とうとう8月5日に東京都内の新型コロナ感染者は5000人を突破してしまいました。一体どこまで増えるのでしょうか。
今回は、そんな状況下で憧れてしまう「ワーケーション」という働き方の紹介と、注目を浴びながらもワーケーションがブレイクしなかった理由を考えてみます。
■リゾート地や観光地で働きながら休暇を
ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語です。普段の職場と異なるリゾート地や観光地で働きながら休暇を取るスタイルですね。
つまりノートPCやスマートフォンなどを利用して、場所にとらわれずに仕事を行うスタイルです。ワーケーションはノートPCやインターネットが急速に普及した2000年代から、アメリカで始まった働き方とされています。日本でも、2017年に日本航空がワーケーションを導入したとして大きな話題を呼びました。
カンタンに言うとテレワークをリゾート地で行いつつ、休暇を取るイメージでしょうか。特に夏にはピッタリですし、とても憧れてしまいますよね。
■昨夏は“ワーケーション旋風"の予感が
日本におけるワーケーションは、昨年2020年7月27日、当時の菅義偉内閣官房長官が「観光戦略実行推進会議」で言及し、観光庁、環境省がワーケーションを新たな旅行スタイルとして推進することで注目を集めました。
この時の「観光戦略実行推進会議」では「Go Toキャンペーンをうまく活用してほしい」等も大きく取り上げられていました。
実際、昨年の夏はワーケーションというワードがブレイクしそうな予感もちょっとあったのですが。
さらに、ワーケーションに関する実証実験データなども発表されました。これは昨年7月にNTTデータ経営研究所他が発表したもので、「ワーケーション実施中は仕事のパフォーマンスが20.7%上昇」「ワーケーションは仕事のストレスを37.3%低減」などの結果が報告されました。
「これはワーケーション旋風が来るぞ!」「来年の夏はワーケーションだ!」と自分などは小躍りしたものですが。
■結局、ワーケーションは幻のキーワードに
大ブレイクの予感もしたワーケーションですが、結局のところ、残念な結果となってしまいました。昨年秋に民間のIT企業(株式会社インフォリッチ)がテレワーク者1000人に実施したアンケート調査では、「ワーケーションに興味ありは62%」しかし「ワーケーション体験者は5%」という結果でした。
実施できない理由として最も多いのは「お金がかかる」、次いで「旅行に行くなら休みたい」「仕事と休暇のメリハリをつけたい」「会社の仕組み上、実施が難しい」など、興味があっても実施するにはハードルが高いというのが現状でした。
日本ではワーケーションなどという“優雅な働き方"は絵に描いた餅だったいうことかもしれませんね。そもそも決してIT先進国ではないためインフラの問題もありますし、日本の経営者のマインドは“仕事と遊びを一緒にするな"みたいなところにありますし。
結局のところ、ワーケーションは日本政府が「Go Toキャンペーン」などとの関連も含めて、“世界で行われているし、日本でもひとつやってみるか!"という発想で始めて、アイデア倒れになってしまった、ということだと思います。
■閉塞感いっぱいの夏がやってきた
8月1日に、全国知事会は都道府県境をまたぐ夏休みの旅行や移動について、「原則中止・延期」を国民に呼びかけるよう、政府に求める緊急提言をまとめました。
最後に、私たちの新型コロナウイルスとの“つきあい"も、もう足掛け2年ですから、いままでの経緯を少し振り返ってみます。結局、政府がワーケーションをブチ上げたのも、「Go Toキャンペーン」との関連ありきだったと思います。
昨年秋の日本政府は「Go Toキャンペーン」実施からも、大筋では人流抑制という戦略を採っていませんでした。“Go To トラベルと感染拡大の因果関係は証明できない"という政府コメントもありましたしね。
個人的には政府が人流抑制に舵を切ったのは今年からだと思います。しかし、それがなぜなのか。“Go To キャンペーンは失敗だった"という反省があるのか。あるいは“感染状況が変わった"という判断があるのか。やはり、根本的に説明不足だとは感じます。
この辺から“すべては五輪のためだ"というような誤解(?)も生じてくるのだと思います。説明不足のあげく「危機意識の共有が重要と言われてもなぁ」というのが正直なところですよね。
結局、閉塞感だけが高まってくる。もう今年の夏は、手軽な“ご近所ワーケーション"でもやってみるかなと、そんな感じの今日この頃でした。
参考資料
- ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験を実施( https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/200727.html )(2020年7月27日、株式会社NTTデータ経営研究所/株式会社JTB/日本航空株式会社)