■御社のバックオフィスを「最適化」する方法
2019年に施行された働き方改革関連法案ですが、2020年4月からは、大企業のみならず中小企業にも残業規制が適用されています。
新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークやウェブ会議などにいきなり対応する必要に迫られた会社は多く、経営者でそうしたIT活用にお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか? ただ、今、経営において最も速やかにITの力を使うべき分野の一つは「勤怠管理」かもしれません。
この記事では、「IT顧問」として数百社の中小企業でITの導入に携わってきた本間卓哉氏による話題書『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』(クロスメディア・パブリッシング)をもとに、これからの中小企業で「勤怠管理」の問題をどう解決していけばいいのか、またシステムなどITを導入する場合の注意点にはどんなものがあるかについて解説してもらいました。
■勤怠管理ができていないと、何が問題とされるか
2019年4月から、働き方改革に関連して、管理職も含めた「労働時間の客観的な把握」が義務化されています。それまでは、労働基準法に基づく通達で、労働時間の把握は「使用者の責務」として定められていましたが、「使用者の義務」という形で明文化はされていませんでした。
また、この通達は「時間外・休日労働の割増賃金の正確な支払い」が目的であったため、割増賃金の支払義務がない管理職は対象外でした。
しかし、2019年に改正されたのは「労働安全衛生法」で、賃金の支払いではなく「健康管理」が目的です。企業が労働時間を把握して、長時間労働者がいた場合は、医師の面接指導を確実に実施できるようにするための法改正であるので、役員を除く全労働者が対象となっています。これは義務なので、違反した場合は罰則を課せられることもあります。
■労働時間を客観的に把握するには?
厚生労働省のガイドラインでは、次の2つが想定されています。
A:使用者が自ら現認すること
B:タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎とすること
勤怠管理の段階・方法は、大きく、
1.何もしていない
2.出勤簿に手書きまたは押印
3.タイムカード打刻
4.勤怠管理システムを利用したICカード等による打刻
の4つに分けられると思いますが、客観的な記録を残すには、3か4のいずれかを導入することになります。
タイムカードはこれまで多くの会社で導入され、長く勤怠管理の主流となってきた仕組みです。ただ、IT機器が飛躍的に発達している現代においては、ムダの多い管理方法でもあります。
▼タイムカードのデメリット
・集計に膨大な時間がかかる
・カードの保管に場所を取ってしまう
・他の人が打刻できるため、不正打刻が防げない
・給与計算や給与ソフトに手打ちで対応するため、ミス発生が防げない
▼タイムカードでは対応が難しいこと
・多様化した在宅勤務等の就業ルールに対応できない
・社員の勤務時間をリアルタイムに確認できない(クラウド勤怠管理システムなら確認可能)
・社外での打刻(研修や直行直帰など)に対応できない
・給与計算ソフトとのスムーズな連携が難しい
■入力して紙で打ち出したものに記入してそれをまた入力するムダ
勤怠管理は全企業に必須のものとなり、紙のタイムカードや手書き・押印での管理のデメリットを踏まえると、ITの活用はぜひおすすめしたいところです。前置きが長くなりましたが、アナログな勤怠管理の問題点は次の3つです。
問題点(1) 紙のタイムカード等は集計に時間がかかり、労働時間等も適時に把握できない
問題点(2) 有給申請や遅刻・早退・残業などの承認業務に時間がかかる
問題点(3) 社員の不手際や不正が起こる可能性がある
(1)の前半は「紙のタイムカードやエクセルでは集計に時間がかかる」という点を指しますが、これについての懸念は、1カ月分の集計を締め後にまとめて行っている企業が多いため、打刻漏れ・打刻ミス、予定していた時間とは違う打刻の差異の原因を探るための時間がかかるなど、手間だけではなく、「1カ月分をまとめて集計するがゆえのリスク」も生じてしまうことです。
また、(1)の後半については、出勤状況や労働時間がタイムリーに把握できないという点を指しています。「集計が遅くなること」によって、たびたび「1カ月の総残業時間を、集計後でしか把握できない」という事態が発生し、後手の対応になってしまいます(別画像参照)。

社員が手作業で行う勤怠管理にある「ムダ」や「ミスが起こる素地」
(2)については、そもそも従業員の有給休暇について把握できていない企業が多くみられます。2019年4月の労働基準法改正で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年5日は使用者が時季を指定し有給を取得させることが全企業に義務づけられました。
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■「勤怠管理システム」が必須な時代に
これまで勤怠管理ができていなかった企業が、いきなり従業員の労働日数や時間を正確に把握し、有給取得状況や残日数をきちんと記録・管理できるようになるのは難しいかもしれません。そこで活躍するのが、それらを自動で計算・管理することができる勤怠管理システムです。また、有給休暇の情報は把握できている企業であっても、ワークフローがシステム化されていないと、申請や承認に手間がかかります。
有給休暇に限らず、遅刻や早退に伴う勤務時間の修正、残業の申請などは、申請者にも手間がかかり、承認する上長にとっても面倒な作業です。
そして(3)の「社員の不手際や不正が起こる可能性がある」ことです。出勤簿やエクセルへの記入では、ミスを完全には防げません。ミスが発生した場合に、書類を受け取った人事担当者が気づいて修正するのにも大きく手間がかかります。また、残念ながら、従業員が意図的に労働時間を長く書く不正を行うケースもあります。

筆者の本間卓哉氏の著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
■今年から中小企業でも始まる残業規制
さらに、前述したように、大企業には適用済の残業規制が、2020年4月から中小企業にも適用されています。時間外労働の上限を守らない使用者には、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課せられてしまいます。たとえば本来なら、ギリギリ上限内の残業時間に収まった従業員がいたとします。しかし、その従業員が記入ミスをしたり、不正を試みたりした結果、数字上の残業時間が上限を超えてしまう可能性すらあるのです。これは会社にとっても大きなマイナスです。
(1)「紙のタイムカード等は集計に時間がかかり、労働時間等も適時に把握できない」の解決方法
システム化による間接コスト削減効果は、非常に大きなものがあります。
(2)「有給申請や遅刻・早退・残業などの承認業務に時間がかかる」の解決方法
システム上のワークフローによって、有給や残業などの申請・承認はPC上やスマートフォン上で可能となります。書類の作成・提出の手間、承認する上長の手間が減ります。有給の残日数や残業時間もタイムリーに確認できるため、一定の残業時間を超えた従業員がわかるアラート機能もあります。
(3)「社員の不手際や不正が起こる可能性がある」の解決方法
システム上の時間を変えられるクラッカーによる攻撃など、特殊な状況を除けば、記入ミスや集計ミスは起こりません。不正打刻もほぼ根絶できます。
以上のことからも、勤怠管理システムを導入することは、今後を考えた場合に検討すべき点のひとつと言えるでしょう。
■ 本間 卓哉(ほんま・たくや)
1981年秋田県生まれ。一般社団法人IT顧問化協会 代表理事、株式会社IT経営ワークス 代表取締役、株式会社DXソリューション 代表取締役。中小企業に向けて、適切なITツールの選定から導入・サポート、ウェブマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に数多くの企業で業務効率化と売上アップを実現。2015年にIT顧問化協会(eCIO)を発足。
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