金融庁の開示による直近のデータによればつみたてNISAの口座数は2021年6月末時点で417万口座を超え、1年前の2020年6月末時点の244万口座から大きく増加し、今後もさらに増加していく可能性は高い。



つみたて投資層に圧倒的な人気を誇るつみたてNISA。

金融庁が管轄の非課税枠のある投資制度で安心感もあるが、制度である以上その使い方には注意点がある。今回はその注意点とともに資産形成するうえで注意すべき点についてまとめておきたい。



■つみたてNISAは利益確定するタイミングが重要



つみたてNISAの非課税期間は20年となっている。この間に投資した金額よりも増やして、利益を確定しても、その含み益などに課税されないというのがつみたてNISAの最大のメリットである。



これは裏を返せば、売却のタイミングが重要ということである。



こういうと「20年も投資していればさすがにタイミングなんて選ばなくても含み益になっているだろう」という方もいると思う。



しかし、思い出してほしいのが、過去のITバブル(ドットコムバブル)崩壊やリーマンショックなどのパニック的な売りの局面である。余談だが、海外ではリーマンショックとは呼ばずに、Great Recession(グレート・リセッション)やGlobal Financial Crisis(グローバル・ファイナンシャル・クライシス)などと呼ぶ。



こうした株式市場の調整局面は高値から底値に至るまでに1年半から2年近くの時間を要した。その間に株価は約半分程度まで下落した記録を持つ。1年以上の時間をかけながら株価が半分になるというのは投資家として心穏やかに過ごせるという人もそう多くはないであろう。



■意外に多い株式市場のパニック的な売り



もっと厄介なのが、こうしたパニック的な株式市場の調整局面が10年に1度くらいの頻度起こる可能性があるということである。

ITバブル崩壊とリーマンショックの時期を思い出せいただければお分かりであろう。そうした状況に陥るときにメディアでは「100年に1度」といったフレーズが使われるが、実際は10-20年に一度くらいは起きている点には注意が必要である。



こう考えると、つみたて投資で含み益があっても、やはり売却タイミングを20年以内に注意深く見守って、しっかり売却してやる必要がある。これはなかなか投資初心者にとっては難しい行動だ。投資の原則は自分に投資の期限を決めないということがあるのだが、つみたてNISAの非課税期間だけを意識するとこの点は難しい。



■つみたて投資は毎月投資できるという前提



つみたて投資は、小額から、無理なく始められるというメリットがある一方、長期間にわたって継続投資ができてはじめて成立する投資である。



つみたてNISAをはじめて最大限続けて最後までつみたて投資をすると何年間つみたて投資をしていることになるだろうか。



答えは、39年間である。



この間、つみたて投資を続けるのである。20代で始めれば定年過ぎまでという感覚かもしれないが、現在40代だとすると場合によっては80歳を超えるかもしれない。



こうした年齢になってまで毎月つみたて投資をし続けられていると自信がある割合はどれくらいなのであろうか。



資金的な工面もさることながら、健康状態や就業状態でも個人ごと世帯ごとに状況は変わっていてもおかしくはない。

今回のコロナ禍で収入が減って、毎月のつみたて投資を継続できなくなったという人もいるのではないだろうか。



つみたて投資は小額の投資でも複利の効果で資産を増やすということが前提となっている。したがって、途中で投資が止まってしまうと、その効果は落ちてしまう。ところが、当然といえば当然なのだが、つみたてNISAは投資における非課税枠のある制度であって、収入や万が一のための保障のあるものではない。この点は投資だけに興味が行ってしまうと見落とされやすい点となる。



■つみたてNISAを始める前に



ここまで見てきたように、つみたてNISAは小額から投資をはじめたい投資家、資産形成層にとってはありがたい制度である。



その一方で、売却タイミングやつみたて投資の継続性の担保、万が一の時の保障の確保なども含めて意識して始めたいところだ。



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