VARも遅かったし、ハンドの前にオフサイドでは?
ノルマン(背番号24)の左腕にボールが当たり、PKとなった photo/Getty Images
Jリーグが中断しているため、サッカーロスに陥っていて、物足りない日々を過ごしています。4月3日の再開を目指していますが確定事項ではなく(※編注:4月末現在では最短で6月13日まで延期)、先行きが見通せない状況です。しかし、事情を考えれば仕方ありません。
モチベーションの維持、コンディション調整などが本当に難しく、選手たちは不安な日々を過ごしていると思います。選手だけではなく、ご家族、チーム関係者、サッカーに関わるすべての人たち、さらには多くの人々がストレスを抱えていると思います。いまは我慢のときです。みんなで支えあってなんとか乗り越えていきましょう。
そうしたなか、最近テレビ観戦した試合で気になったシーンがありました。ラ・リーガ第27節バルセロナ×ソシエダはリオネル・メッシがPKを決めて1-0でバルセロナが勝利しましたが、疑問が残るカタチでの決勝点でした。
試合終盤にアルトゥーロ・ビダルが左サイドから入れたクロスがゴール前にいたソシエダのロビン・ル・ノルマンの左腕に当たりました。ノルマンは目測を誤っていてボールを視界に入れていなかったし、身体のバランスを保つための腕にたまたま当たったプレイでした。不自然な動きではなく、試合はそのまま進行されました。
ところが、どれぐらい経過したでしょうか……。数プレイが進んだのちにVARによる確認が行われ、主審がハンドの判定を下してバルセロナにPKが与えられました。
ものすごく時間がかかったこと。ハンドだと判断したこと。さらには、もうひとつ疑問だったのが、ビダルにボールが渡った時点でオフサイドだったのではないかということです。PKにつながったハンドに関わるプレイなので、VARの対象になってもよかったはずです。しかし、そこまで
遡ることはありませんでした。こうしたシーンは、今後いくらでも出てくると思います。VARは各国で導入されたばかりで、多くの改善点があります。もっと効率よく、観戦している人にわかりやすくしていかなければならないでしょう。
プレミアリーグではわずか数センチをVARで確認し、オフサイドとして得点を取り消すシーンが目立ちます。「鼻先が少し前に出ているからといって、オフサイドを取るべきだとは思わない」とはアーセン・ヴェンゲルさんのコメントです。私もそのとおりだと思います。
VARで確認中のプレイは会場で流さなくてもいい
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湘南×浦和でもVAR判定があった。こうした場面を減らしたい photo/Getty Images
Jリーグ開幕戦でもVARによる判定がありました。2月21日の湘南×浦和では浦和の鈴木大輔がハンドを取られ、湘南にPKが与えられました。このプレイでは、当該シーンが会場の大型ビジョンに映し出され、観客とともに主審の判定を待つことになりました。今年からJリーグはこの方針でやっていくようですが、私はVAR対象のシーンは会場で流さなくてもいいと思います。
どれだけプレイを確認しても、最終的に判断するのは主審です。ハンドやオフサイドは本当に微妙で、自分と違った判断が下されるときがあります。そうしたときに、スタジアムがどんな雰囲気になるか容易に想像できます。激しいブーイングが巻き起こり、モノがピッチに投げ込まれ、試合が中断するという最悪の事態も想定されます。そう考えると、VARの確認映像は会場で流さなくてもいいのではないでしょうか。
また、プレミアリーグではオン・フィールド・レビュー(OFR)をせず、主審がピッチ内でVARと通信して判定を下すシーンが多いです。その結果、誤審になっているケースがあります。そういった事態を防ぐためのVARなので、主審にはもっとOFRを使ってほしいです。助言を受けて誤審したのでは、主審としても不本意でしょう。 オフサイドディレイに関しても、改善の余地があります。際どいケースではプレイを続行させ、アウトプレイになったときに判断するものですが、GKと1対1になったり、追いかけてきたDFと競り合うことが想定され、そうなるとケガにつながるおそれがあります。オフサイドディレイがあることで旗を上げる決断ができず、致命的な結果を招いてしまう。そういうことがないように、副審には自信があるときはビシッと旗を上げ、オフサイドを取ってほしいです。
判定に対する有耶無耶がなくなるのが理想ですが、いまは導入直後で、世界各国のリーグでいろいろな問題点が出てきています。うまく機能すればすんなりと判定を受け入れられると思いますが、現状のVARに関して、私はまだ否定的な目でみています。
ただ、2月22日の川崎×鳥栖では、レアンドロ・ダミアンのゴールがオフサイドで無効となり、誤審によって勝敗が決まることを防ぐことができました。間違いなく、ポジティブな一面もあります。
いまは人数をかけられず、VAR、AVAR(アシスタント・ビデオ・アシスタント・レフェリー)、リプレイ・オペレータの3人で一試合を担当しています。2018年のロシアW杯では一試合8人だったので、その違いは明白です。
そもそも、はじめからうまくいくはずがありません。難しい状況のなかスタートしており、いろいろな苦労があるので今後も絶対に問題点が出てきます。サッカーをより魅力的なスポーツにするために、どうしたら効果的なのか。それぞれの立場で考え、コミュニケーションを取りながら進めていけばいいのではないかと思っています。
構成/飯塚 健司
※電子マガジンtheWORLD243号、3月15日配信号の記事より転載
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