■年金受給額の減額に、値上げ…変わる収支バランス



70歳代以上の貯蓄「平均約2200万円」も中央値は半分以下に...の画像はこちら >>

2022年6月30日よりマイナポイント第二弾がスタートしましたね。開始から1カ月で1000万件の申請が行われたようです。



健康保険証の紐づけなどでポイントが付与される仕組みですが、実際に保険証として使用する際には窓口負担が増えるようです。

どの世代でも負担が増えることは避けたいですが、年金受給者など収入の増加が見込めない世帯では特に避けたいと思う方も多いかもしれません。

一般的には「シニア世代はお金持ち」というイメージがありますが、年金の支給も2022年度は前年度比マイナス0.4%となり、収支のバランスも変わってきています。



さらには昨今の相次ぐ値上げもあり、家計が苦しいシニアも多いでしょう。

そこで今回は70歳代以上のお金事情にスポットをあて、老後の生活事情を考察していきます。



■70歳代以上の貯蓄平均は「2209万円」も、中央値は…



まずは70代以上の貯蓄額を金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」をもとに確認しましょう。



70歳代以上の貯蓄「平均約2200万円」も中央値は半分以下に。厚生年金と国民年金の受給額もチェック

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」をもとにLIMO編集部作成



■70歳代の貯蓄



  • 平均:2209万円
  • 中央値:1000万円

平均値は2209万円ですが、平均値は上下一部の大きな数字に影響を受けるため中央値を参考にした方が実態に近いでしょう。

中央値は1000万円ですから、平均値と比較して1000万円ほど少なくなっています。

保有額ごとの分布も確認していきます。



■70歳代の貯蓄分布



  • 金融資産非保有 18.3%
  • 100万円未満 4.5%
  • 100~200万円未満 3.8%
  • 200~300万円未満 3.1%
  • 300~400万円未満 4.5%
  • 400~500万円未満 2.0%
  • 500~700万円未満 5.4%
  • 700~1000万円未満 5.6%
  • 1000~1500万円未満 10.3%
  • 1500~2000万円未満 6.0%
  • 2000~3000万円未満 11.9%
  • 3000万円以上 22.1%
  • 無回答 2.6%

70歳代で貯蓄を2000万円以上保有している方は34%という結果でした。金融庁が発表した「2000万円問題」に重ねると、34%の方が達成していると言えます。



逆に、およそ6割超は貯蓄が2000万円ないということになります。

分布を見ると、金融資産非保有世帯が18.3%と約2割の世帯では貯蓄がないことも分かります。



貯蓄がない場合には「年金収入」か「働く」しかないですから、生活模様はかなり異なるでしょう。今回のような値上げへの対応も厳しくなります。

「シニア世代はお金持ち」とイメージされることも多いですが、世帯間の格差は大きいことがわかりました。貯蓄以外では年金が重要になるため、どの程度受け取っているか確認してみます。



■70歳以上の年金受給額は月いくらくらいか



厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(2020年度)」をもとに「国民年金」と「厚生年金」の金額を1歳刻みで確認します。





70歳代以上の貯蓄「平均約2200万円」も中央値は半分以下に。厚生年金と国民年金の受給額もチェック

出典:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(2020年度)」



■国民年金の平均年金月額



  • 70歳 5万7234円
  • 71歳 5万7153円
  • 72歳 5万7066円
  • 73歳 5万6874円
  • 74歳 5万6675円
  • 75歳 5万6235円
  • 76歳 5万6204円
  • 77歳 5万5881円
  • 78歳 5万5651円
  • 79歳 5万5525円
  • 80歳 5万7241円
  • 81歳 5万7024円
  • 82歳 5万6866円
  • 83歳 5万6876円
  • 84歳 5万6464円
  • 85歳 5万6321円
  • 86歳 5万6067円
  • 87歳 5万5643円
  • 88歳 5万5132円
  • 89歳 5万4498円
  • 90歳以上 5万554円

■厚生年金(第1号)の平均年金月額



  • 70歳 14万3775円
  • 71歳 14万7105円
  • 72歳 14万6331円
  • 73歳 14万5724円
  • 74歳 14万5467円
  • 75歳 14万7519円
  • 76歳 14万8172円
  • 77歳 14万9924円
  • 78歳 15万2159円
  • 79歳 15万4467円
  • 80歳 15万7097円
  • 81歳 15万8604円
  • 82歳 16万356円
  • 83歳 16万851円
  • 84歳 16万1719円
  • 85歳 16万2711円
  • 86歳 16万2887円
  • 87歳 16万1929円
  • 88歳 16万2660円
  • 89歳 16万3514円
  • 90歳以上 16万1506円

※国民年金部分を含む

国民年金は受給額に大きな差はないですが、厚生年金は年齢が高くなると受給月額が大きくなっています。

厚生年金には国民年金の金額も含まれていますが、受給月額に9万円ほど開きがあります。



どの年金を受給するかによって受け取れる金額に差が出ることを、早い段階から認識しておくことが重要ですね。

ただし、厚生年金も若いほど受給額が減少することが予想されますから、「厚生年金だから安心」と思わずに実際にどの程度受け取れるのか、ねんきん定期便などで確認しておくことをおすすめします。



■年金減額に、値上げ…年代に合った対策を



ここまで70歳代の貯蓄や年金の受給額を確認しましたが、「シニア世代は裕福」というイメージ通りだったでしょうか。年金減額や値上げといった変化を考えると、いくらあっても安心とはなかなか言えない時代となりました。



貯蓄分布では貯蓄ゼロ世帯が2割と、世帯間で大きなバラつきがありました。これは70歳代に限ったことではなく、各世代でも収入や貯蓄額にはバラつきがあるでしょう。

20歳代であれば老後まで準備の時間がとれますが、退職を間近に控えた世代ではお金を貯める時間がとれません。

このように世代によって準備時間が異なるため、とれる対策も異なります。まずは自分たちの収入や加入している年金の種類、将来受け取れる年金額、退職金などを確認しましょう。老後の生活費をシミュレーションすることも大切です。

準備の仕方も、またとれるリスクも世代によって異なります。将来に向けて準備が必要な場合には、年代に合った対策が必要です。



年金や貯蓄を増やす工夫を考えたり、働き続けたりする一方で、日々の生活費を抑える工夫も必要でしょう。

準備時間は長い方が有利です。どのような対策が合うのか、情報収集から始めていただき、長い老後に備えていきましょう。



■参考資料



  • 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/ )
  • 日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」( https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2022/202204/040103.html )
  • 厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」( https://www.mhlw.go.jp/content/000925808.pdf )
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