■保険料を安くする方法とは
新型コロナウイルスの新規感染者数が爆発的に伸び、再びテレワークを導入する企業も出てきました。
多様な働き方に触れ、「フリーランス」の選択肢を検討する方もいるでしょう。
自営業やフリーランスの方が加入する国民健康保険。保険料は毎月口座振替や納付書等で納めますが、実は2022年4月から、保険料上限が引き上げとなりました。
毎月の保険料は決して安いものではなく、国民年金保険料と相まって「高すぎる」という声もあがります。
今回は上限引き上げによって影響を受ける年収帯とともに、「国民健康保険」に加入すべき人や保険料の決定方法を見ていきます。
■2022年、国民健康保険料の上限引き上げ!影響した年収の目安
国民健康保険料はさまざまな要素から計算されますが、もっとも影響を受けるのが「前年中の所得」です。
今回の改正で上限引き上げの影響を受けたのは、単身世帯の場合だと年収約1140万円が目安となります。
厚生労働省の試算によると、対象者の割合は約1.58%。基礎賦課分2万円、後期高齢者支援金等賦課分1万円で3万円の引き上げとなりました。
全員に影響があるというわけではありませんが、年収1000万円前後と言えばさまざまな負担感が高まる年収ラインです。
税金が高くなり、児童手当が対象外となり、さらには国民健康保険料も上がる…となれば、気になる方も多いのではないでしょうか。
保険料上限引き上げの背景には、日本全体で高齢化が進むことによる保険負担増加があります。国民健康保険に限らず、日本全体の医療費は上昇しています。
定年退職した人も加入する国民健康保険では、他の社会保険に比べて高齢の方が加入することが多いです。そのため保険財政は苦しく、保険料の上限を引き上げることが求められてきました。
実際、これまでにも徐々に保険料の引き上げは行われているのです。
出典:厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」
75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」でも、賦課限度額は2万円増の66万円に引き上げられます。
今後も高齢者の医療費が増大することを考えると、ますます保険料負担はあがることが考えられます。
■そもそも国民健康保険のしくみとは
日本では国民皆保険制度をとっており、これにより病院の受診は原則3割の自己負担に軽減されます。
働き方や年齢により、加入する健康保険は以下のように整理できます。
- 協会けんぽ…中小企業で働く従業員
- 組合管掌健康保険…大企業で働く従業員
- 共済組合…公務員や私立教職員
- 船員保険…船員
- 後期高齢者医療制度…75歳以上(一定の障害がある方は65歳以上)のすべての人
- 国民健康保険…上記以外の自営業やフリーランスの方など
つまり、国民健康保険とは公的健康保険の1つであり、会社等に勤めていない自営業の方などが加入するのです。
保障内容は基本的に同じものの、協会けんぽ等にはあって国民健康保険にない保障も存在します。出産手当金や傷病手当金などはその代表格でしょう。
■国民健康保険の保険料は毎月いくらなのか
国民健康保険の保険料は所得や住んでいる地域によって異なりますが、基本となる計算方法は全国共通です。
まず国民健康保険料は「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分(40歳以上65歳未満のみ)」の3つから構成されています。
上記の3つごとに、次の項目で算出します。
出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 所得割:所得に応じて一定の割合がかけられた金額
- 均等割:すべての人が均等に負担する金額
- 平等割:世帯ごとに均等に負担する金額
- 資産割:世帯員の固定資産税額に応じて負担する金額
上記の「平等割」や「資産割」がないところがあったり、料率が異なったりするため、住んでいる自治体で保険料が異なります。
■国民健康保険料は安くできるのか
国民健康保険では会社員のように会社折半ではないので、保険料を高く感じる方も多いです。
また給与天引きの社会保険料とは違い、国民健康保険料は自分で納めるため高く感じてしまうものです。
2022年の改定で影響があった人も含め、負担に感じる方が保険料を安くする方法はあるのでしょうか。
国民健康保険料は適切かつ客観的に算出されるため、裏技のような方法はありません。
見逃している制度がないかどうか、一度確認してみましょう。
■世帯合併を検討する
平等割は世帯ごとにかかるので、二世帯住宅で生計を一にしているにも関わらず世帯を分けている方は、合併を検討してみましょう。
ただし「国民健康保険を安くするため」という理由だけで実態に即わない申請はできません。
世帯の構成は税金等にも影響するので、「実態通りで申告した場合にメリットがあるか」という視点で検討してください。
■国民健康保険組合に加入する
自営業者は基本的に国民健康保険の加入になりますが、業種によっては国民健康保険組合に加入できる可能性があります。
国民健康保険組合は収入に関係なく定額の負担で済むため、保険料が安く済む可能性があります。
一般社団法人「全国国民健康保険組合協会」のサイトから、あてはまる業種がないか確認してみましょう。
■国民健康保険料が安い市区町村へ引っ越しする
市町村によって保険料に差があるので、料率が安い地域に引っ越しすることも有効な手段です。
厚生労働省が平成29年に調査した「市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」によると、国民健康保険料が安い地域は埼玉県・神奈川県・愛知県・東京都・茨城県。
反対に保険料が高い地域は徳島県・佐賀県・山形県・大分県・熊本県です。
県境などで居住地を選べる方などは、参考にしてみましょう。
■国民健康保険料の減免制度を利用する
新型コロナウイルス感染症の影響により、主な生計維持者の事業収入・給与収入等が一定程度減少した場合、国民健康保険料の減免が認められるケースがあります。
また会社都合で退職した場合は、国民健康保険料の軽減制度があります。国民健康保険の資格取得時に確認されているはずですが、申請制である以上漏れている可能性もあります。念のため確認しておきましょう。
■住民税申告をする
法令により定められた所得基準を下回る世帯については、被保険者応益割(均等割・平等割)額の7割、5割又は2割を減額する制度があります。
出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
しかし、住民税の申告がなければ適用されません。もし所得がゼロ円なのであれば、その旨をしっかり申告しましょう。
■まとめにかえて
国民健康保険は基本的に所得が高い人ほど保険料があがり、一定ラインに達すると全員同じになります。しかし今回の改定のように、上限額の引き上げにより負担が増すケースもあるため注意しましょう。
特に年収1000万円を超えるあたりの年収ラインでは、さまざまな制度の所得制限に引っかかりやすくなり、年収が低い人と負担感が逆転することもあります。
特に自営業者にとっては、国民健康保険料の支払いは負担に感じるものですよね。とはいえ、今回の改定は高所得者層と中間所得者との負担バランスを考慮したものとも言えます。
所得が高ければ、必然的に支払うお金も高くなってしまうのです。
裏技のように安くする方法はないものの、見逃している軽減制度があるかもしれません。今一度見直してみましょう。
■参考資料
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」( https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000847315.pdf )
- 厚生労働省「平成29年度 市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」( https://www.mhlw.go.jp/content/000590979.pdf )
- 一般社団法人「全国国民健康保険組合協会」( http://www.kokuhokyo.or.jp/page8-01.html )
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」( https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html )