過密日程に警鐘を鳴らした矢先にシティのロドリは負傷、シーズンをほぼ棒に振ることに Photo/Getty Images
エリートクラブは過密日程とどう付き合っていくのか
エリートレベルのサッカーチームのスケジュールは近年、これまでになく過酷になってきている。今季もEUROなどの国際コンペティションからほぼ間もなく、選手たちは5月までのリーグ戦を戦うことになった。
今季の初めごろ、マンチェスター・シティMFロドリは過密になり続けるスケジュールに警告を発したが、その矢先に自らが負傷してしまい、シーズンをほぼ棒に振った。アーセナルやトッテナムは続出する怪我人に悩まされ、シーズン中に大きく失速してしまった。
アーセナルのミケル・アルテタ監督は先日「我々はかつてないほどトレーニングをしていない」と語っている。日程が過密すぎて、最低限のリカバリーだけで終わってしまうのだ。同監督によれば最大の問題点は筋肉をトレーニングできないことで、その筋肉に何週間もの間、負荷をかけ続けていかなければならない。そうなると負荷やストレスを筋肉が吸収できず、怪我のリスクが高まるという。カイ・ハフェルツが負傷離脱したのも、このことと無関係ではないはずだ。
『The Athletic』は、スポーツ科学のコーチなどに話を聞き、カレンダーがサッカー選手のトレーニングにどのような変化をもたらしたかを報じているが、そのなかで紹介された国際サッカー選手連盟(FIFPro)は10月に発表した選手の作業負荷に関する論文によると、プロサッカー選手のパフォーマンス専門家の88%が、選手はシーズン中に55試合以上に出場すべきでないとしている。しかしサンプルに含まれた1500人の選手のうち、31%が55試合以上に出場していたという。
また、選手はシーズンの合間に少なくとも28日間連続の休養が必要であり、理想としては42日間だという。
同メディアによれば、あるプレミアリーグの主要クラブのパフォーマンスコンサルタントの一人は「私たちは彼らをパフォーマーとしてではなく、エンターテイナーとして扱っている」と語ったという。
プレミアの年末の過密日程を語るとき「ファンとして観ている方は楽しいが、選手たちは大変だ」などと言うことがある。しかし今季の各クラブの怪我人の多さを見るに、楽しくもなくなってきたというのがファンの本音かもしれない。怪我人だらけのお気に入りクラブを観て楽しいだろうか。アタッカーのいないアーセナルや、ディフェンダーのいないトッテナムを頻繁に観ることが本当に楽しいことだろうか。
今夏のクラブW杯を戦うにあたって、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は「休暇とプレシーズンを合わせたもの」と表現しており、ガチンコでタイトルを狙うつもりはないようだ。スター選手が集まる大会は興行として莫大なマネーを生み出せるかもしれないが、選手は「エンターテイナー」ではない。どうかビジネスの都合に付き合わされて、身体を壊すことがこれ以上ないように願いたい。