円+スタンダードシート特急料金1,940円=3,530円、プレミアムシートの場合は運賃1,590円+プレミアムシート特急料金2,520円=4,110円、コックピットラウンジ(1人用)の場合は運賃1,590円+スタンダードシート特急料金1,940円+特別座席料金500円=4,030円となります(通常期での試算例です)。
2025年3月から繁忙期・閑散期の料金設定が導入されており、繁忙期は200円を加算、閑散期は200円が減算されます。


スペーシアXの特急券の予約方法
スペーシアXの特急券は、東武鉄道の発券機や駅のカウンターで予約するか、「トブチケ!(東武チケットレスサービス)」によるインターネット予約が必要です。
1室しかないコックピットスイートをはじめとする上位の座席はあっという間に売り切れてしまうことが多いため、早めの予約を心がけましょう。予約開始日は前売り予約の発売は乗車日の1ヶ月前、朝9時のスタートです。
インターネット予約
「トブチケ!(東武チケットレスサービス)」からチケットレスで予約・購入できます。2025年8月27日から、会員登録をしなくてもゲスト利用ができるようになりましたが、人気の座席をインターネットで予約したい場合は、会員登録の上、連絡先やクレジットカード情報などの入力項目をあらかじめ入力しておくことで、速やかな予約が可能です。
【参考】
東武特急券の購入がさらに便利に! 「トブチケ!」で8/27新サービス開始
https://tetsudo-ch.com/13006752.html
駅の自動券売機・窓口
東武線各駅(押上・渡瀬・相老・赤城・板荷・野州大塚・新藤原・みなみ寄居・寄居、無人駅を除く)の自動券売機で、座席指定券の購入が可能です。
ただし、人気の座席を予約したい場合は、窓口で発売開始時間に合わせて座席を確保してもらう方法がおすすめ。押上・みなみ寄居・寄居、無人駅を除く東武本線各駅の窓口で特急券を販売しています。
旅行会社経由
東武トップツアーズなどの旅行会社で、宿泊とのセットのツアーを利用する方法もあります。「個室タイプの座席がなかなか予約できない」「発売日時に駅の窓口へ行くのは難しい」といった場合におすすめです。
時代と共に進化を遂げた東武鉄道のフラッグシップ特急「スペーシアX」。日光・鬼怒川方面への旅路を、単なる移動手段ではなく「旅そのものを楽しめる空間」に進化させました。個室やラウンジでラグジュアリーな空間を満喫するもよし、スタンダード席で気軽に旅するもよし。
このガイドを参考に、あなたの旅のスタイルにぴったりの座席を予約して、心に残る日光・鬼怒川への旅へ出かけてみてはいかがでしょうか。
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成しています。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
(画像:東武鉄道、鉄道チャンネル)
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