私は勤続30年の現役銀行員です。これまで仕事を通して、それこそ数え切れないくらいさまざまな人を見てきました。



そうした人の中にはなぜか「お金にモテる人」つまりお金のほうから寄ってくる人と、反対にお金が去っていってしまう「お金にモテない人」がいることに気がつきました。そこで今回はまず、「お金にモテる人」の特徴についてお話ししていこうと思います。



これは教訓、自己啓発あるいはスピリチュアル的な話しではなく、私が実際に出会ったお客様のお話です。「この人はお金にモテるから、だからお金持ちなんだなあ」と感じた実例なので、皆さんもお金との付き合い方を考える際の参考にしてみてください。



■銀行員が見たお金にモテる人~「吸引力」でお金が向こうから寄ってくる人がいた!



これは、地方の支店勤務時代に出会ったお客様の話です。



20代後半の男性で、代々続く地場産品加工業(道の駅で「〇〇漬」などのネーミングで売っている農産加工品をイメージしてください)の次期社長でした。

ここでは、この方をAさんとしましょう。



Aさんとは事業資金融資の申込みで会ってから、実に長い付き合いになりました。それはなぜかというと、Aさんの人柄に惹かれ、銀行員としてだけでなく人として力になりたいと思い、事業の発展を見ながら苦楽をともにしてきたからです。



本来、銀行員は特定の顧客に感情的肩入れをし過ぎてはいけないのですが、気がつけばそのような特別な思いを持っている自分がいました。



どうしてそうなったのかを考えたとき、Aさんが持つ「吸引力」が原因だという結論に至りました(もちろん実際には、あくまで銀行員として節度ある付き合いをしたつもりです)。



■「吸引力」があるからお金にモテる?



吸引力とは、その人が持って生まれた天性の部分と、家庭環境、教育やその人自身の生き方から発せられるもので、そういう人にはお金が向こうから集まってくるようです。

まだ、概念的、抽象的だと思いますので、Aさんを例に具体的に見ていきましょう。



”先祖代々お金持ち”には、それぞれの哲学がある

Aさんの家は、江戸時代から代々続く地域の顔役的な存在でした。聞いたところでは、代々困った人にお金を融通してあげて、しかも取り立てらしいこともせず、なかにはうやむやになってそのままの人もいて「あの家には足を向けて寝られない」人もいたそうです。



商売上手、お金を稼ぐのも上手なのでお金が集まり、惜しげもなく困った人に援助するいわば「篤志家」だったので、恩義に感じた人からさまざまな恩返しがあり、結果的に財を築いていったとのことでした。



家訓として「困った人に援助を惜しむな」と教えられてきたAさんも、同年代からの人望は厚く、それが仕事に良い具合につながり事業が発展していきました。やはり、お金持ちを代々続けてくることができた家には何かしら秘訣があり、これだけは、一般の人には太刀打ちできない部分だなと感じたものです。



飾らない人は、お金にも人にもモテる

前述のようにAさんは人望が厚かったのですが、それには自分を「飾らない」という点もあると思います。



このAさん、ハッキリ言って見た目は不良(今風に言うとヤンキー、DQNでしょうか)というかコワモテなのですが、妙に人なつこく、そして飾らない人でした。

銀行員として訪問すると、いつも決まってエプロンとゴム長靴で加工作業をしていました。



会社規模から言えば従業員も多く、自ら作業しなくても良い立場なのですが、その家は社長(父)会長(祖父)全員が加工場から離れず、これも「家業を従業員にやらせ自分はふんぞり返るようになったらこの家は終わりと思え」という家訓があるからだそうです。こういう昔気質な話には、銀行員と言う人種は結構弱いのです。



これは余談ですが、Aさんは高校時代やんちゃで結局高校を中退したそうですが、学校の教育方針に納得がいかなかったAさんの父親(社長)は、趣味の猟銃を持って学校に乗り込んだらしい、と伝説的にささやかれていました。



それを楽しそうに話すような飾りのない人なので、結果的に周りから愛され、お金にも人にもモテる要因になっていました。



吸引力があると運も吸い寄せる~努力したからこそ運も寄ってくる

銀行の仕事として、お客様同士を引き合わせる商談会、ビジネスマッチングの機会があるたび声を掛けていましたが、Aさんはその都度喜んで参加してくれました。



実のところ、銀行主催のこうした行事はなかなか人が集まらないことも多く苦労をするのですが、Aさんは嬉々として参加してくれました。もちろん私たち銀行へのアピールもあったでしょうが、真剣に商売のチャンスと捉えていたようです。



なかには銀行から頼まれてイヤイヤ出席している会社も多かったのですが、Aさんは何週間も前から準備し、デモンストレーションの稽古までして参加してくれていました。



こうした本気度が、余計周りと比べて光ったのでしょうか、名前を出せば誰でも知っている上場食品メーカーと知り合うことができて、その後両社で新商品開発の話がまとまり、今ではなんと北米全土にその商品が出回っています。



この、最初のきっかけが商談会だったそうで、翌日来店して(私にお礼を言うために来店してくれたそうです)、「普段なら門前払いばかりだった大企業の人と名刺交換できたのは▲▲さん(私)のおかげです」と嬉しそうに述べられ、私は本気で銀行員になって良かったと思ったものです。



■まとめ~お金にモテる人は銀行員もファンになる



ここまでAさんの例を見ながら、お金にモテる人の特徴をお話ししてきましたが、念押ししておきたいのは、これらは決して狙ってやっていたことではない、という点です。

意図が見えればむしろ逆効果ですし、芝居や心にもないおべっかなど銀行員には見透かされてしまいます。



意識せず、飾らず、ひとことでいうなら「真摯」であれば銀行員にモテますし、周りの人からも、もちろんお金からもモテます。代々続く家柄など、努力次第ではどうにもならない部分もありますが、Aさんの姿勢から学べるものは大きいのではないでしょうか。