■就職氷河期世代の初職の雇用形態とは
文部科学省と厚生労働省が2022年3月大学等卒業予定者の就職状況を調査したところ、2022年4月1日現在で大学生の就職率は95.8%(前年同期比0.2ポイント低下)でした(2022年5月20日公表)。
コロナ禍の影響により、2021年は前年同期比で2.0ポイント低下しましたが、2022年も回復しませんでした。
景気や社会情勢等に左右されやすい就職活動。新型コロナウイルスの感染拡大だけでなく、過去にはバブル崩壊やリーマンショックなどの影響が就職活動にも及んでいます。
特に今の40代の方は「就職氷河期世代」と言われています。
今回はその就職氷河期世代に視点をあてて、初職の雇用形態や貯蓄、結婚しない理由まで見ていきます。
■「就職氷河期世代」とは。初職の雇用形態も確認
「就職氷河期世代」とは、90年代のバブル崩壊後に就職活動 を行った世代で、大卒でも正規雇用に就くことが難しかった世代です。
就職氷河期世代をいつからいつまでとするかは諸説ありますが、今回は内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」を参考にみていきます。
同調査では昭和50(1975)年~昭和59(1984)年に生まれ、令和3(2021)年調査時点で37~46歳の人を「就職氷河期コア世代」とし、その前後の世代と比較しています。
まずは就職氷河期世代の初めて就いた職業の雇用形態を確認しましょう。

出典:内閣府「男女共同参画白書 令和4年版 特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」
※「就職氷河期コア世代」:昭和50(1975)年~昭和59(1984)年生まれ=令和3(2021)年調査時点37歳~46歳
※「就職氷河期コア世代より若い世代」:昭和60(1985)年生まれ以降=令和3(2021)年調査時点20歳~36歳
※「就職氷河期コア世代より上の世代」:昭和49(1974)年生まれより前=令和3(2021)年調査時点47歳~69歳
上記によると「就職氷河期コア世代より上の世代」では男性の88.0%、女性の79.5%が初職で正規雇用に就いています。
一方で「就職氷河期コア世代」は男性で正規雇用が76.9%、非正規雇用が18.1%。女性は正規雇用が66.2%、非正規雇用が30.8%にもなります。
「就職氷河期コア世代より若い世代」も「就職氷河期コア世代」と同程度となっており、現代の就職活動の難しさがうかがえます。
■就職氷河期世代「40代の貯蓄」はいくらか【夫婦・おひとりさま別】
就職氷河期世代は40代となっており、ご家庭をお持ちの方は教育費や住宅ローンなどを抱え、あわせて老後資金の準備をはじめる年代となっています。
彼らの平均的な貯蓄額について、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」から見ていきましょう。
■40代・二人以上世帯の貯蓄

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」を元にLIMO編集部作成
- 平均:916万円
- 中央値:300万円
二人以上世帯の貯蓄平均は916万円。ただ平均は一部の富裕層の引っ張られるため、中央値をみると300万円でした。上記の分布をみると、4世帯に1世帯が貯蓄ゼロとなっています。
■40代・単身世帯の貯蓄

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」を元にLIMO編集部作成
- 平均:818万円
- 中央値:92万円
単身世帯の貯蓄の中央値は92万円までに下がります。
また、3人に1人は貯蓄ゼロという結果に。およそ半分は貯蓄100万円未満です。
40代は老後に向けた貯蓄も備えていきたい年代ですが、貯蓄がない世帯も珍しくありませんでした。
■結婚したいと思わない理由「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」男性の5割
単身世帯の貯蓄も見ましたが、経済的な理由で結婚しない方が多いと言われているのも就職氷河期世代です。
先ほどの内閣府の調査より、独身者が今後積極的に結婚したいと思わない理由のうち、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」を 見ると、「就職氷河期コア世代」は男女ともに「当てはまる」もしくは「やや当てはまる」 と回答した割合が高くなっていました。

出典:内閣府「男女共同参画白書 令和4年版 特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」
特に男性では「就職氷河期コア世代」の5割近くが「当てはまる」「やや当てはまる」 と答えています。
共働きが主流とはいえ、育児や介護などで働き方をセーブする人はまだ多いのが現状です。
住宅ローンに教育費がかかり、さらに現代は老後資金の備えが必要なことを考えると、経済的に考えて結婚に二の足を踏む人がいるのも分かるでしょう。
■「就職氷河期世代支援プログラム」とは
国は「就職氷河期世代支援プログラム」として、ハローワークの専門窓口で就職から職場定着までの一貫した支援や、「短期資格等習得コース」 などさまざまな支援を行っています。

出典:厚生労働省「就職氷河期世代支援に関する施策の実施状況(令和3年9月)」
たとえば2021年4月1日時点の就職氷河期世代専門窓口数は全国92箇所 。
2020年4月~2021年6月末時点の「就職氷河期世代の限定求人」は新規求人数で1万2038人 、「就職氷河期世代の歓迎求人」は新規求人数で7万7006人です。
実際にはお住まいの地域やこれまでの雇用形態などにより難しい場合もあるでしょう。ただ情報を集めてみたり、話を聞いたりするだけでも新たな発見がある可能性はあります。
個々人状況が違うからこそ、まずは自分に当てはまるものがあるかどうか、情報収集や相談をしてみてはいかがでしょうか。
■参考資料
- 文部科学省「令和3年度大学等卒業予定者の就職状況調査(4月1日現在)」( https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/naitei/kekka/k_detail/1422624_00003.htm )
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/21bunruif001.html )
- 内閣府「男女共同参画白書 令和4年版 特集編 人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」( https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/pdf/r04_tokusyu.pdf )
- 内閣官房「就職氷河期世代支援プログラム」( https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_hyogaki_shien/index.html )
- 厚生労働省「就職氷河期世代支援に関する施策の実施状況(令和3年9月)」( https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_hyogaki_shien/pdf/20210913followup.pdf )