■~「国民年金」と「厚生年金」でルールが違う~



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いまだ終息の兆しが見えないコロナ禍。たいせつな人との「突然の別れ」は、もはやすべての私たちにとって、無関係ではないことといえるでしょう。



一家を支えている人が亡くなった場合、その人によって生計が維持されていた遺族には遺族年金が支給されます。遺族年金には国民年金の「遺族基礎年金」と厚生年金保険の「遺族厚生年金」がありますが、支給の要件に違いがあります。



どんなときに誰に支給されるのか、遺族年金のしくみとルールについて解説します。



■どうちがう?「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」



死亡した人が国民年金の被保険者であれば遺族基礎年金が、厚生年金保険の被保険者であれば「遺族厚生年金」または「遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方」が遺族に支給されます。



遺族年金の「支給要件」は?

【表1】遺族年金の支給要件をごらんください。



遺族年金「どんなとき、誰に支給されるのか」

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国民年金、厚生年金ともに被保険者であるうちに死亡した場合、または、それぞれの年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間を合算して25年以上)であれば、支給を受けることができます。ただし、被保険者であっても、加入期間のうち3分の2以上保険料を納めていないと支給を受けられません。(※保険料納付要件)



しかしこれについては、65歳未満であれば、直近の1年間に保険料の滞納がなければ受けられる特例があります。



遺族厚生年金はさらに、被保険者期間中の傷病がもとで5年以内に亡くなった場合(※保険料納付要件あり)、1級・2級の障害厚生年金の受給権者が亡くなった場合も支給を受けることができます。



遺族年金の「支給対象者」は?

誰が遺族年金が受け取れるかは、遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なります。遺族年金の支給対象者についてまとめた【表2】をごらんください。



遺族年金「どんなとき、誰に支給されるのか」

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遺族基礎年金も遺族厚生年金も、死亡した者によって生計が維持されていたことが第一条件です。遺族基礎年金は子のある配偶者または子となっており、子のない妻や夫は受給できません。



遺族厚生年金の場合は、子のない妻も受給できますが、30歳未満の妻の場合は5年間しか支給されません。

また夫の場合は、55歳以上という条件に加えて遺族基礎年金を受給中という条件があります。つまり子がいないと夫の場合は受給ができません。



遺族厚生年金は受給資格順位というものがあり、もっとも順位が高い人だけが受給できます。



◆遺族厚生年金の受給資格順位◆



  • 配偶者および子
  • 父母
  • 祖父母
  • 遺族年金の「年金額」は?

    次は、【表3】より、遺族年金の年金額がどのくらいかを見ていきます。



    遺族年金「どんなとき、誰に支給されるのか」

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    遺族基礎年金の場合、例えば、妻と子(2人)がいる場合は、
    78万900円+22万4700円+22万4700円=123万300円
    123万300円全額が妻に支給されます。



    遺族厚生年金の場合は報酬比例の額の4分の3が支給されますが、老齢厚生年金の受給資格期間の25年(300ヵ月)に満たない場合は、300ヵ月とみなして計算するので、被保険者期間が短い場合でも一定の金額は保障されます。



    ■遺族厚生年金の中高齢寡婦加算



    遺族厚生年金には中高齢寡婦加算という加算給付があります。【表4】の条件に当てはまる場合に、遺族の妻が40歳から65歳になるまでの期間、中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。



    遺族年金「どんなとき、誰に支給されるのか」

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    遺族厚生年金の中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金が支給されている間は加算されません。



    そのため、もともと遺族基礎年金を受給できない子がいない妻か、子がいて遺族基礎年金を受給していたけれど、子が18歳に達したために遺族基礎年金の受給がなくなった場合に、要件を満たしていれば、中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。



    ■両方の遺族年金を受給できるケース



    最後に「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」両方の遺族年金を受給できるケースを見てみましょう。



    日本の年金制度は「2階建て」と言われますが、遺族年金についても、遺族基礎年金が1階部分、遺族厚生年金が2階部分に例えられます。



    厚生年金保険の保険料は国民年金の保険料も含まれているため、基本、遺族厚生年金の支給要件を満たしていれば、遺族基礎年金の支給要件も満たすことになります。



    しかし、支給を受けられる対象者が、遺族基礎年金の方が限られているため、遺族厚生年金だけ受給するケースも多くなります。両方の遺族年金を受給できるケースは遺族厚生年金の支給要件を満たし、遺族基礎年金の対象者に当てはまるケースといえるでしょう。



    また、両方の遺族年金の受給権を持つ子のある妻が、子が18歳到達年度の末日を達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)ことで遺族基礎年金の受給権を失った場合に、40歳以上65歳未満であれば遺族厚生年金の中高齢寡婦加算を受けることができます。



    ■さいごに



    このように、遺族年金は亡くなった人の年金の納付状況、受給者の続柄や年齢、子の有無などによって、受け取ることができる年金が異なってきますので、支給要件や対象者などをしっかりと把握しておきましょう。



    参考資料

    • 日本年金機構「遺族年金」( https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-03.html )
    • 日本年金機構「遺族年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」( https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/index.html )
    • 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和3年度版」( https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf )
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