カントリーETFとは?
カントリーETF(上場投資信託)は特定の国の株式市場全体に投資することを可能にするETFです。代表的なカントリーETFには次のようなものがあります。
表1:代表的なカントリーETF
銘柄名 コード 費用比率 トラッカー・ファンド・オブ・ホンコン 02800 0.09% ハンセン・インデックスETF 02833 0.10% ウィズダムツリー インド株収益ファンド EPI 0.85% ヴァンエック・ベクトル・インド小型株ETF SCIF 0.80% ヴァンエック・ベクトル・ロシアETF RSX 0.64% iシェアーズMSCIブラジルETF EWZ 0.59% ヴァンエック・ベクトル・ブラジル小型株ETF BRF 0.59% iシェアーズMSCIインドネシアETF EIDO 0.59% iシェアーズMSCIフィリピンETF EPHE 0.59% iシェアーズMSCIポーランドETF EPOL 0.63% iシェアーズMSCIマレーシアETF EWM 0.47% iシェアーズMSCIシンガポールETF EWS 0.47% iシェアーズMSCI台湾ETF EWT 0.59% iシェアーズMSCIメキシコETF EWW 0.47% iシェアーズMSCI韓国ETF EWY 0.59% iシェアーズMSCI南アフリカETF EZA 0.59% iシェアーズMSCIタイETF THD 0.59% iシェアーズMSCIトルコETF TUR 0.59% ヴァンエック・ベクトル・ベトナムETF VNM 0.64% 出所:筆者作成
上表にあるカントリーETFの多くは、読んで字の如くそれぞれの国に投資するETFであり、多くの説明を必要としません。
トラッカー・ファンド・オブ・ホンコン
トラッカー・ファンド・オブ・ホンコン(TraHKと略されることがあります)は、ユニット型投資信託会社の形態をとっており、香港証券取引所(H株)に上場した中国企業に投資します。ステートストリート・グローバル・アドバイザーズが運用しています。
ハンセン・インデックスETF
ハンセン・インデックスETFは、恒生投資が運用するETFで、香港ハンセン指数をなぞるように設計されています。
ウィズダムツリー インド株収益ファンド
ウィズダムツリー インド株収益ファンドは、米国の独立系運用会社、ウィズダムツリーが独自に開発したウィズダムツリー・インディア・アーニングス指数をなぞるように設計されています。
同指数はインド株のうち流動性が高く、外国人も買える銘柄で、なおかつしっかり利益を出している企業を中心に組み込んでいます。代表的な企業としてはリライアンス・インダストリーズ、インフォシス、HDFC銀行、ICICI銀行、ONGCなど、順当なところが含まれています。
ヴァンエック・ベクトル・インド小型株ETF
ヴァンエック・ベクトル・インド小型株ETFは、ヴァンエック社によって運用されているインドの小型株に特化したETFです。「マーケット・ベクトル」というのは同社のファンドにつけられたブランド名であり、特に意味はありません。
同ETFは比較的規模が小さく、出来高が少ないという問題点がありますが、インドの小型株に投資できるファンドはとても珍しいので、希少価値があります。
ヴァンエック・ベクトル・ロシアETF
ヴァンエック・ベクトル・ロシアETFは、ヴァンエックが運用会社でありロシアのETFの草分け的存在です。
iシェアーズMSCIブラジルETF
iシェアーズMSCIブラジルETFは、ブラジルの大型株に投資するETFです。同ファンドはブラックロックによって運用されています。
ヴァンエック・ベクトル・ブラジル小型株ETF
ヴァンエック・ベクトル・ブラジル小型株ETFは、ヴァンエックによって運用されているブラジルの小型株に特化したETFです。
なお、表1の他にもカントリーETFは数多く存在するのですが、一つの国で二つ以上のカントリーETFが存在する場合は、活発に取引されているものをリストアップしました。
地域ETFとは?
また個別国に投資するETFではないのですが、世界の特定の地域に投資するETFもあります。
表2:地域ETF
銘柄名 コード 費用比率 iシェアーズMSCI ACWI ETF ACWI 0.31% iシェアーズMSCIエマージング・マーケットETF EEM 0.67% iシェアーズMSCI EAFE ETF EFA 0.31% iシェアーズMSCIパシフィックETF EPP 0.48% iシェアーズMSCIフロンティア100 ETF FM 0.81% iシェアーズ・ヨーロッパETF IEV 0.59% iシェアーズ・ラテンアメリカ40 ETF ILF 0.48% 出所:筆者作成
これらの地域ETFは、実は利用価値が高いです。なぜなら一つのETFで複数の国々や地域に投資できるものもあり、幾つものETFを買い揃える必要がなくなるからです。
たとえばiシェアーズMSCI ACWI ETFは、これ一つで世界の全ての主要市場に投資することができる、極めて便利なETFです。
図:iシェアーズACWI ETF組み入れ国(2019年8月28日、ブラックロック)

一方、iシェアーズMSCIエマージング・マーケットETFもたいへんポピュラーなETFです。こちらは、これ一つで世界の新興国市場全てに投資できるETFです。
なお、読者の皆さんは海外ETFの他に日本株にも投資されている場合が多いと思います。すると海外ETFの中に日本が含まれていることで、日本への投資が重複してしまう場合がある点に留意する必要があります。
一般論として、世界の幅広い地域に投資するETFはボラティリティ(価格のブレのこと)が小さいです。これとは対照的にカントリーETF、とりわけ小さい新興国に投資するETFは極めて値動きが荒い点に注意すべきです。
さらに新興国のETFは一般に費用比率が高いです。この点にも注意すべきだと思います。
■ 第7章「ETFとアセット・アロケーション」はこちら
(広瀬 隆雄)