粕谷秀樹のメッタ斬り 044
トッテナム復帰を果たしたベイル photo/Getty Images
ちょっとした誤解は時が経てば
ガレス・ベイルがレアル・マドリードから古巣トッテナムにローン移籍したけれど、もう1~2年、早くてもよかったんじゃないかって思う。レアルにやり残したことがあったのか、それとも関係を修復できるって信じていたのか。
なにしろ、居場所がなかった。ジネディーヌ・ジダン監督の構想から外れ、ベンチにすら入れない。暇を持て余してゴルフに興じると、「フットボールに興味がないようだ」「職を変えた方がいい」などなど、メディアやサポーターからバッシングされた。マルセロは「スペイン語を覚えようとしない」と批判していた。しかし、エージェントのジョナサン・バーネットは反論する。
「何度となく人格を攻撃されたにもかかわらず、レアルはベイルをサポートしなかった。彼はフットボールを愛しているし、スペイン語が話せないっていう噂もデタラメだ」
期待が大きかった分だけ、レアル側も不満の矛先をベイルに向けすぎたのかもしれないね。でも、ちょっとした誤解なら時が経てば解決する。いつか笑顔で握手する日がやって来るといいな。
![[粕谷秀樹]7年ぶりの古巣復帰でベイルが晴れやかな表情 ただし彼ひとりでトッテナムの問題が解決するわけではない](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTheWorld%252FTheWorld_295107_4690_2.jpg,quality=70,type=jpg)
近年怪我に苦しめられ、なかなかコンディションが上がらないアリ photo/Getty Images
パーティーボーイの異名を封印
「愛されているんだな、と改めて実感した」
7年ぶりに古巣へ戻ったベイルは、入団会見から笑顔が弾けている。晴れやかな表情を見るのは久しぶりだ。
ハリー・ケイン、ソン・フンミンとの3トップは驚異的だし、ケインとの2トップもいいね。そのときはステフェン・ベルフワインが右ウイングで、ソンは左。ケインが疲れたり、故障で欠場を余儀なくされたりした場合は、ベイルの1トップっていう選択肢もありなんじゃないかな。
ただ、ベイルひとりでトッテナムの問題が解決するってわけじゃないよ。トップ4に返り咲くには不十分な戦力だ。レアルからセルヒオ・レギロンを、ウォルヴァーハンプトンからマット・ドハーティを獲得して両サイドバックの増員には成功したものの、計算できるセンターバックも確保したいところだよね。
それからセルジュ・オーリエ、ファン・ホイス、ダニー・ローズなど、余剰戦力の整理も急ぐべきで、なによりデル・アリの復活が待ち遠しい。
センスはだれもが認めている。ジョゼ・モウリーニョ監督との確執って報道も、にわかには信じがたい。指揮官がデル・アリのコンディション調整に腐心しているのは、『Amazon』のドキュメンタリー『ALL OR NOTHING』を観ればよく分かる。
デル・アリが二列目中央で、右にベイル、左がソン、1トップにケインという布陣はプレミアリーグ屈指の破壊力を秘めるとはいえ、勝負の世界では名前と実績は永久保証されていない。デル・アリは信じてくれる監督のためにも、体調の維持に努めなくちゃ。24歳。パーティーボーイの異名を封印し、プロらしく振る舞えってことさ。
文/粕谷秀樹
スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。