40代・50代にもなると、部長や役員などのポストに就いている人も少なくないでしょう。管理職や役員になっている人は、その能力が会社に評価されていまのポジションにいるはずです。



そうした人たちはどのように自分を成長させ、今のキャリアを築いてきたのでしょうか。今回は、40代・50代の管理職・役員の方たちに「自分のキャリアに役立った経験」について聞いてみました。



■若い頃の激務、徹夜の日々



現在40代、金融機関で部長職として働くAさんは「20代のときの激務があったからこそ、今の自分がある」と話します。



「自分らが若い頃にはまだまだ残業規制とか厳しくなかったから、とにかく徹夜や深夜残業が当たり前。あのときにがむしゃらに働いたから今のポジションにいられると思う。あの頃は何もわからなくて、とにかく手と足を動かす必要があったし、時間をかけないとどうにもこうにも成果が出ない。逆を言えば、能力の低い人間でも長い時間をかけることが許されていた」と語ります。



「あの頃にはあの頃の成果の出し方があったけれど、今は時間をかけるという裏技が使えないから、成果を出そうと思うとスキルと効率を上げるしかない。それはそれで苦しいし大変だけど、そういう時代だからやるしかないよな」と今の若者たちの働き方にも言及していました。



今は残業が多いと怒られるとか、残業が多い部下がいると上司が改善報告書を出さなければならないなどのルールがある会社も少なくありません。Aさんの言う通り、時間をかけて成果を出すことができた時代をいいと思うか、成果を出しさえできれば残業する必要のない時代をいいと思うかは人それぞれでしょう。



Aさんも「今の自分があるのはあの頃のおかげだと思っているけれど、決して今の人にあのやり方は勧めない。

あの頃には犠牲も多かった」と苦笑いしていました。



■大学で研究に没頭した経験



IT関連企業で役員として働く50代のBさんは、「大学で仲間と研究に没頭した経験が自分の人生を大きく変えたと思う」と話します。



「正直言って、小学生から高校生まで挫折を味わうことがほとんどなかった。ところが、大学では自分よりはるかに優秀な人間がたくさんいて、挫折というよりも焦燥感と絶望で頭がおかしくなりそうだった」のだそう。Bさんの出身大学は超有名大学。そんな中で「優秀だった自分」が「平凡な自分」になっていくのを感じたと言います。



そこで、「自分よりもはるかに優秀で志も高い人間を見て、『オレは何をやってるんだ。コイツよりも勉強しないと差が広がるばかりだ』と気持ちを切り替えた。すると好奇心が体の奥底から湧き出てくるような気持ちになり、毎日研究室に行くのが楽しい。深夜まで実験するのも楽しい。徹夜でも楽しい。そんな日々の経験が今の自分を作ったと思う」と話します。



Bさんは大学に進学させてくれた親への感謝の気持ちも同時に聞かせてくれました。何かに没頭した経験というのは、その後の人生においても非常に有意義なもののようです。



■学生時代の海外一人旅でのヤバい経験



「学生時代、日本人があまり行かない地域に一人旅に出たことがあった。あれは本当につらかったけど、あれほどの絶望感を味わっておけばあとはどうにでもなる」と話してくれたのは、金融機関で部長職として働く40代のCさんです。



「そこは英語が通じないところだったけれど、ちょっとよさそうな観光地がありそうだと軽い気持ちでバスに乗った。しばらく経ったときに、何やら自分のことを糾弾してくる乗客がいることに気が付いた。こちらを指さして、怒っているのか何かを訴えているのかわからないけれど、歓迎されていない感じだけはよくわかった」のだそう。



「結果的に、理由もよくわからないままバスを降ろされ、そこから歩くことに。よくわからない軍事拠点みたいなのも見えて、『ココ、もしかして国境近くなのかな? 勘違いされて撃たれないかな?』と心配したし、お腹もすいて足も痛い。歩いても歩いても何もないまま日が暮れてきたときの絶望感はすごかった」と当時のことを振り返ります。



「歩き続けてもう死にそう、このままだとヤバい…というときに人里に着いて何とか生きて帰って来られたけれど、あんな経験を味わっていれば、99%のことは何とかなる」と笑いながら教えてくれました。海外一人旅は勇気が必要ですが、自分だけでなんとかトラブルを切り抜けた経験をすると強くなれるのでしょう。



■子育てを経験したらマネジメントが楽になった!?



最後は、「子育てを経験したら、マネジメントが辛いとか部下が使えないとか言えなくなる」と語るメーカー勤務の管理職、40代のDさんです。



「子どもの相手をしていると、部下をサポートするのがたやすく思えてくる。『何か困ったことがある?』『なんでこうしたの?』って聞いたら答えてくれるし、教えたことは基本的に覚えてくれるし、わからなければ聞いてきてくれる。でも、赤ん坊は問答無用で泣くし、モノは投げるし、何でも拾って口に入れる。しかも放っておけば死んでしまうかもしれないという恐怖が常に付きまとう。あの子育ての緊張感を味わっている全国のお母さんは本当にすごいと思う」と笑います。



「そんな子育ての経験を通して周囲に優しくなれた。結果、部下にも『Dさんのおかげで成長できました』と言ってもらえるようになったと思う。今でも帰宅後に子どもの相手をする1~2時間の間に色々なことが起きる。それに比べれば、会社のマネジメントはまだ楽かも」と教えてくれました。



小さい子どもはある意味、理不尽です。そんな子どもの世話をしていると、部下や後輩に寛容になれるのかもしれません。



■おわりに



とにかくいろんな経験をしてみるというのは、人間の幅を広げるだけでなく、キャリアの幅を広げることにもなりそうです。ぜひ臆することなくいろんなことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



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