子供は親の言うことは聞きません。親の思うとおりには動きません。
このことはわかってはいるけど子供を見ているとイライラしてつい口出ししてしまう、怒ってはいけないと思いながら我慢ができずに声を荒げてしまう、どんなに怒ってもしないものだから怒りが止まらなくなる、心当たりのある方は多いのではないでしょうか。
逆に、自発的に行動できる子供の親は比較的おだやか。いつもニコニコしていておおらかな雰囲気が感じられます。ということは、怒っても声を荒げても効果なし。自分の感情をコントロールして語りかけるほうがはるかに効果あります。
そこで今回は、親が威圧的に接して逆効果だった例をあげ、子供がまちがいなく主体的に行動できる言葉がけや環境づくりを提案していきます。
■「力ずく」はいけません!
まず念を押しておきたいのが、親はどうしても子供のことを「上から目線」で見てしまいがちなことです。特に父親の息子に対する姿勢にこの傾向が出ているように思われます。子供は命令口調では動きません。怒鳴り上げても動きません。納得していないからです。特に宿題の場合、したがらない姿を見て怒る、怒られるとますますしない、しないからまた怒る、という負のスパイラルが起こってしまいます。
以前、小学校低学年の男の子の母親についてこのような話がありました。
教育熱心ではあったのですが感情が先走りするタイプで、なかなか宿題をしない子供に対して怒鳴ってさせていたとのこと。話によるとその子は泣き泣き宿題をしたそうです。「ご近所にも怒鳴り声が聞こえていたはず」とその母親が言っていたのを覚えています。
話を聞いて「それはいけませんよ」と言いたかったのですが、それよりもその母親の気持ちを受けとめるべきだと思ってそのときは聞くことに徹しました。ただ言われっぱなしのその子の気持ちを考えると、塾講師としてその子を守ることはできなかったのかと今でも自問自答しています。
さらに言うと、子供を泣かしてまで勉強をさせても何も身に着きません。かえって勉強嫌いが高まるし、最悪の場合「恨み」の感情が出てきかねません。
そのうえ、家庭内の雰囲気も悪くなります。カっとなって勉強させる妻の姿を見るのが嫌だったと夫に言われたと証言した女性もいました。親として大人として、感情はコントロールしないといけません。
■子供は「お客様」!?
それでは、どう対応すればいいのか。
それから「上から目線」になっていないか自分の心理を確認すること。親に一方的におこられると子供はすくんでしまうだけ。「親なんだから」「子供なんだから」という偏見らしきものはなくして話ができるよう心を整えないといけません。
そのうえで子供に頼むような気持で語りかけるのです。「勉強する姿を見たいな」「手伝ってくれたらうれしいな」「宿題やっているときってかっこいい」と言葉をかけてみましょう。「やりなさい」「なんでできないの」と感情的になるよりははるかに子供の心に届きます。子供は「お客様」として眺めてみると子供への愛情や敬意も再確認できるはずです。
仕事でも同じではないかと思われます。
冷静さがなくなると怒ることのみに意識が行き本来の目的を見失ってしまいがち。そうではなく目的は子供に何か行動してもらうことですから、どうすればその気になれるかを落ち着いて考えていきましょう。そこでやってくれたらこっちのもの。子供の目を見ながら考えるのもいいですね。
そして大切なのは、決して「すぐに言うことを聞かせよう」「何が何でも直させよう」と思わないこと。子供は何をするにも時間がかかるしすぐに言うことは聞きません。だけど、いったん納得すればびっくりするような変化を見せます。心身の成長とともに良くなるところもたくさんあります。個人差もありますが、子供の変化を楽しみにしながら待つ姿勢も必要ではないでしょうか。
■おわりに
昔の生徒に信じられない変化を見せた子がいました。
ところが、高校に入ってふとしたときから勉強するようになり成績も常にトップ、最終的に都内の某有名私大に進学したのです。特別なことは何もしていません。ただ、無理強いは避けていつもどおりのことを続けました。簡単なコミュニケーションを取るのにも大変だった幼い頃を知っていますから、その大学に入ったなんて今でも信じられない思いです。
その子の母親もかつては怒って勉強をさせようとした時期はあったようです。だけど、高校生になってからは帰宅後すぐに勉強をするようになったようで、その姿をみて「かえって気持ち悪い」とも言われていました。
もちろん学歴が人生のすべてではありませんが、誰もが想像できないような可能性を人間は秘めています。まずは家族の信頼関係を最優先に子供の変化をエンジョイしてはいかがでしょうか。