先週の日経平均株価は前週比363円、値下がりしました。


 暗号資産(仮想通貨)を扱う交換業大手「FTXトレーディング」の破たんで、仮想通貨業界で倒産が連鎖する懸念が依然くすぶっていますが、前週の急騰後の小動きに終始した1週間でした。


 今週11月21日(月)から25日(金)の株式市場では、上昇継続に必要な新たな好材料探しが続きそうです。


先週:米政策金利5%超警戒感で小動き。日本の新興株は堅調!

 先週は14日(月)、 ソフトバンクグループ(9984) が期待されていた新たな自社株買いを2022年9月中間決算公表時に発表しなかったことから前日比12%以上も急落。相場の雰囲気を悪化させました。


 15日(火)には、NATO(北大西洋条約機構)の集団防衛圏に属するポーランドにミサイルが着弾して2人が死亡。金融市場にも、ロシア・ウクライナ戦争が拡大し、NATOとロシアの全面戦争に発展するのでは、という緊張が走りました。


 結局、着弾したのがウクライナの対空防衛ミサイルだった可能性が高く、事態は収束に向かいました。あわや第3次世界大戦という事態は避けられましたが、戦線拡大に対する危機感が台頭すれば、株価が再び急落してもおかしくはないでしょう。


 15日発表の米国10月PPI(卸売物価指数)は前年同月比8.0%の上昇にとどまり、この1年で最も低い伸びになりました。前月比でも0.2%の伸びと予想を下回り、米国株は上昇。


※PPIに関して、詳しくはこちら: 1分でわかる!インフレと株価の関係


 しかし、16日(水)の米国の10月小売売上高が前月比1.3%増と、逆に8カ月ぶりの高い伸びに。


 ガソリンや食品の価格上昇を反映したガソリンスタンド、食料雑貨店、飲食店の売上増が影響しました。


 個人消費が強すぎると、物価の高止まりが続きかねないという懸念から、米国株は下落に転じました。


 追い打ちをかけるように翌17日(木)、利上げに積極的なタカ派として知られるセントルイス地区連邦銀行のブラード総裁が現在のインフレ率を目標の2%台まで引き下げるには、政策金利を5~7%台まで引き上げるべきといった趣旨の発言をしたと伝わり、株価は続落。


 18日(金)夜には長期金利の指標となる10年国債の利回りが3.8%台に上昇したものの、米国株は上昇。


 1週間でみると、多くの機関投資家が運用の指針にするS&P500種指数は前週比0.7%ほど下落して終わりました。


 日本株では、新興企業の株価を指数化した東証マザーズ指数が、先週の4.0%高に続いて、今週も前週比2.9%高と好調です。


 ビジネス向けチャットツール開発の Chatwork(4448) は、2022年12月期業績予想で赤字額縮小を発表したことが好感され、前週比38%高。


 資源リサイクル大手の アミタホールディングス(2195) も、三菱UFJ銀行などとの脱炭素移行サービスの提供に関する業務提携を発表し、前週比35%高。


 これまで株価が低迷していた銘柄が、ちょっとした好材料で短期的に急騰する流れは、新興市場に資金が流入して、売買が盛り上がってきている証拠といえます。


 18日(金)に発表された日本の全国消費者物価指数では、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比3.6%上昇し、約40年ぶりの高い伸び率となりました。しかし、株式市場はそれほど反応しませんでした。


今週:W杯開幕で注目株は?FOMC議事録公開に注意

 20日(日)からは、サッカーのワールドカップ(W杯)が始まりました。


 日本では サイバーエージェント(4751) が同社のネットテレビ「ABEMA(アベマ)」で全試合を無料配信します。

赤字覚悟といわれる配信に、株式市場がどんな反応をするかに注目が集まるかもしれません。


 今週は欧米の景気動向を示す指数が発表されます。


 23日(水)、ユーロ圏や欧州各国、そして米国の11月製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)が発表。


 PMIが好不調の境目である50を割り込んでいる国が多く、さらに下落すると、株価にとってはネガティブです。


 強硬な金利の引き上げで急落した株式市場にとって、景気後退懸念は新たな悩みの種となりそうです。


 23日(日本時間24日未明)には、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が0.75%の利上げを決めた11月1~2日のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録を公開します。


 利上げの最終目標レートである「ターミナルレート」が5%を超えても構わない、といった議論がされていたら、株価急落の引き金になる恐れもあります。


 FRBが利上げペースを緩めるのか、それとも政策金利を5%超す水準まで引き上げるのか、株式市場の疑心暗鬼が続きそうです。


 ここからさらに上昇するためには、株を買うための新たな理由が必要なのかもしれません。


 日米企業の2022年7-9月期決算発表もほぼ終了し、12月2日(金)の米国の雇用統計、13日(火)の11月CPI(消費者物価指数)、13~14日(水)のFOMCまで大きな経済イベントもありません。


 例年なら年末高に沸いている時期です。


 FRB高官が利上げ打ち止めについて発言するなど、ちょっとした材料があれば株価が上昇してもおかしくありません。


 さしたる理由がなくても、株が上がることはあります。


 緩やかな上昇機運が続く可能性に期待したいものです。


(トウシル編集チーム)

編集部おすすめ