発達障害は比較的男性に多いといわれていますが、発達障害を抱え苦しんでいる女性も少なくありません。なかには、成人してから違和感に気づいたケースも存在します。
そこで今回は、発達障害を抱える女性の悩みや、そこから引きこもりへつながってしまうケースについて考えていきます。
■「10人に1人」といわれるADHD
一口に発達障害といっても、自閉症スペクトラム(障害)(ASD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)・学習障害(LD)などさまざまな障害があります。厚生労働省の「NDBデータ平成29年度版」(2017年)では、発達障害外来患者数(1回以上、精神療法に限定しない)が約101万1000人となっています。
なかでもADHDは「10人に1人」とも言われており、グレーゾーンを含めるとさらに多くの人が該当すると考えられます。その具体的な特徴を見てみましょう。
・多動性や不注意により日常生活に支障をきたす
・単純ミスや忘れ物が目立つ
・気が散って集中できない場面が多い
・落ち着きがない、衝動的
このような症状を抱えている人は、日々の中で生きづらさを感じる場面もあるようです。では、どのような苦労と戦っているのでしょうか。実際にADHDを抱えている女性の事例を見てみましょう。
■「女性特有の生きづらさ」と「発達障害の生きづらさ」
30代女性のAさんは、学生時代から時間を守れない・忘れものが多い・生活リズムが乱れるといった行動が目立っていました。しかし、本人や周囲は「少し変わった子」「のんびり屋さん」と、捉えていたようです。
ところが、就職後は遅刻や居眠り、ミスの連続といった問題が多発し、最終的には大きなミスをきっかけに退職。その後も職を転々としましたが、失敗の多さが原因で5回も職を失いました。
ここでようやく病院を受診し、「ADHD」であることが判明します。子どもの頃は「ちょっと変わってるね」で済まされていたものが、職場では「重大なミス・問題」となってしまう場合もあります。20代後半になって初めて自分の発達障害を知ったのです。
また、女性は「気が利く」というイメージを持たれることもあります。「言わなくても分かるよね」と思われている場合も多く、上司や先輩から具体的な指示を得られず戸惑うことも。「そんなこともできないのか」と注意されるケースもあるようです。
しかしAさんは、ADHDの診断を受けてから自分に合った薬を服用したり、自助活動グループに参加したりと、新たな一歩を踏み出しました。Aさんのように生きづらさを感じている方は、病院で一度相談してみるといいでしょう。自分の特徴を理解することで、それにあった対処法や相談先が見つかるかもしれません。
■「生きづらさ」により引きこもりになるケースも
Aさんのように生きづらさを感じていると、自ら社会と距離を置いてしまうケースも珍しくありません。2019年3月に内閣府が発表した「生活状況に関する調査」によると、40~64歳のひきこもりは全国に約61万人いると推定されています。
さらに、7年以上引きこもり生活を続けている割合は約半数を占めています。
では、そもそもなぜ引きこもりになってしまったのでしょうか。その原因は非常に幅広く、学校に行けなくなった、就職活動に失敗したというケースだけではなく、「発達障害」によって職場や周囲に馴染めなかった人も存在します。
なかには、Aさんのような女性やADHD特有の苦労により、引きこもりとなってしまった人も。将来さらに親が高齢になることを踏まえると、自立を促す取り組みが必要であるといえるでしょう。
■まとめ
発達障害は、非常に気がつきにくいもの。子どもの頃は「個性的」で済まされていたものが、大人になって子どもの頃と状況が異なることで、問題点が目立ってくるパターンもあります。
とくに女性の場合は、「女性ならこれが得意」「できて当たり前」といった発言によって、さらに苦しめられるということも…。こういったことの積み重ねが、引きこもりの引き金になってしまうこともあります。
【参考】
「精神保健医療福祉に関する資料( https://www.ncnp.go.jp/nimh/seisaku/data/ )」国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 精神医療政策研究部
「生活状況に関する調査(平成30年度)( https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html )」内閣府