新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。中小企業庁が公表している「2021年版中小企業白書・小規模企業白書概要」によると、直近の倒産件数は減少傾向にあり、新型コロナウイルス感染症が流行する中でも2020年は7773件と低水準を維持しています。



一方で、新型コロナウイルス感染症流行による企業活動への「影響が継続している」と回答した中小企業は全体の71.3%となり、金融支援の拡大や政府からの給付金でなんとか乗り切れているものの、新型コロナウイルス感染症によって依然として経営状況が厳しいと感じている中小企業も多いようです。



今回は、「うまくいく中小企業経営者」と「うまくいかない中小企業経営者」の違いについて、3人の中小企業経営者に話を聞きました。



■社員のモチベーションをいかにして上げるかがポイント



「中小企業にとっては、数が多くない社員たちがいかに気分よく、モチベーション高く働けるかが本当に大事」と話すのは、メディア運営の会社を立ち上げた40代のAさんです。



「『社員が宝』みたいに言うとベンチャー企業のギラギラした社長が…と思われるかもしれないが、実際に中小企業では社員数が少ない分、社員一人の頑張りが収益を大きく押し上げることもある。だから、社員に心地よく働いてもらったり、この会社では自分はとても高く評価されていると感じてもらったりして、モチベーション高く働いてもらうことがとても重要」と語ります。



さらに中小企業ならではの事情もあるようで「中小企業は社員数が少なく、社員同士の付き合いも割と濃いので、一人でも会社に不満があってそれを口に出すようになると、ほかの社員にもその不満が伝播する。

そうなると崩れるのも早く、正直退職する人を引き留めるために出せる給料の上乗せ分も限られている。



だから、社員が気分よく働けて、『給料は大企業には劣るけど、全体的には満足だな』と思ってもらえるような環境を整えることが大事」と話してくれました。



たしかに社員数が少ないと付き合いも濃くなりますし、誰かの愚痴や不満は社内全体に広がると跳ね退けるのも大変ですよね。



■ブレない大きな柱を自分の中に持つことが大事



「小さな会社だと方針がブレたら終わり。社員を混乱させ、お客さんを混乱させ、取引先も混乱させてしまうから」と話すのは、電子機器部品メーカーを経営している50代のBさんです。



「会社として大事にしたいものは何か、と聞かれたら社員の誰もが同じことを言えるくらいに、会社の大方針を固めておくことがすごく大切だと感じている。

同業他社で経営者が変わったと同時に、方針を大きく転換した会社があった。



今までは高くても高品質なものを、というやり方だったのに、安価なものを大量生産して営業をかけるということも始めた。でも、そういうものを売ってきた営業マンもいないし、そういうものを売るノウハウもない。こだわりをもって仕事をしてきた職人たちも、コストと工数が見合わないからと十分な仕事をできなくて不満を持つようになった」と、同業他社での事例を教えてくれました。



「しかも、今までは多少高いけど絶対良いモノをそろえたいっていうならあの会社だよね、というブランドイメージがあったのに、中途半端にそれが崩れてしまった。信頼して購入したのにモノがよくない、というように…。



取引先にとっては、会社が『高品質なモノ』として作っているものと『大量生産して安価で買えるモノ』として作っているものの見分けがつかないから、結果としてうまくいかなかったんじゃないか」と話してくれました。



■社員に任せることも一つのカギに



最後は、プログラミング学習支援サポート事業を展開する40代のCさんです。



「うちみたいなベンチャー企業には、やりがいを求めてやってくる社員が多い。今までは大企業で働いてきたけど自分の権限が少なくて、決裁も遅い。自分に任されている仕事の裁量が小さすぎて自分の能力が発揮できないから、もっと身動きがとりやすいベンチャーや中小企業で自分のスキルを発揮したい…とやってくる社員ばかり。そういう優秀な社員がいるので、思い切って任せてみる。

そのほうが彼らはやる気になる」と話します。



さらに「社長としてやるべきことは『社員が働きやすい環境を整えること、社長として判断すること、会社の顔としていい印象を作ること』この3つだと思っている。この3つに全力投球すれば、現場のほうは優秀で意欲のある社員がやってくれる。



社員にあえて現場を任せておいて、『この社長はしょうがないなあ、自分がやってやるよ』くらいに思ってくれるくらいのほうがちょうどいい。社長が幅を利かせたり、現場に出しゃばったりするのは違うと思う。社員に任せられる社長じゃないとうまくいかないんじゃないかな」と話してくれました。



■まとめにかえて



今回は3人の経営者に話を聞いてみました。うまく会社を経営できる社長として、社員が心地よく働ける環境を整えること、ブレない大方針を決めること、社員に任せること、が挙げられました。一方で、現場に出しゃばったり、社長が何もかもを決めたりしていると社員も不満が溜まったり、やる気をなくしてしまうようです。



経営者として働くのは大変なことですが、うまく力を抜いて働ける人が向いているのかもしれませんね。



■参考資料



  • 2021年版「中小企業白書」「小規模企業白書」/中小企業庁( https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/index.html )