■ビジネス、今日のひとネタ



もはや恐喝!? 「モンスターカスタマー」の実態の画像はこちら >>

近年、経済不況などによるストレス社会のあおりを受けてなのか、理不尽に怒鳴り散らしたりする「モンスター〇〇」が年々増えていると感じる人も多いのではないでしょうか。学校にめちゃくちゃなクレームを入れる「モンスターペアレント」、病院などでおかしな文句をつけて騒ぐ「モンスターペイシェント」とあわせて、「モンスターカスタマー」と呼ばれる人たちも増えているようです。



「モンスターカスタマー」とは、飲食店・小売店・鉄道会社など、商品やサービスの提供者に対して理不尽な要求や自分勝手な文句を言ったりしてくる人たちのことです。



■理不尽な要求で他の客の迷惑にも



Twitterの「#実際に言われたクレーム晒す」というハッシュタグには、



「この恵方巻、切られてないじゃねーか!」
「学生なのになんで勉強しないでこんなことしてるんだ!? 学生をバイトに使うなんてもう二度とここを利用しない!!」
「今まで撮ったチェキ写真返すので、代金返してください」
「自転車に乗って入店してはいけないなんて何処にも書いてないだろ!!!」



というように、コンビニやレストラン、居酒屋、洋服屋、家電量販店など、あらゆるお店で店員が客から言われた理不尽な(というより、ほとんど意味不明な)言葉の数々が集まっています。多くはもはや笑い話のレベルではありますが、現場で実際に理不尽クレームを言われるほうはたまったものではありません。



こういったモンスターカスタマーのやっかいなところは、従業員はもちろんのこと、ほかの顧客にも被害が及ぶことです。たとえば、店内で大声を上げてクレームをつけている人間がいれば、ほかの客の迷惑になってしまいますし、店外からその様子を見ていたら、店に入ろうと思っていた人でも、思わず入るのをためらってしまいます。



■コンビニ店員に土下座させた理由は?



2018年の11月に、福岡県北九州市のコンビニで、30歳の男が18歳の女性店員に激怒し、土下座を強要した事件がありました。男は土下座の強要だけでなく、お金を置くトレイを投げつけたり「殺すぞ」と脅したりしたといいます。男は強要と威力業務妨害の疑いで逮捕されています。



これだけ激怒しているなら、それなりの理由がありそうですが、実はこの男、単に「店員の態度が悪かった」という理由でここまで怒っていたようです。



これには、SNSなどネット上で、次のように批判的な声が集まっています。



・もはや恫喝
・ふだん上司とか取引先にペコペコしてる人間ほど、勝手に「自分より下」だって認定した人に横柄な態度で接するんだよね
・すごい時代になってきたな
・店員にはもちろんのこと、その場にいた顧客にも迷惑がかかっている。害悪でしかない



店員に土下座させるのは、それだけで強要罪などにあたる可能性が高い、れっきとした犯罪行為です。

ただ、中にはその様子を写真や動画で撮って「態度のなってない店員を教育してやった」と得意気にSNSにアップするような人間も定期的に出てくるようです(もちろん大炎上しますが……)。



■電車遅延で駅員の胸ぐらを掴んでキレる



おそらく電車で通勤している社会人なら一度は経験したことがある電車遅延。通勤中や大事な約束前だとイライラすることもあると思いますが、実際にそれを声に出し、駅員に文句を言う人が少なくないようです。中には、対応にそこまで非があるとは思えない駅員の胸ぐらを掴んで大声でキレるような悪質な行為も見られます。



これには、



・とくに人身事故が原因の場合は、どう頑張っても防げない事故だと思うし、鉄道会社側は何も悪くないと思う
・よくいるよな、相手が絶対やり返してこないと思ったらどこまでも責め立てる奴
・何も解決しないのに自分の怒りを弱い立場の人間にぶつけてスッキリしたいだけ



と、駅員や運転手をかばう声が多く上がっています。



最近は、全国73の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会で「駅員への暴力は犯罪である」という主旨を訴える啓発ポスターをつくり、特に暴力行為の多いといわれる忘年会・新年会シーズンを中心に、加盟各社の駅構内で大きく掲示したりしています。それらも功を奏したのか、駅員への暴力行為の発生件数は減少傾向にあるようですが、それでも大手私鉄やJR、主要都市の交通局など計34社局で2017年度に報告された暴力行為は、実に656件にものぼっています。



■家庭教師先でのトラブル



少し身近なところでは、大学生に人気の家庭教師のアルバイトでも、「モンスターカスタマー」の被害に遭ってしまった事例があります。



ある家庭教師が、小学5年生の生徒に宿題を出したところ「ひとりで宿題ができるくらいなら家庭教師なんて雇わない! 手を抜くな!」と怒られたそうです。ほかにも「成績が上がらないのは教え方が悪いから。息子が理解できるまで毎日来い」などと無理難題を押し付け、ほぼ毎日、「課外授業」を行わされていたようです。



教育関連ということでいえば、このケースは「モンスターペアレント」と呼ぶほうが適切かもしれません。

学校あるいは幼稚園・保育園におかしなクレームを入れる親にも共通するのですが、教育やそれに準ずる場にも「こっちはカネを払ってる客なんだから」という論理を持ち込み、本来であれば家庭ですべき基本的な「しつけ」まで他人に丸投げするような親が「モンスター」になってしまうことが多いのではないでしょうか。



そもそも、仮にそうした基本的なしつけまで仕事の中に含まれているのであれば、通常の家庭教師代なら安すぎるはずです。



■なぜ「モンスター」が現れるのか



海外では顧客から怒られないようなことなのに日本では怒られたり、逆に日本では許されているのに海外では怒られたり、といった違いは、各国で長い年月をかけてつくられた商習慣や文化、教育によるところも多くあります。それらを考えると、上記のような「モンスターカスタマー」が増えてしまったのは、日本で根強い「お客さまは神さまだ」という考えにも、原因の一端があるのではないでしょうか。長い間、この考えに基づいて従業員も顧客も「教育」されてきたために、一部の顧客をある意味で「つけ上がらせてしまった」といえるかもしれません。



理不尽なクレームの場合は、怒られる側に大きな非がないことがほとんどです。そうした場合は、店側も毅然とした態度に出る勇気も必要になってきます。



少し前にネット上で盛り上がった話で、こんなものがありました。ある外資系ショッピングセンターで、「文句をつけてタダにさせよう」という魂胆からか、従業員に粘着質のクレームをつけてきた顧客がいたのですが、これに対して、後から出てきた外国人の支配人が「出て行け! お前は客じゃない!」と一喝し、「スタッフはお前の奴隷じゃない、謝れ!」とこのクレーマーに逆に謝罪させたそうです。これにはネット上の多くの人から拍手喝采が上がりました。



こうしたことが普通にできるようになるのは、日本ではまだ少し先かもしれません。ただ、できるだけ近い将来、理不尽なクレームに対しては店側は正しさをその場できちんと主張でき、多くの顧客も「それはこの客のほうがおかしい」「ただ、店側もこの部分は改善できるんじゃないか」と冷静に評価できるような社会になればいいですね。



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