意地悪なお姑さんの一挙手一投足に、お嫁さんが嫌な思いをする…。嫁姑問題と聞くと、ついついそんな構図を思い浮かべてしまいがち。

しかし、中には良かれと思ってやったことがアダになっているということもあるようです。



今回は、美容室にやってきたある女性の話から、嫁姑問題を少し考えてみましょう。



■Kさんの悩みは「次男の嫁が頼ってくれない。」



30代のSさんは、とある住宅街で美容室を経営しています。今日は、初めて訪れたKさんという60~70代の女性のお客様のカットをすることになりました。Kさんはおしゃべりが好きな方らしく、Sさんが置いた雑誌には目もくれず、自分のことを話し出しました。「あなたおいくつ?30代?じゃあうちの嫁たちと同じくらいね。

いや、次男の嫁がね、なかなか打ち解けてくれなくて、気にしているのよ。聞いてくれる?」



Kさんには、2人の息子さんがいました。長男は結婚が20歳と早く、長男嫁は10代の若さでKさんの家にやってきました。若くて順応性もあったのか、長男嫁はKさんとすぐに仲良くなり、今でも「お義母さん、お義母さん」と、なにかと頼ってくれます。一方の次男が結婚したのは30歳手前。結婚当時は転勤族でしたが、2人目の子どもが産まれたのを機にKさん宅のそばに住むようになりました。



次男の引っ越しが決まった時、Kさんは、3歳と0歳のかわいい盛りの孫が近くに住むということで、再び孫の世話ができると張り切りました。というのも小さい頃によく面倒を見てあげた長男家の子どもたちは、もう高校生。たまに顔を見せてはくれますが、学校やら遊びやらが忙しいのでしょう。最近は孫のために何かしてあげるという機会も減って、Kさんは少し寂しい気持ちになっていたところだったからです。それに次男嫁は、実家が遠方。「実親に頼れないぶん、私が助けてあげなくちゃ」という気持ちもありました。



しかし、いざ近くに暮らし始めてみると、次男嫁は、それまでワンオペ育児が当たり前だったようで、まったくKさんに孫を預けるということをしてくれません。何度も「子どもを見てほしい時は言ってね。」と言いましたが、次男嫁は「はい」と返事はするものの、いまかいまかと待っていても、次男嫁から孫を見てほしいというヘルプ要請は一向にきません。
だんだんとKさんは、「次男嫁は、私を信用してくれてないんじゃないかしら?」と疑心暗鬼に陥るようになりました。



「まあ、遠慮してる雰囲気ではありますよね。」と、Kさんの髪を整えながら相槌をうつSさん。するとKさんは言いました。「でもね、義理とはいえ親子になったのよ。

もっと甘えてほしいじゃない。だから、思い切ってこちらから連絡をしたの。」



■たまらずKさんがとった行動



電話に出た次男嫁に向かってKさんは訴えました。「どうして、孫たちを預けてくれないの?そんなに私が信用ならない?私たち、家族でしょう?水くさい。」Kさんの言葉に、次男嫁は、電話口の向こうで戸惑っている様子だったといいます。「私もふだん家にいますし、お義母さんの手を煩わすほどのことがないというか…。」というはっきりしない返事。そうこうしているうちに、電話の向こうから「外行きたい~」と騒ぐ上の子の声と、ぐずっているらしい下の子の泣き声が聞こえてきました。「ここ数日、下の子の具合が悪くて。

上の子が外に出られずに今ちょっと騒いでいるんです。お義母さん、申し訳ないんですが、いったん電話を切ってもいいですか?」と次男嫁。



電話を切ろうとした次男嫁に「そういう時にこそ、家族に頼るものじゃないの?あれなら上の子連れてきなさいよ。面倒見るから。」とKさんは言いました。「いや、今2人連れて出るのは大変で…。」という次男嫁。「ほら、また遠慮する!とにかくどっちでもいいから連れてきなさい。

預かってあげるから!」と押し切りました。



数分後、次男嫁はKさんの家に現れました。「今、眠っているので下の子をお願いします。お義母さんが寝かせてくれている間に、私が上の子を公園に連れて行きます。もし下の子が起きて騒いだら、携帯で呼んでくださいね。」



その時、「やっと頼ってくれた。」とKさんは、うれしくなったそうです、下の子を受け取り、上の子の手を引いて出かけていく次男嫁を気分よく見送りました。しかし、母親がいなくなったことを気配で察したのでしょうか。ものの10分もしないうちに下の子がぐずりだしました。「おお、よしよし」と抱っこをしますが、火がついたように泣き出します。電話をしようにも、あまりにぐずるので、手が離せません。きっとすぐに戻ってくるからと、Kさんは必死に下の子をあやし続けました。



「でもね、結局1時間、帰ってこなかったの。もう、こちらはくたくたで。」



■親として、ここは言っておかないと!次男嫁を叱責したKさん



下の子があきらめて泣き止んだ頃に、次男嫁が上の子を連れて再び現れました。「だいぶ泣いたわよ。」というKさんに、「ご迷惑をかけてすみません。でも、おかげで上の子の機嫌が直りました。」と、笑顔で下の子を受け取る次男嫁。



ホッとした顔になる下の子と次男嫁の笑顔を見たKさんは思ったそうです。「ようやく頼ってくれたのはいいけど、これってどうなの?具合が悪い下の子を放って、1時間も上の子のご機嫌取り。ここは親として、私がきちんと注意しないと。」



そこでKさんは、口を開きました。「あのね、親としてちょっと言わせてもらうけど。この子たち、このままだとろくな育ち方しないと思うわ。」びっくりした顔でKさんを見つめる次男嫁。「下の子の具合が悪いなら、上の子に我慢させるのが常識でしょう。こんなこと続けていると、上の子は我儘放題。下の子は上の子優先のお母さんにあきれて、そのうち道を外すわよ。」最初は何を言われたのかわからないといった様子の次男嫁。



一瞬何かもの言いたげな表情になりましたが、Kさんの強い言葉に、だんだんとうつむきます。その後も続くKさんの叱責を黙って聞いていましたが、しばらくすると、小さな声で「ごめんなさい。」というと、次男嫁はそそくさと2人の子を連れて帰ってしまったそうです。



ちょうどカットが終わり、Kさんに巻いていたケープを回収しながら「それで、次男のお嫁さんとは、仲良くなれましたか?」と聞いてみるSさん。Kさんは答えました。「ちょっとまだぎこちないかしら?やっぱり遠慮して、孫たちを預けてくれないの。ちょっと厳しく言い過ぎたかしら?若い人は難しいわねえ。」



■まとめ



Kさんがお会計を済ませて帰った後、Sさんが席を片付けていると、途中で入ってきて、自分の順番を待っていた初老の女性が話しかけてきました。「今のお客さんの話、すごく考えさせられたわ。私ね、今度結婚する息子がいるの。お嫁さんとのお付き合いは、いろいろ気をつけなくてはいけないことが多そうね。」とぼそり。



嫁姑問題というものは、えてしてどちらかに悪気があるから起こるというものではないのかもしれません。