「ピクミン3デラックス」等に代表されるピクミンシリーズは、単体では小さくかよわい、妖精のようなキャラクターであるピクミン達に指示を出したり、群れを誘導したりして、惑星からの脱出などの目的を達成するゲームです。



基本的にはNintendo Switchなど、任天堂が販売しているゲーム用ハードウェアで遊ぶものです。



しかし、2021年11月1日に配信開始されたシリーズ最新作である「ピクミンブルーム(Pikmin Bloom)」は、歩数をカウントすることでピクミンを育てるのを基本としたスマートフォンアプリとなっており、運営元もNiantic社です。



このNiantic社というのは6年ほど前に社会現象となった「ポケモンGO」(2016年7月配信開始)の運営元でもあります。



今回はこのような形式でピクミンシリーズの新作ゲームを出した理由を考察しました。



■ピクミン最新作を「ポケモンGO」に近いゲームにした理由



まず、ポケモンGO自体の浸透力が強かったことが理由の一つと考えられます。ポケモンGOはリリース直後にいくつかのギネス記録を打ち立てました。



  • 初月で最も収益を上げたモバイルゲーム|Most revenue grossed by a mobile game in its first month
  • 初月で最も多くダウンロードチャートされたモバイルゲーム|Most downloaded mobile game in its first month
  • 初月のダウンロード数ランキングで首位となった最多国数(ダウンロード数)|Most international charts topped simultaneously for a mobile game in its first month (downloads)
  • 初月モバイルゲームで売上チャート1位を獲得した最多国数(収益)|Most international charts topped simultaneously for a mobile game in its first month (revenue)
  • 最も早く売上高1億ドル(約100億円)に到達したモバイルゲーム|Fastest time to gross $100 million by a mobile game

2016年頃になると、一時期のmobageやGREEなどのソーシャルゲームの勢いは落ち着いてきており、「スマートフォンゲームはゲーム好きの人が遊ぶもの」という位置づけが定着していたころです。



しかし、ポケモンGOだけは別格で、普段ゲームを遊びそうにないサラリーマンもこぞって遊んでいる光景を見かけたのが印象的です。



ゲームとしても、シンプルながら「AR(拡張現実)」技術をうまく使っており、「日常の風景の中でポケモンが登場する」という体験も新しいものでした。



私自身も日本版リリース直後に撮影機能などで楽しく遊び、しばらくは通勤の行き帰りでスマートフォンを見つめながら歩いていたこともありました。



現在、ポケモンGOは累計10億ダウンロードを達成していることがアプリダウンロードページに記載されています。



2020年時点での世界人口が77億9500万ほどなので、単純計算でも世界で12.8%程の人がポケモンGOで遊んだことになるのです。



一方、ピクミンシリーズでNintendo Switchにおける最新作の「ピクミン3 デラックス」の初速(発売から2週間の累計売上本数)はファミ通調べによると、23万9274本でした。



もちろん、「2週連続首位」とのことで、商業的には健闘していますし、買い切りゲームと基本プレイ無料のアプリとの単純比較は難しい前提ではあるのですが、ポケモンGOのリリース1ヶ月後のダウンロード数が「1.3億回」であることに比べると、物足りない印象は否めません。



したがって、今までのピクミンシリーズの延長線ではなく、多くの一般ユーザーに届くポテンシャルを持つゲームである「ポケモンGO」の要素を活かすことで「できる限り多くの人に『ピクミン』を浸透させる」という狙いは妥当な考え方だと感じます。



■「ピクミンブルーム」はゲームというより「動きが豊かな日記アプリ」



なお、ポケモンGOはあくまでも「ポケモンを捕まえて、育てて、バトルする」という、ポケモンのゲームの核を守りながら「歩く」という要素を足しています。



一方、「ピクミンブルーム」はピクミンシリーズのゲーム性の核である「ピクミンの群れを指揮してアクションする」要素はほとんどありません。



かろうじてピクミンを育てる要素が残っている程度になっています。



逆に「ピクミンブルーム」で強化されているのは、「歩いた結果」のライフログを楽しく表示する機能です。



その日に撮影した写真から、何らかのロジックで1枚選びだして、登録するという機能が追加されているのです。



「ピクミンブルーム」のアプリトップのUIも、ゲームアプリというよりは「便利な実用アプリ」という趣で、ボタンの押しやすさ重視になっています。



したがって、「ピクミンブルーム」は「ピクミンなどの動きや、歩いた軌跡に花が咲く演出や、ライフログ機能」によって「歩いた結果を楽しく記録する」ことを主目的としたアプリだと言えるのです。



この試みが市場に受け入れられるかどうか、今後が気になります。



■参考資料



  • 任天堂株式会社「歩いて増やす、歩いて咲かせる、歩いてのこす。『Pikmin Bloom(ピクミン ブルーム)』配信開始。」( https://topics.nintendo.co.jp/article/4b359e3f-70bb-46c8-8670-591e461684d6 )
  • 「ピクミンブルーム」ダウンロードページ(iOS)( https://apps.apple.com/app/id1556357398 )
  • 「ピクミンブルーム」公式サイト( https://pikminbloom.com/ja/ )
  • ギネス「『ポケモンGo』認定された5つのギネス世界記録と『ポケモン』の記録」( https://www.guinnessworldrecords.jp/news/2016/8/pokemon-go-catches-five-world-records-439327 )
  • 「Pokémon GO」ダウンロードページ(iOS)( https://apps.apple.com/jp/app/pok%C3%A9mon-go/id1094591345 )
  • 総務省統計局「世界の統計2021」( https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2021al.pdf )
  • ファミ通.com「【ソフト&ハード週間販売数】『ピクミン3 デラックス』が2週連続で首位に。
    『ポケモン』『シャドウバース』も好セールスを記録【11/2~11/8】」(2020年11月12日)( https://www.famitsu.com/news/202011/12209360.html )