10月1日に消費税率の引き上げ(8%から10%へ)が実施されました。



振り返ると、当初は2015年10月に実施されるはずでしたが、景気後退懸念から2017年4月実施へ延期され(第1回目の延期)、そして、さらなる景気後退懸念から2019年10月に再度延期されました。

今回も年明け以降は3度目の延期議論が持ち上がったようですが、ようやくというか、ついにというか、当初計画より4年遅れでの実施となった次第です。



■軽減税率制度でおもちゃ付きお菓子に混乱?



ただ、この2回に及んだ延期の間に、当初計画では予定されなかった施策が盛り込まれました。それが軽減税率制度です。



これは、本当にザックリ言ってしまうと、主に低所得層への配慮から、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」には従前の消費税率である8%を適用するものです。



さて、消費増税が実施されてから数日が経過しましたが、皆さんはもう慣れましたでしょうか? 早くから軽減税率制度が周知徹底されたこともあり、大きな混乱もなくスタートした印象があります。また、日々購入する食料品が8%に据え置かれたため、現時点では特段の違和感がないのかもしれません。



しかし、小さな子供がいる家庭、とりわけ、3歳から小学校高学年までの子供がいる家庭では、もう少し注意が必要になります。それは国税庁が定義した「一体資産」に関することであり、具体的には、いわゆるおもちゃ付きお菓子(食玩)が該当します。



このおもちゃ付きお菓子は、内容によっては軽減税率が適用されず、標準税率である10%が課せられるからです。



■大ヒットした仮面ライダースナックは代表的なおもちゃ付きお菓子



おもちゃ付きお菓子については説明不要かと思いますが、お菓子を購入すると“もれなく”付録(おもちゃ等の景品)が付いてくる菓子です。



筆者の幼少時には仮面ライダースナックというスナック菓子が大人気でした。このスナックを買うと、仮面ライダーカードが付いてきたからです。

当時、仮面ライダーカードを集めるのがある種のステータスであり、スナック菓子の味などどうでもよかったのが思い出されます。



そして実際に、仮面ライダーカード目的に買ったスナック菓子を食べずに捨ててしまうことが、大きな社会問題にもなりました。現在50歳以上の方々には、少なからず思い当たる節があるのではないでしょうか。



時代は変わって、子供たちがポータブルゲーム機で遊ぶことが主流になった今でも、こうしたおもちゃ付きお菓子への人気・魅力は衰えていないようです。やはり、前述した年頃の子供、とりわけ、男の子にとっては、言葉では説明できない憧れがあるのは否めません。



実際、仮面ライダースナックはなくなりましたが、似たようなおもちゃ付きお菓子は数多く販売されています。



■国税庁が定めたおもちゃ付きお菓子の軽減税率適用要件



さて、少し前置きが長くなりましたが、国税庁はおもちゃ付きお菓子への軽減税率適用要件として、



  • おもちゃ付きお菓子の価格(税抜き)が1万円以下
  • おもちゃ付きお菓子の価格に占める食品の割合が3分の2以上

の2点を定めています。



このうち、価格が1万円以上になるケースは稀でしょうから、問題は2つ目の要件になります。実は、この要件を満たさないおもちゃ付き菓子”決して少なくないのです。詳細を知らずに8%だと思って買ったら、会計レジで10%と計算されてしまう可能性は十分あり得ましょう。



■プロ野球チップスは10%、ビックリマンチョコは8%



頻繁に用いられる具体例で見てみましょう。



カルビー社の人気商品の1つにプロ野球チップスがあります。

これは昔の仮面ライダースナックと同じで、人気プロ野球選手のカードが、何と2枚も付いているポテトチップスです。このプロ野球チップスは、価格に占める食品(チップス)の割合が3分の2未満ということで、軽減税率は適用されません。10%です。



一方、ロッテ社のロングセラー商品の1つにビックリマンチョコがあります。これはビックリマンシールなどの付録が付いているチョコレート菓子ですが、1990年代には大きな社会ブームにもなりました。



その大ブームは終わったものの、現在でもビックリマンシールの人気は高く、ネットオークションでは思わぬ高値が付くことも珍しくありません。しかし、このビックリマンチョコは、価格に占める食品(チョコ菓子)の割合が3分の2以上ということで、軽減税率適用となっています。



これらの価格割合は「合理的な方法により計算」されたとなっていますが、なぜ?という疑問は尽きません。しかし、付録(おもちゃ)は違えども、同じようなおもちゃ付き菓子でも消費税が2%異なるのです。1回きりの購入ならともかく、この先頻繁に購入するのであれば、その差額は積もり積もって決してバカにできない額となるでしょう。



■菓子が入った容器が「資産」と見なされれば軽減税率の適用除外に



この他にも、“えっ!?”と驚くような理由で軽減税率適用から除外されるお菓子があります。



たとえば、チーリン製菓の販売するカラーペンチョコは、容器にペン先が付いて書くことが可能という理由で、「資産」に該当するため標準税率(10%)となります。

他方、同社のステッキチョコに関しては、容器を杖としては使用不可能(当然ですね)ということで軽減税率適用が認められました。また、プチラムネは、容器に(幼少児向け)笛が付いているという理由で、「資産」に該当するため標準税率(10%)となります。



正直、呆れて開いた口が塞がらない…という感じですが、逆に、子供向け菓子に対して、ここまで厳密に定義した国税庁の調査力も称賛に値するのかもしれません。



■子供はこの複雑な軽減税率制度を理解できる?



いかがでしょうか。正直、大人にはあまり関係ないことかもしれません。しかし、もし、子供が決して多くはないお小遣いの中でやり繰りしているとすれば、相応に影響が出ても不思議ではないでしょう。子供たちが軽減税率制度を理解するのは難しいでしょうから、親御さんが一度説明してあげるのも必要かもしれません。



もっとも、説明したとしても理解されない可能性は高いと思われますが…。



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