男性の育児休暇取得を義務付ける会社が増えてきたり、県会議員や国会議員の男性が育児休暇を取得したりするなど、「男性も育児休暇を取るべき」という声が年々高まっているように感じます。



しかし、この「男性の育児休暇取得」、果たして本当にすべての人がもろ手を挙げて「ウェルカム!」状態なのでしょうか?中には「夫の育休なんていらない!」と思っているママもいるようです。



■夫が育休を取ったけれど…



今回お話を伺ったのは、1歳の男の子のママ、Sさん(34歳)。結婚10年目にしてようやく誕生した我が子、Sさんのご主人はものすごく喜んだのだそうです。「主人は、妊娠中から『俺は育休を取るぞ!ふたりの子どもだから、ふたりで協力して子供を育てるのが当たり前だ』と宣言していたんです。私はそんな主人の言葉がとても嬉しく、頼もしかったんですが…」



IT関係の会社に勤務しているSさんのご主人はハードワーク。またどちらの両親も県外在住。ご主人のたっての希望で里帰り出産は選択しなかったSさんは、産後はワンオペ育児を覚悟していたので、これはとても嬉しい誤算だったと言います。



宣言通り3か月間の育休を取得したSさんのご主人。しかし、現実は予想とは大幅に違うものでした。「主人がやってくれるのは、せいぜいオムツ替えと子どもをお風呂に入れることくらい。食事作りは私の仕事でした。産後すぐは起き上がれないから食事が作れない、というと『大丈夫だよ、外でなんか食ってくるから』って。『え、私のぶんは…?』と思ってしまいました」



ようやく動けるようになったら朝、昼、夜と決まった時間に食事を要求するご主人。

「お昼は11時、夜は17時になると『今日のご飯は何?』と聞いてくる主人。これが料理の支度をする合図です。『料理している間は見とくから』と言うので子どもを預けても、10分間泣き続ければ『おっぱいじゃないのか』と連れてくる。そのたび料理を中断して子どもをあやす…」



その他にも、子どもと一緒に昼寝をしたいのにテレビをつけているから眠れない、手を洗って手をふくたびにタオルを替えるから、洗濯物が増える…など、小さなストレスが積み重なってSさんは限界寸前だったのだとか。「その都度注意すればいいじゃん、って話なんですが、確かに注意したら聞いてはくれます。でも、その注意する時間を取られるのすら腹が立つんです。

主人が育休さえとらなければ、こんな悩みは発生しないのに」



ご主人の育休が終了したとき、Sさんは安堵のため息をもらしたのだそうです。「男性の育休、本当にいらないです!」



■それぞれ「適正」があるのでは?



今回のSさんの話を聞いて、筆者が感じたのは「育休を取るにも夫の向き、不向きがあるのだなぁ」ということ。世の中のすべての男性が育休を取ることで、みんなハッピーになれるとは決して限らない。中にはSさんのように「旦那が育休を取るなんてゾッとする」という考えの人もいるのです。



現に筆者の友人でも「旦那に育休なんて絶対取ってほしくない!」という人がチラホラ。そして、彼女たちが揃って口にするのは「育休はいらないから、その分早めに帰ってきてほしい」ということ。



一日中一緒にいるのはいろいろとトラブルのもとになりそう、かといってワンオペ育児を続けるのは心身ともに疲弊してしまう。せめて主人がいつもよりも少し早く帰ってくれて、子どものお風呂や寝かしつけをしてくれれば、日中できなかった家事も片づけられるし、自分の時間も持てる…。こんな風に思っている人も少なくありません。



確かに男性が育児休暇を取りやすい社会というのは望ましいもの。しかし、これが義務付けられてしまうと、それはそれで困りものになるというのも事実。「なんてワガママな」と言われたらそれまでですが、「育休を取るのが良し、取らないのは悪し」と極端な話をしてしまうのは、ちょっと危険なのではないか…?と思った次第です。



■なんでも「話し合うこと」



これは育児休暇取得に限った話ではありませんが、夫婦間のトラブルは「しっかり話し合うこと」で事前に防げるものがほとんど。もし、あなたのご主人が「育休を取る」と言った場合、育休中の過ごし方や役割分担をしっかりと話し合い、また、どうしてほしいかをきちんと伝えることも大切。



ご主人が育休を取ることで、自分の負担が増えそうだな…と感じたときは、潔く「育休必要なし」と伝えることも必要です。