
[J2第23節、ジェフユナイテッド千葉 1-0 モンテディオ山形、7月12日、山形・NDソフトスタジアム山形]
4位千葉は接戦の末に山形を下し、公式戦9試合ぶりの白星を飾った。
左サイドで先発出場したMF椿直起はドリブル突破からチャンスを演出。
背番号7の想いを背負ったイレブン
昨季イレブンが悔し涙を流したスタジアムに、喜びの涙がこぼれた。
公式戦8戦未勝利だった千葉は、アウェイで山形と対戦。ベンチからは前節鳥栖戦で負傷交代を余儀なくされた背番号7のユニフォームが見守っていた。
後半開始前の椿ここまで田中と両翼を形成し、千葉の躍進を支えてきた椿は「和樹くんの想いを背負って戦いたい」と言葉に力を込めた。
「僕は和樹くんと同じポジションになるライバルでもありながら、すごく仲がいいんです。彼の熱い想いや、ジェフを昇格に導きたいという気持ちをシーズン当初から知っていたし、一緒に両サイドとして『ジェフをJ1に』という気持ちがあった。きょうはその責任を果たしたいと思って試合に臨みましたし、これからも彼の想いを全員が背負ってプレーしたいです」
千葉は昨季J1昇格プレーオフをかけたJ2最終節で、山形に0-4で大敗。アウェイのNDソフトスタジアム山形は、まさに因縁の場所だった。

椿自身も苦い思い出がある。イレブンは前半2分に同選手のクリアミスを相手選手に拾われて先制点を許していた。また、その際にシュートを防ごうとして身を投げ出した田中が腰を強打し、その後同30分に負傷交代していた。
千葉で3シーズン目を迎える背番号14は「去年の最終節はずっと忘れていません。僕のミスから点を取られて、そこから崩れてやられた試合でした。本当にあの試合は一度も忘れたことがないです」とあの日の雪辱を果たすため、不退転の覚悟で宿敵に挑んだ。
因縁のスタジアムであふれた涙
試合は立ち上がりから拮抗。千葉が攻めれば、山形がカウンターで応酬する白熱の展開となった。
左サイドからのドリブル突破でチャンスを演出した椿は前半に2度の決定機を迎えたが、シュートはどちらもゴールの枠に阻まれ、思わず天を仰いだ。
「僕を含め、前半に何個も決定機があったので、もう少し楽に進められた試合だったと思う。そこは攻撃陣として、まだまだ物足りないと感じていますし、伸びしろだと思います」とイレブンは前半シュート8本の猛攻を見せるも、ゴールが遠かった。

千葉は先制点を奪取しようと、後半になっても攻撃の手を緩めず。リーグ戦3試合連続で無得点だったイレブンは変ぼうし、攻めれば得意のサイドアタックを披露。守れば全員が身を粉にして身体を張り続け、勝利への執念を燃やした。
決勝点は後半36分に右コーナーキックから生まれた。
プレースキッカーのMF品田愛斗(まなと)が放ったボールは放物線を描きながらファーサイドへ。これをDF河野貴志がヘディングすると、そのこぼれ球をDF鳥海晃司が左足でゴールに突き刺した。

千葉は最後までこの1得点を守り切り、山形から13季ぶりとなるシーズンダブルを勝ち取った。
試合後、背番号7のユニフォームをまとい、サポーターの前に現れた椿はあふれる涙をこらえきれなかった。
「サポーターはもちろん苦しかったと思います。中でやっている選手や監督、クラブのスタッフもめちゃくちゃ悔しい思いをしていた。(勝利して)サポーターの笑っている顔を見たときに、ぐっとくるものがありました。まだまだ試合はありますが、本当に“勝ち”ってうれしいと思いました。
なかなか勝てなくて、外にベクトルが向くことも多々ありましたけど、こうやってサポーターのみなさんが毎試合、毎試合背中を押してくれて、きょうもこれだけ集まってくれて、まずは1勝できました。僕たちの目標はまだまだ上にあるので、次のホームの試合もたくさんの応援をよろしくお願いします」と、重圧と闘っていたドリブラーが感謝を口にした。

次節は中断期間を挟んだ来月2日午後7時からホームのフクダ電子アリーナでいわきFCと対戦。2位に浮上した千葉は、今季開幕戦を2-0で制したいわき相手に再び勝利し、もう一度連勝街道を突き進みたい。
「今年のチームはこうやって勝っていくんだ」と因縁のスタジアムを乗り越えたイレブンが、17季ぶりのJ1復帰に向けて再スタートを切った。
(取材・文 浅野凜太郎)