「大きなチャレンジ」は最高のスタートに
ザルツブルクでの手腕が評価され、今季からボルシアMGの指揮を託されたローゼ photo/Getty Images
今季ドイツ・ブンデスリーガで台風の目となっているのがボルシア・メンヘングラードバッハだ。バイエルン・ミュンヘンやボルシア・ドルトムントといった強豪や、ユリアン・ナーゲルスマンが今季から率いることで大注目が集まったRBライプツィヒを抑えて第11節終了時点で首位に立つ。しかも2位ライプツィヒとの勝ち点差は「4」と、一つ頭が抜けているのだ。
ちょっとした、と書いたのはボルシアMGはもともと力のあるクラブであり、昨季も5位でフィニッシュしている。首位に立つ時期があってもおかしくないからだ。ただ、今季から新しい監督が率いているのにも関わらず、好調を維持しているという点はちょっとしたではなく、かなりのサプライズであり話題をさらっている。
新監督はマルコ・ローゼ。日本代表FW南野拓実が在籍していることでも知られるレッドブル・ザルツブルクを2シーズン率いたのち、その手腕が買われて多くのクラブから声がかかったそうだ。ドイツ国内の報道でわかる限りでは、シャルケやヴォルフスブルクもローゼをリストアップしていた模様。だが、最終的には同じレッドブルグループのライプツィヒか、ボルシアMGの二つから本人が選択した。発表は昨季が終わりきらない4月と早い時期で、いかに引く手数多だったかということがわかる。候補に挙がったライプツィヒは生まれ故郷であり、レッドブルにもお世話になってきた。だが、そこから離れるというのは大きな決断であり、「大きなチャレンジを選択」とローゼ本人も話していた。
ちなみに、選手としての現役最後のクラブはマインツで、ユルゲン・クロップ(現リヴァプール)が監督に就任した翌シーズンに加入し、現役最後のシーズンの監督はトーマス・トゥヘル(現パリ・サンジェルマン)で、指導者としての初期もトゥヘルの下で研鑽を積んだ。
堅守のボルシアMGに新たなカラーを加える
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2013年の加入以降、長きにわたりチームを牽引してきたクラマー photo/Getty Images
監督が交代しながらもボルシアMGのここ数年のカラーといえば、組織的で堅い守備と、スピードのある選手を前線においた重心が低めのカウンターサッカーだった。そのカラーは今季も健在で、現在の失点数はヴォルフスブルクに次ぐ「11」。ライプツィヒが「12」で、バイエルンでさえ「16」ということを考えるといかに堅守かがわかる。
一方で、前線からのプレス、戦えて走れる選手を重視するというローゼのカラーが加わった。結果、3バックも4バックも採用しているように戦術のバリエーションが増えたことは言うまでもなく、相手と状況によっては従来のように構えることもあるが、ショートカウンターもできるようになった。とにかく前からプレスをかけ、スペースを消し、奪っては中盤から次々と選手が飛び出してくるのは今季の大きな特長だ。もちろん完全に一致するわけではないが、一時期の良かった頃のドルトムントを思い出させる一面もあるのだ。
その戦術は優秀なダブルボランチがいることも大きい。2014年に開催されたブラジルW杯の優勝メンバーでもあるクリストフ・クラマーと、スイス代表でも活躍するデニス・ザカリアだ。
ローゼが序盤戦でボルシアMGに注入したのは、前線からのプレスと、戦い走り最短距離でゴールを目指すスタイル。現在は首位に君臨しているが、チームの誰もが「春先にどの位置にいるかが重要」と焦る気配がない。もたつくバイエルンとドルトムントを尻目に、ボルシアMGにもしかしたら、を起こすのは就任1年目のローゼかもしれない。
theWORLD239号、11月15日配信の記事より転載
文/了戒 美子
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