今週の株式市場は、週末の10月7日(土)に突如始まったパレスチナのイスラム武装組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受け、イスラエル側も報復攻撃を行い、不透明な展開になりそうです。


 日本が祝日の9日(月)には地政学的リスクの高まりから原油価格が急騰したものの、米国株は上昇に転じ、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週末比0.63%高となりました。


 先週末の6日(金)のS&P500種指数は前週末比0.48%高と、5週間ぶりに上昇しており、今週に入っても反転上昇の勢いが持続しています。


 今週は、11日(水)に米国の9月PPI(卸売物価指数)、12日(木)に米国の物価動向を占う上で市場の注目度が最も高い9月CPI(消費者物価指数)が発表されます。


 また、11日には9月19~20日に開催された米国の政策金利を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録も公開されます。


 9月のFOMCでは利上げはなかったものの、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のFOMC参加理事らの多くが2023年にもう1回の利上げ、そして来年2024年中も高い金利水準を維持する意向を示しました。


 より長期間、より高い水準で高金利政策が続く方針が明らかになったことが9月中旬以降の世界的な株価下落の引き金になっただけに、11日(水)のFOMC議事録の発表で相場が大きく動く可能性もあります。


 一方、先週の日本株は米国株以上に厳しい下げに見舞われました。


 日経平均株価(225種)の6日(金)終値は前週末比862円安の3万0,994円と2.7%も下落し、9月15日~10月6日の3週間の下げ幅は2,538円に達しています。


 銀行株や自動車株など株価が絶好調だった重厚長大企業の影響力が強く、9月中旬までバブル経済崩壊後の最高値の更新が続いたTOPIX(東証株価指数)も前週末比2.6%安と大きく下落。


 先週、米国の長期金利の指標である10年国債の金利が一時4.9%近くまで急上昇したことで、外国人投資家が売買高の約7割を占める日本株は米国株以上に大きなダメージを受ける結果になりました。


 週明け10日(火)の東京株式市場の日経平均は連休中の米国株式市場の上昇を受けて反発。終値は連休前の6日終値比751円高の3万1,746円でした。上げ幅は今年最大となりました。

今週は、米国FOMC議事録や9月CPIの結果をこなして、日本株がどこまで反転上昇できるかに注目したいところです。


先週:フェイク為替介入や米国の議会混乱、金利急上昇、強すぎる雇用に翻弄された1週間! 

 先週はさまざまな不規則イベントが多発して、株価が乱高下した激動の1週間でした。


 米国では、政府の支出を認めるつなぎ予算案が議会を通過せず、10月1日(日)からの政府機関の閉鎖が危ぶまれましたが、9月30日(土)に民主党と共和党穏健派が45日間の暫定予算案に合意しました。


 しかし、政府閉鎖の危機が回避されたことで、11月1日(水)終了の次回FOMCでの追加利上げの可能性が高まったこともあり、米国の債券市場で長期金利が上昇。


 金利上昇が大敵の株式市場は土壇場(どたんば)の危機回避を素直に好感して大幅上昇とはなりませんでした。


 3日(火)には、共和党内の保守強硬派が提出したマッカーシー下院議長(共和党)の解任動議が可決され、議会が大混乱。


 暫定予算案の期限が切れる11月中旬以降、再び米国の政府機関の一部が閉鎖されるリスクが高まったことも株安につながりました。


 米国労働省がこの日、発表した8月のJOLTS求人労働異動調査(米国内の求人、採用、離職など労働需要の動向を示した指標)で求人件数が961万件と予想外に伸びました。この結果を受けて、強すぎる米国の雇用がインフレ率の高止まりにつながるという警戒感が台頭しました。


 米国10年国債の利回りが一時4.88%に到達するなど、金利がさらに急上昇し、株式市場は急落に見舞われました。


 この日のニューヨーク外国為替市場では米長期金利の上昇を受けて円相場が1ドル=150円に到達しました。しかし、その直後に、一時的に147円30銭台まで急落。


 日本政府による為替介入ではないかという見方が広がりました。


 4日(水)日本時間の朝、政府の為替政策の実務を統括する財務省の神田真人財務官は「介入の有無についてはコメントを差し控えます」と発言。


 一説にはアルゴリズム(機械)トレードの暴走という見方もあり、為替介入だったのかフェイクだったのか、今もって値動きの真相が分からず、市場に混乱が広がりました。


 6日(金)には9月の米国雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は前月比33万6,000人増と、こちらも予想を大幅に上回りました。


 しかし、インフレに直結する平均時給の伸びが前月比0.2%増と緩やかだったこともあり、米国株は意外なことに反転上昇。


 ここまで下げ過ぎた反動と思われますが、6日(金)のS&P500種指数は前日比1.2%近く上昇して、週間でも0.48%高とプラス転換しました。


 一方、東京証券取引所が発表した日本株の投資主体売買動向によると、外国人投資家は9月の1カ月で日本の現物株を約2兆315億円売り越し。


 彼らにとっての本国である米国市場の金利上昇を受け、10月に入っても外国人投資家の売り越しは継続しているもようです。


 外国人投資家が大規模な売り越しに転じている一方、日本株をせっせと買い支えたのは個人投資家でした。


 9月の個人投資家の買い越し額は1兆822億円と、過去3番目の高水準に達しました。


 個人投資家は相場が下がっているときに逆張りの買いを入れることが多いですが、外国人投資家の売りが10月も続くようだと、9月の個人投資家による買い越しの多くは高値つかみに終わる可能性が高くなります。


 そのため、今後は株価の上昇を阻む戻り売り圧力になってしまう恐れもあるでしょう。


 先週の日本株の業種別騰落率では、世界中に原油の権益を持つ INPEX(1605) が前週末比15%安となるなど、原油価格の軟化で鉱業、石油・石炭セクターの下げ幅が突出して大きくなりました。


 しかし、週末にパレスチナのハマスとイスラエルの武力衝突勃発で原油価格が反発していることもあり、3連休明け10日(火)の日本株は石油関連株中心に反発して始まりました。


今週:米国の9月CPIやFOMC議事録、中東の戦闘激化で波乱続く!?日米企業の決算発表に期待!

 日本市場が休場だった9日(月)は米国も祝日で、米国株の動向に強い影響を与えている債券市場の取引は行われていません。


 米国の長期金利が今週、大台の5%を突破する可能性もあるため、債券の取引が再開する10日(火)の金利動向次第では、為替介入警戒でドル/円相場が急変動し、株価が乱高下する可能性もあります。


 また、今週はイスラエル・パレスチナ情勢の緊迫による原油価格の上昇に加え、11日(水)に米国9月PPI(卸売物価指数)、12日(木)に9月CPI(消費者物価指数)など、米国の物価関連指標の発表が相次ぎます。


 9月のCPIは市場予想では前年同月比3.6%増、コアCPIは4.1%増と、いずれも伸び率が鈍化すると見込まれています。


 予想以上に物価の伸びが鈍化すれば、米国の金利上昇も一服し、株価の追い風になるでしょう。


 ただ、9月CPIが発表になる前日の11日(水)には、9月19~20日に開催されたFOMC議事録が公開されます。


 9月のFOMCでは追加利上げは見送られたものの、参加理事が今後の政策金利の水準を予想した「ドットチャート」が発表され、2024年末の政策金利予想の中央値が4.6%台から5.1%台まで0.5%も引き上げられました。


 株価下落につながったドットチャートに関する議論の内容が明らかになることで、改めて高金利が長く高く続くことが意識されると、株価にとってはネガティブです。


 また、週後半には2023年7-9月期の米国企業の決算発表もスタート。


 13日(金)にはその先頭バッターとして、 JPモルガン・チェース(JPM) や シティグループ(C) など金融機関の決算発表があります。


 米国の地方銀行の決算発表も控えており、金利が急上昇すると逆に価格が下落する米国債など債券の巨額含み損が発覚する地銀が出てくるかもしれません。


 ひょっとしたら3月に全米16位のシリコンバレー銀行が破綻したような金融不安が起こる可能性もないとはいえないので注意が必要でしょう。


 一方、日本では今週、主に2月末が決算期のスーパーや外食企業の2023年5-8月期決算の発表が相次ぎます。


 11日(水)には値上げが収益増につながりやすい イオン(8267) 、 吉野家ホールディングス(9861) 、13日(金)には値上げ効果で業績好調な ローソン(2651) 、インバウンド(訪日外国人)需要の追い風を受ける百貨店の 高島屋(8233) などが決算を発表します。


 相変わらず急上昇する米国の金利に右往左往しそうな1週間になりそうですが、日米の個別企業の好調な業績発表で株価が底入れ反転する展開に期待したいところです。


(トウシル編集チーム)

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